介護保険とは|制度の仕組みなどの基本をわかりやすく解説
介護が必要な人を社会全体で支えるために、公的な介護保険制度が設けられています。
介護保険サービスは、要介護認定などを受けた人が所得に応じた自己負担額で利用することが可能です。
介護保険制度の仕組みや対象者、介護保険で利用できるサービスなどについて紹介していきます。
介護について不安があればご相談ください。
介護保険とは
介護保険制度とは、介護が必要な人を社会全体で支えるために、2000年4月から施行された制度です。介護保険制度は40歳以上の国民から徴収した保険料と、国や都道府県、市区町村の税金で運営されています。
介護保険を利用する場合は、所得に応じて1~3割の費用を負担します。
介護保険制度の仕組み
介護保険制度では、市町村や特別区が保険者になります。
被保険者になるのは、65歳以上の第1号被保険者と40歳~64歳の第2号被保険者です。
第1号被保険者は要介護・要支援認定を受けることで介護保険サービスを利用することができます。
第2号被保険者が介護保険サービスを利用できるのは、末期がんや関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症など、老化に起因する16の特定疾病によって、要介護・要支援認定を受けた場合のみです。
介護保険サービスを利用する人は、介護サービス事業者に対して所得に応じて1~3割の自己負担額を支払い、残りは介護保険料や国、都道府県、市区町村の税金で賄われる仕組みです。
保険料の支払い
介護保険サービスの利用者による負担額を除いた給付額は、税金で50%、保険料で50%が賄われています。
税金は国25%、都道府県12.5%、市区町村が12.5%という負担割合です。
保険料による負担は、第1号被保険者の保険料22%、第2号被保険者の保険料28%となっています。
第1号被保険者の保険料は市区町村によって異なり、所得に応じた額が徴収されます。原則として、年金から天引きされます。
第2号被保険者は加入する医療保険によって保険料が異なり、医療保険の保険料と一体的に徴収されます。
組合けんぽや健康保険組合、共済組合の医療保険に入っている人は、標準報酬月額に応じて給与から天引きされ、事業主が半額負担しています。
医療保険の扶養に入っている配偶者は、保険料を納める必要がありません。
国民健康保険に加入している場合は、市区町村による違いがありますが、所得などに応じた額が徴収されます。
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介護保険サービスの対象者
介護保険サービスの対象になる被保険者は、年齢によって次の2つの区分があります。
- ・第1号被保険者(65歳以上の方)
- ・第2号被保険者(40歳から64歳までの方)
第1号被保険者と第2号被保険者の違い
介護保険制度の第1号被保険者と第2号被保険者は、公的年金制度の第1号被保険者や第2号被保険者とは異なります。
介護保険制度では第1号被保険者と第2号被保険者は年齢によって区分されているのに対して、公的年金制度では、以下のように区分されています。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 | |
---|---|---|---|
公的年金制度 | 国民年金 | 厚生年金 | 国民年金 |
対象者 | 個人事業主(自営業) 大学生 | 会社員 公務員 | 専業主婦 専業主夫 |
介護保険サービス適用の条件
第1号被保険者は要支援状態や要介護状態になると、介護保険サービスが利用できます。
一方、第2号被保険者が介護保険サービスを利用できるのは、老化に起因する16の特定疾病によって、要支援状態や要介護状態になった場合に限られています。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
---|---|---|
年齢 | 65歳以上 | 40~64歳 |
条件 | 要支援状態 要介護状態 | 老化に起因する特定疾病による要支援状態・要介護状態 特定疾病: 1 末期がん 2 関節リウマチ 3 筋萎縮性側索硬化症 4 後縦靱帯骨化症 5 骨折を伴う骨粗鬆症 6 初老期における認知症 7 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病 8 脊髄小脳変性症 9 脊柱管狭窄症 10 早老症 11 多系統萎縮症 12 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 13 脳血管疾患 14 閉塞性動脈硬化症 15 慢性閉塞性肺疾患 16 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
第2号被保険者が介護保険サービスを利用できるケースは限られていることから、サービスの主な対象となるのは第1号被保険者です。
介護保険サービスの利用
介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。また、要介護認定を受けるにあたっては、第1号被保険者は介護保険被保険者証が必要ですが、第2号被保険者は要介護認定を受けた後に自治体から発行されます。
介護保険被保険者証は自治体が交付
介護保険被保険者証は、介護保険を運営する保険者である市区町村などの自治体が発行しています。
介護保険被保険者証は、65歳を迎える誕生月に自治体から郵送で交付されます。
通常は40歳~64歳の人に対しては、介護保険被保険者証は交付されませんが、特定疾病によって要介護認定を受けた場合は交付されます。
ただし、介護保険サービスは介護保険被保険者証を持っているだけでは利用することはできません。
要介護認定が必要
介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受けることが必要です。
要介護認定とは、介護を必要とする度合いを判定するためのもので、要支援1~2、要介護1~5の7段階が設けられています。
非該当(自立)と認定された場合には、介護保険サービスを利用することはできません。要介護認定の申請は市区町村の窓口で行います。
要支援1~2に認定された場合は地域包括支援センター、要介護1~5に認定された場合は居宅介護支援事業所でケアプランの作成を依頼した後、ケアプランに沿って介護サービスを利用できるようになります。
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介護保険で受けられるサービス
介護保険で受けられるサービスは、次の3つに分けられます。
- ・居宅サービス
- ・施設サービス
- ・地域密着型サービス
居宅サービスには、自宅で生活しながら受けられる訪問介護や通所介護などのほか、施設での生活で提供されるサービスの特定施設入居者生活介護も含まれます。
施設サービスは介護老人保健施設や特別養護老人ホームへ入所して受けるサービスです。地域密着型サービスにはグループホームなどがあります。
居宅サービス
居宅サービスとは、自宅で暮らしながら利用できる介護保険サービスです。
住宅型有料老人ホームや一般型のサービス付き高齢者向け住宅などに入居して、外部事業者の介護保険サービスを別途契約して利用する場合も、利用するのは居宅サービスです。
