高齢者の一人暮らしの問題点|知っておきたい支援サポートや対策について
親や親族など、高齢者にあたる家族が一人暮らしをしていて不安を覚えることはありませんか。特に、離れて暮らしていると、日常生活や健康面などの問題に家族が気づけない可能性もあります。
そこで今回は、高齢者の一人暮らしで起きる問題点を挙げたうえで、家族ができることや、活用できる支援サービスについて解説します。
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高齢者の一人暮らしは増えている
内閣府がとりまとめたデータによると、65歳以上の高齢者で一人暮らしをしている人の割合は、1980年以降右肩上がりに増加しています。
1980年時点で、一人暮らしをする高齢者は、男性約19万人、女性約69万人。高齢者に占める割合は男性が4.3%、女性が11.2%でした。
2015年になると、一人暮らしの高齢者は男性約192万人、女性約400万人へと大幅に増加しました。
高齢者に占める一人暮らしをする人の割合も、男性13.3%、女性21.1%に増加。
高齢者の女性のうち、4人に1人が一人暮らしをしている計算になります。
出典:内閣府『令和2年版高齢社会白書』
一人暮らしの高齢者が今後も増加すると見込まれていることから、高齢者本人や家族の多くがさまざまな問題に直面することが予想されます。
高齢者の一人暮らしに生じる問題点
高齢者が一人暮らしをする、あるいは一人暮らしをせざるを得ないのは、主に次に挙げる理由によるものです。
- ・子どもとの同居はお互いにストレスになる
- ・自立した生活を送れるので自由に暮らしたい
- ・経済的な心配がなく、生活環境に満足している
- ・住み慣れた土地を離れたくない
- ・家族や親族に頼れる人がいない
一方で、高齢者の一人暮らしで問題になりやすいのは次の4点です。
問題になりやすいこと |
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高齢者の一人暮らしでは、身体機能の衰えや気力の低下によって、買い物や調理、掃除など、日常生活を送るうえでの問題が出てきます。危惧されるのが、立ち座りの動作や歩行が困難になって介護を必要とする状態になったり、転倒によるケガによって寝たきりの状態になったりすることです。
また、認知症の発症や進行に周囲が気づかないでいるうちに、近隣とトラブルを起こすようになってしまうと、一人暮らしを続けることが難しくなります。
自立した生活を送れる状態であっても、災害時のようないざという時の対処や孤独死への不安がつきまといます。
日常生活の問題
高齢者の一人暮らしでは、足腰が弱くなったり、気力が低下したりすることで、買い物や調理、掃除などが思うようにできなくなり、日常生活で以下のような問題が生じることがあります。
日常生活での問題 |
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買い物に行けなかったり、調理をするのがままならなかったりすると、栄養バランスが偏った食生活となり、低栄養の状態に陥ることが危惧されます。
また、十分に掃除ができなくなることで、不衛生な状況での生活になるおそれもあります。
病気や健康面の問題
病気や健康面での問題を抱えると、一人暮らしを続けることが難しくなることが考えられます。
病気や健康面での問題 |
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立ち座りの動作や歩行が困難になると、一人で自立した生活を送るのは難しく、介護が必要になります。
また、転倒して骨折をしてしまうと、寝たきりになるおそれがあります。さらに、服薬管理ができず、薬の飲み忘れや飲み間違いが起こってしまうと、健康状態のさらなる悪化を招くかもしれません。
認知症に関しては、現時点での根本的な治療はできませんが、進行を穏やかにする対処療法はあります。
しかし、一人暮らしの場合は認知症の発症や進行に周囲が気づきにくく、進行を抑えるための手立てが取られにくいのが問題です。
認知症の進行によって、ゴミ出しなどのルールが守れなかったり、状況を正しく認識できず大声を出したりするなどして、近隣とトラブルになるおそれがあります。
その結果、賃貸物件の退去を迫られたり、あるいは犯罪に巻き込まれたりすることも危惧されることです。
いざという時への不安
日頃は問題なく生活をしている高齢者でも、地震や洪水などの災害が起きたいざという時に、自力で避難できるかどうかという点に不安を抱えている人が少なくありません。
- ・地震や洪水など自然災害時の避難
- ・急に具合が悪くなった時の緊急連絡
地震の発生で道路にがれきが散乱していたり、洪水で水深が深くなっていたりするなか、避難しなければならないことを考えると、平時よりも移動が困難になることは容易に想像できます。
また、急に具合が悪くなった時には、自力で救急車を呼ばなくてはなりません。
孤独死
以下のような理由から、高齢者は孤立しやすいことも問題点として挙げられます。
- ・定年退職によって社会とのつながりがなくなる
- ・近所付き合いがなく、地域とのつながりが希薄
特に、男性は近所付き合いがなく、定年退職によって働かなくなると社会とのつながりが希薄になりやすい傾向にあります。病気で動けなくなった時に周囲の助けを呼べず、その結果、周囲が異常に気づくのが遅れ、孤独死してしまうというリスクがあります。
実際に、内閣府の調査によると、一人暮らしの60歳以上の高齢者のうち、誰にも看取られずに死後に発見される孤立死を身近なものと感じている人の割合は50.8%と過半数に達しています。
出典:内閣府『令和2年版高齢社会白書』(第1章 第2節-4)一人暮らしの高齢者本人ができる対策
一人暮らしをする高齢者ができる対策として、すぐに体調の変化に気づけるよう、自治体の実施する健康診断を受診し、日頃から自分の健康状態を把握しておくことが大切です。
