介護付き有料老人ホームとは? 住宅型とのサービスの違いや費用、選び方を解説
介護が必要になったときに選択肢の一つとなるのが、「介護付き有料老人ホーム」です。有料老人ホームの中でも「介護付き有料老人ホーム」は、介護保険を利用した介護サービスを、受けることができます。そこで、「介護付き有料老人ホーム」とはどんな施設なのか、概要をご紹介した上で、費用や入居条件、受けられるサービスなどについても触れていきます。
目次 |
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ご希望に合わせて施設を提案いたします。
介護付き有料老人ホームとは?
有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。そのうちの「介護付き老人ホーム」は、食事の提供、家事援助、身体介護のサービスが受けられる施設です。
「介護付き有料老人ホーム」では、施設のスタッフによる介護サービスを受けられることが、「住宅型有料老人ホーム」との違いです。
介護付き有料老人ホームの定義・基準
「介護付き有料老人ホーム」は、有料老人ホームの中でも、都道府県から介護保険制度の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けて、民間企業が運営している施設です。
「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていることから、人員の配置基準が定められています。主なものを挙げていくと、介護職員または看護職員(看護師・准看護師)は、要介護者3名に対して、1名以上の配置が必要です。このうち、看護職員は、入居者が30名未満の場合で、日中は1名以上の配置が義務付けられています。また、介護職員は、24時間常駐することが必要です。
この他に、施設運営基準では、協力医療機関との提携が、定められています。
介護付き有料老人ホームの特徴
「介護付き有料老人ホーム」では、食事の提供、洗濯、掃除、買い物といった「生活援助サービス」や、食事、排せつ、入浴の介助といった「身体介助」など、さまざまな介護サービスを受けることができます。
「介護付き有料老人ホーム」は、「特定施設入居者生活介護」の基準を満たしていれば、それを上回る水準のサービスを提供することが可能です。そのため、スタッフの人員の配置体制や設備、提供するサービスはさまざまで、料金にも幅があります。
民間企業が運営していることから、例えば、介護職員を基準よりも手厚く配置する、豪華な温泉やプールを設けるなど、充実したサービスを提供して、差別化を図る動きも、進んでいます。
介護付き有料老人ホームは介護保険を適用できる
「介護付き有料老人ホーム」では、施設のスタッフから介護保険を利用した介護サービスを受けられる点が、「住宅型有料老人ホーム」との大きな違いです。ただし、介護保険で提供できる介護サービスは決められているため、例えば、家族の食事の準備やペットの世話などは、対象外です。
「介護付き有料老人ホーム」は、入居対象者によって、「自立型」と「介護専門型」と、「混合型」の3種類に分類されています。
自立型
「自立型」は入居時に自立した生活が送れる方のみを対象としています。介護付き有料老人ホームの中で、「自立型」は施設数が限られています。
介護専門型
「介護専門型の介護付き有料老人ホーム」は、入居対象者を「要介護度1以上」に限定している施設で、自立している方は、入居することができません。重度の要介護度の方でも、生活しやすい体制が取られています。
混合型
「混合型」の「介護付き有料老人ホーム」は、自立している方も、入居することが可能な施設です。要介護認定を受けている方も、自立している方も、入居できることから、「混合型」と呼ばれています。夫婦のいずれかが要介護認定を受けている場合も、夫婦で入居が可能であり、自立した方が将来に備えて、入居することもできます。
入居に必要な費用と月額利用料金
「介護付き有料老人ホーム」は、入居一時金や月額利用料金として、次に挙げる費用がかかります。
入居一時金 | 0円~数千万円 | 月額利用料金 | 15万円~30万円 |
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入居一時金と月額利用料金のいずれも幅が大きく、その理由について、それぞれご紹介します。
入居一時金
「介護付き有料老人ホーム」は、終身利用権方式をとっているため、前払い家賃として入居一時金が発生します。
家賃の支払い方法は3種類あり、入居一時金が発生しない支払い方法もあります。
一時金支払い方式 | 想定居住期間を基に入居一時金として、家賃を全部または一部を支払う方法 |
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月払い方式 | 入居一時金の支払いはなく、毎月の家賃として支払う方法 |
併用方式 | 一時金支払い方式と月払い方式を組み合わせた方法 |
入居一時金がかからない料金プランの場合、毎月の利用料金にプラスして家賃を支払うことになるため、初期費用は抑えられますが、月額利用料金はその分、高くなります。一方で、一時金支払い方式を採用しているプランの場合、初期費用が高い代わりに、月額利用料金は安くなります。
家賃そのものの金額の違いもありますが、入居一時金の支払い方式の種類の違いも、入居一時金の相場が0円から数千万円まで開きがあることに、関係しています。
また、入居一時金には、返還金制度があり、入居期間によって償却される仕組みとなっているため、退去する時期によっては、一部が戻ってくることがあります。 返還金の計算例を図で示したので確認してみましょう。もっと詳しく知りたい人は、「老人ホームでかかる費用と資金計画」のページを確認してください。
月額利用料金に含まれるのは、一般的に、次に挙げる費用です。 月額利用料金の相場は、15万円~30万円程度です。月額利用料金
月額費用の例を下に示したので確認してみましょう。
「上乗せサービス」「横出しサービス」