居宅サービスには以下の種類があります。
居宅サービスの種類 |
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---|
「特定施設入居者生活介護」とは、都道府県知事などから指定を受けて、施設で食事や排せつ、入浴などの身体介助や、洗濯、掃除等などの生活援助サービスを提供するものです。
特定施設に該当するのは、介護付き有料老人ホームと介護型のサービス付き高齢者向け住宅、ケアハウス(軽費老人ホーム)などで、こういった施設は居宅にあたるため、居宅サービスに分類されています。
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施設サービス
介護保険による施設サービスは次の4つです。
施設サービス |
|
---|
介護老人保健施設は在宅復帰を目指す高齢者に対して、介護や医療、リハビリテーションを提供する施設です。特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の常時介護が必要な高齢者を対象に、介護や療養上の世話、リハビリテーションなどのサービスを提供しています。
介護療養型医療施設は長期にわたって療養が必要な高齢者が対象で、医療や介護、リハビリテーションなどが提供されていますが、廃止が決定しています。介護医療院は介護療養型医療施設に代わる施設として、2018年4月に新設されました。長期にわたって介護と医療を必要とする高齢者を対象とし、生活施設としての機能も持っています。
地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、原則としてサービスを提供する事業者が立地する市区町村に居住する高齢者が利用できるサービスです。
地域密着型サービスには、次の3つの小規模な施設があります。
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護は、認知症の高齢者を対象としたグループホームが該当します。グループホームでは、少人数の家庭的な環境の中、食事や排せつ、入浴などの介助を受けながら、家事に参加するなど、できる限り自立した生活を送ること目指します。
・地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護の対象となる施設は、特定施設の指定を受けた入居定員30人未満の介護付き有料老人ホームや軽費老人ホームなどです。地域密着型特定施設サービス計画にもとづいてサービスが提供されています。
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は、入所定員30人未満の特別養護老人ホームで、地域密着型施設サービス計画にもとづいてサービスが提供されている施設です。
地域密着型サービスはこのほかに以下のサービスがあります。
- ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- ・夜間対応型訪問介護
- ・地域密着型通所介護
- ・療養通所介護
- ・認知症対応型通所介護
- ・小規模多機能型居宅介護
- ・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
介護保険利用時の自己負担の割合
介護保険サービスの自己負担額の割合は、所得などに応じて1~3割と決められています。
3割負担 |
|
---|---|
2割負担 |
|
1割負担 |
|
居宅サービスの自己負担限度額
居宅サービスは介護度ごとに支給限度基準額(支給限度額)が決められていて、その範囲内でケアプランに沿ってサービスが提供されます。
支給限度額を超えて利用した分は、全額自己負担です。
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | 支給限度基準額 | |
---|---|---|---|---|
要支援1 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 | 50,320円 |
要支援2 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 | 105,310円 |
要介護1 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 | 167,650円 |
要介護2 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 | 197,050円 |
要介護3 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 | 270,480円 |
要介護4 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 | 309,380円 |
要介護5 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 | 362,170円 |
介護保険の自己負担額以外にも、介護老人保健施設や介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護療養型医療施設、介護医療院の利用では、食費や居住費(滞在費)は自己負担となります。
介護保険の負担限度額認定制度は、一定の収入要件を満たす人に対して、自己負担となる食費や居住費(滞在費)の負担を軽減する制度です。
居宅サービスの短期入所生活介護や短期入所療養介護の食費や居住費(滞在費)も軽減の対象となります。
特定施設入居者生活介護は自己負担が定額
自宅や住宅型有料老人ホーム、一般型のサービス付き高齢者向け住宅などで、訪問介護や通所介護などの居宅サービスを利用する場合には、利用した分に応じて自己負担額が発生します。
一方、特定施設入居者生活介護の指定を受けた介護付き有料老人ホームや介護型のサービス付き高齢者向け住宅では、介護保険サービスの自己負担額は介護度に応じて定額となっています。
介護保険単位数(30日) | 介護保険報酬(30日) | 自己負担額(30日) | |
---|---|---|---|
要支援1 | 5,430単位 | 54,300円 | 5,430円 |
要支援2 | 9,300単位 | 93,000円 | 9,300円 |
要介護1 | 16,080単位 | 160,800円 | 16,080円 |
要介護2 | 18,060単位 | 180,600円 | 18,060円 |
要介護3 | 20,130単位 | 201,300円 | 20,130円 |
要介護4 | 22,050単位 | 220,500円 | 22,050円 |
要介護5 | 24,120単位 | 241,200円 | 24,120円 |
まとめ
介護保険によって、介護を必要とする人は1~3割の自己負担額の支払いで、介護サービスを利用することができます。しかし、介護保険サービスの利用にあたっては、要介護認定を申請するなどの手続きが必要です。自分や家族に介護が必要な状態になったときに備えて、介護保険制度について理解しておきましょう。
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