「介護付き有料老人ホーム」では、介護保険による介護サービスよりも、手厚い介護を提供されることがあります。
上乗せサービス | 介護保険による規定以上の手厚い介護サービスのこと 例)人員配置規定以上の人数の介護職員を配置しているケース、介護保険の利用限度額の上限を超えて介護サービスの提供を受けるケース |
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横出しサービス | 介護保険制度とは関係なく、オプションで提供されるサービスのこと 例)規定回数以上の通院時の付き添い、買い物の代行 |
介護保険で決められた以上の介護サービスとなるため、いずれも、全額自己負担となります。
介護付き有料老人ホームの入居条件
「介護付き有料老人ホーム」では、主に入居時の年齢や、要介護レベル、認知症の有無による入居条件を設けています。「介護付き有料老人ホーム」は、施設数が多いことから、入居できる施設を探すのは、さほど難しくありません。
入居時の年齢
「介護付き有料老人ホーム」は、入居時の年齢の条件を、65歳以上としているのが一般的です。入居時の年齢を、60歳以上とする施設もありますが、限られています。
要支援レベル
「介護付き有料老人ホーム」の入居条件となる要介護レベルは、施設のタイプによって異なります。「自立型」は、入居時に自立して生活できることが条件です。「介護専門型」は、入居時に「要介護1以上」の認定を受けている方が入居可能な施設で、「要介護5」まで受け入れる施設もあります。「混合型」は、自立している方も、要支援・要介護の認定を受けた方も、入居できます。
認知症の有無は問わない
「介護付き有料老人ホーム」では、認知症の方の入居も受け入れているのが、一般的です。
ただし、重度の認知症の場合には、入居時に要相談となっているケースもあるため、事前に確認しましょう。
介護付き有料老人ホームで受けられるサービス
「介護付き有料老人ホーム」で受けられるサービスは、主に「生活援助」「身体介助」「機能訓練(リハビリテーション)」「医療サービス」の4つがあります。
生活援助
「生活援助」は、「介護付き有料老人ホーム」で受けることができる基本的なサービスで、食事の提供、掃除、洗濯といった日常生活をサポートするサービスが該当します。
食事は、栄養バランスが考えられたものが提供され、和食・洋食を選べる施設や、定期的にメニューをリクエストできる施設もあります。また、咀嚼の機能や健康状態に応じて、介護食や治療食の提供も行われています。居室内の掃除は、掃除機がけ・拭き掃除を週1~2回程度行われるのが、一般的です。
また、「介護付き有料老人ホーム」では、レクリエーションやイベントも、開催されています。施設によって頻度や内容は異なりますが、例えば、ゲーム、カラオケ、運動の他、お花見、夏祭り、クリスマスパーティーといった季節のイベントなどが、行われています。
身体介助
「介護付き有料老人ホーム」では、食事、入浴、排せつの介助、着替えなどのサポートといった「身体介助」も受けられるため、一人では食事を取ったり、入浴をしたりするのが難しい方も、安心して暮らせます。
「介護付き有料老人ホーム」では、専属のケアマネージャーが作成するケアプランに基づいて、「生活援助」「身体介助」「機能訓練(リハビリテーション)」などの介護サービスが、提供されています。ケアプランとは、介護保険を利用する介護サービスの利用計画書のことで、高齢者の状態に応じて、必要なサービスを受けられるように作成されています。
機能訓練(リハビリテーション)
多くの「介護付き有料老人ホーム」では、日常生活やレクリエーションを通じて、歩行訓練やトレーニングなどの「機能訓練(リハビリテーション)」を行っています。リハビリテーションの専門スタッフを配置し、設備も充実している施設もあります。
医療サービス
「介護付き有料老人ホーム」は、看護職員が日中常勤することや、協力医療機関を定めることが、義務付けられています。協力医療機関の医師によって、訪問診療が月2回、定期健康診断が年2回実施されている他、朝夕の体温・血圧・脈拍の測定、服薬管理、健康相談といった健康管理サービスが、提供されています。
ただし、日常的に医療ケアが必要な場合は、対応できるかどうかは、施設によって異なります。24時間看護職員が常駐する施設もありますので、医療体制を確認しましょう。
シニアのあんしん相談室ではご希望のサービスやお身体の状態を伺い、最適な施設をご提案いたします。ぜひお気軽にご相談ください。介護付き有料老人ホームの設備
「介護付き有料老人ホーム」の居室は、個室が中心です。居室の広さは、13平米以上という規定があり、18~23平米程度の広さの施設が多いです。
夫婦用の広い間取りの個室を設けている施設もあります。居室にある設備は、トイレと洗面台が一般的です。施設によっては、キッチンや浴室を設置した居室も設けています。
共用施設を見ていくと、「介護付き有料老人ホーム」では、食堂を兼ねたリビングが設けられているのが一般的です。
食事、レクリエーション、イベントに使われる他、入居者の憩いの場となっています。浴室は、共用施設として設けられている施設が多く、大浴場タイプの共用浴、一人用の個浴、寝たきりの方などのための機械浴といった種類があります。
この他に、理美容室や娯楽室など、共用施設が充実した「介護付き有料老人ホーム」もみられます。
介護付き有料老人ホームのメリット・デメリット
「介護付き有料老人ホーム」には、次に挙げるメリットやデメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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「介護付き有料老人ホーム」は、介護が必要で、自分の価値観に合った施設で過ごしたい方に向いています。一方で、現状では介護の必要はなく、将来に備えて有料老人ホームに入居したい方には「住居型有料老人ホーム」、介護が必要で費用を抑えたい方には「特別養護老人ホーム」などの公的施設が適しています。
介護付き有料老人ホームの退去事由と主な退去後の入居先
PwCコンサルティングによる「平成30年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者向け住まいにおける運営実態の多様化に関する実態調査研究」の調査結果によると、「介護付き有料老人ホーム」の退去自由は、以下となっています。
「介護付き有料老人ホーム」は、「住宅型有料老人ホーム」と比較して、施設による介護サービスが受けられるため、「ついのすみか」として選ぶ方が多いことが、死亡による契約終了の割合の高さにつながっています。
介護付き有料老人ホームの選び方
「介護付き有料老人ホーム」は、施設によって特色があるため、次に挙げる4点を基に、検討していくのがおすすめです。
■「介護付き有料老人ホーム」の選び方のポイント
- ・受けられる介護サービス
介護職員が人員配置基準以上の体制となっているか、看護職員は24時間常駐しているかなど、介護サービスの提供体制を確認します。また、介護保険の適用外のサービスも確認しておくと、安心です。
- ・入居要件
ご自身の要介護レベルに応じて、「自立型」「介護専門型」「混合型」の中から、対象となる形態の施設を選びます。
- ・入居期間
長期入院を要する場合や、認知症が進行した場合などに、入居を続けられるのかどうか、退去要件を確認しておきます。
- ・費用
入居一時金と月額利用料金の目安を把握し、無理なく支払いが可能かどうか、判断することが大切です。
高級有料老人ホームもある
「介護付き有料老人ホーム」の中には、「高級有料老人ホーム」と呼ばれる施設もあります。入居一時金は数百万円~数千万円、中には1億円、数億円といった施設もあるなど高額ですが、ホテルや別荘のような豪華な施設となっています。
「高級有料老人ホーム」は、ホテルで腕を振るっていたシェフを招くなど、食事に力を入れている施設が多く、高級レストランのような雰囲気の中で、食事を楽しめます。温泉、プール、ミニシアター、カラオケなど、娯楽設備が充実しているのも特徴です。
「高級有料老人ホーム」に興味のある方は、「サクラビア成城「入居金3億円超え」の高級有料老人ホームとは?」をご覧ください。
介護付き有料老人ホームのまとめ
「介護付き有料老人ホーム」では、施設のサービスとして、介護サービスが提供され、手厚い介護を受けることができます。介護職員や看護職員の配置基準が決められているなど、介護が必要な方が安心して暮らせる環境があります。
ただし、入居条件や提供されるサービスは施設によって異なる場合があり、料金には大きく違いがありますので、気になる施設が見つかったら、まずは詳細を確認しましょう。
シニアのあんしん相談室は、入居相談員がお客様の施設選びをサポートいたします。お気軽にご相談ください。年齢 | 60歳/65歳以上 | 認知症 | 対応 |
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介護レベル | 自立~要介護5 | 共同生活 | 必須 |
食事提供 | ◎ | 掃除・洗濯 | ◎ |
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見守り・生活相談 | ◎ | 買い物代行 | ○ |
食事介助 | ◎ | 入浴介助 | ◎ |
排泄介助 | ◎ | 着替え介助 | ◎ |
機能訓練(リハビリ) | △ | レクリエーション | ◎ |
医療ケア | ○ | 服薬管理 | ◎ |
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医療機関との連携 | ◎ | 通院時の送迎 | △ |
機能訓練室 | 施設によって異なる | 健康管理・相談室 | あり |
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老人ホーム・介護施設の比較一覧
介護でお悩みの方なら「介護ガイド」。各高齢者向け住宅の説明や介護保険制度のこと、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居までの段取りガイドなどをご紹介します。
老人ホーム・介護施設の種類 | 費用の目安 | 入居条件 | 終の すみか |
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初期費用 | 月額 | 自立 | 要支援 | 要介護 | 認知症 | |||
民間型 | 有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15万~35万円 | |||||
介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15万~35万円 | ||||||
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15万~35万円 | ||||||
サービス付き高齢者向け住宅 | 大半が敷金のみ |
13万~25万円
※食事など除く |
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グループホーム | 0~30万円 | 13万~20万円 | ||||||
シニア向け分譲マンション | 数千万~1億円 |
5万~20万円
※食事など除く |
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公共型 | 特別養護老人ホーム | なし | 6万~15万円 | |||||
介護老人保健施設(老健) | なし | 8万~20万円 | ||||||
介護医療院 | なし | 8万~20万円 | ||||||
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 0~数百万円 | 8万~15万円 |
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)