また、体調がすぐれずに買い物に行けない時や災害発生時に備えて、食料品や日用品をストックしておくと安心です。
さらに、災害発生時に備えて、避難場所の確認も忘れずに行いましょう。
自立した生活を送れる高齢者は、定年後も働くことで社会とのつながりを持てます。
地域とのつながりが希薄になっている場合には、自治会や町内会に加入することで地域との接点を持てます。自治会によっては、災害発生時に安否確認を行い、救助を行ったり応援を要請したりしているため、災害時の観点からも、自治会への参加しておくと安心です。
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一人暮らしの高齢者のために家族ができること
一人暮らしの高齢者の問題解決には、家族との同居が一つの方法として挙げられますが、仕事や家庭の問題、あるいは生活習慣の違いから、同居が難しいケースは少なくありません。
そのような一人暮らしの高齢者のために家族ができることとして、主に次の3つが挙げられます。家族ができること |
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たとえば高齢の親が一人暮らしをしている場合、日頃の暮らしぶりなどから本人の状況を把握し、差し迫った問題には早急に対処していくことが大切です。
ただし、家族が勝手に決めると反発を招くおそれがあるため、本人の意志を尊重しましょう。
本人の状況をきちんと把握する
高齢者の一人暮らしによるトラブルを避けるためには、まずは家族が本人の状況についてきちんと把握することが大切です。
しかし、何かしらの問題を抱えていて、一人暮らしを辞めさせられるのではないかと感じている場合は、家族へ正直に話さないことも考えられます。そのようなケースでは、暮らしぶりをチェックして本人の状況を把握しましょう。
たとえば、冷蔵庫を見れば、買い物に行くことができているか、消費期限切れの食品は廃棄されているかなどをチェックできます。
また、薬の袋やおくすり手帳などを確認することで、診療を受けている医療機関や飲んでいる薬を把握するとともに、薬を指示通りに服用しているかといったことも確認できます。
さらに、見慣れないものが増えている場合は、高齢者を狙った悪徳商法の被害にあっている可能性も考えられるため、購入場所を聞いてみましょう。
近所に親しくしている人がいる場合には、日頃の様子を尋ねてみることもおすすめです。
差し迫った問題の対応
高齢者本人の状態によっては、差し迫った問題に早急に対処することが必要です。
たとえば、ガスコンロの消し忘れが頻繁にある場合、立ち消え安全装置のついたガスコンロやIHクッキングヒーターにする方法が解決策として考えられます。
また、金銭管理に不安がある場合は、社会福祉協議会に相談すると、日常的なお金の出し入れや通帳の預かりなどのサポートを受けられます。
本人の意見を聞く
高齢の親の一人暮らしをサポートする場合、本人の意見に耳を傾けることも大切です。
親を心配するあまり、勝手にものごとを決めてしまうと、自分の生活が脅かされると考えて、警戒されるおそれがあります。
「お母さん(お父さん)はどうしたいの?」と尋ね、本人の意志を尊重する姿勢を見せると、サポートを受け入れてもらいやすくなります。
一人暮らしの高齢者をサポートする支援サービスもある
離れて暮らす家族ができることには限界があり、また、さまざまな理由から家族からのサポートを受けられない、あるいは受けたくないケースもあります。
そこで、一人暮らしの高齢者をサポートする支援サービスを利用することもおすすめです。
主な支援サービス |
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見守りサービス・安否確認サービスには、訪問型やセンサー型、カメラ型などがあり、高齢者と家族が離れて暮らすケースに適しています。
サービス付き高齢者向け住宅は高齢者向けの賃貸住宅で、安否確認と生活相談のサービスを受けられます。介護が必要な高齢者の場合は、要介護認定を受けることで介護保険による介護サービスの利用が可能です。このほかにも、自治体や民間による生活支援サービスもあります。
民間の高齢者向けの生活支援サービスの一つに、栄養バランスのとれた食事を届ける宅配弁当サービスがあります。宅配弁当サービスは数も多く、サービスの選定は大変です。
「シニアのあんしん相談室 宅配ごはん案内」では、手軽に資料請求ができますので、ぜひご活用ください。
見守りサービス・安否確認サービス
高齢者向けの見守りサービスや安否確認サービスには、さまざまな形態があります。代表的な「訪問型」では、高齢者の自宅をスタッフが定期的に訪問し、状況を記録して家族に伝えるサービスです。
「センサー型」は、センサーが高齢者の動きを一定時間検知しない場合に、家族のスマートフォンなどに通知するサービスを指します。
「カメラ型」では、高齢者の自宅にネットワークカメラを設置して様子を確認したり、呼びかけに応答したりするものです。
「通報型」のサービスでは、緊急時に通報ボタンを押すとスタッフが駆けつけます。
一人暮らしをする高齢者と遠く離れて住んでいて、すぐに駆けつけるのが難しい場合には、見守りサービスや安否確認サービスの利用が適しています。
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夜間対応型訪問介護とは? 利用するメリットや料金について
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅とは、安否確認サービスと生活相談サービスの提供が義務付けられた、バリアフリー仕様の賃貸住宅です。
日中は介護や医療の有資格者の生活相談員が常駐しています。なかには、食事の提供や通院の付き添いなどのサービスがオプションで提供されている物件もあります。
サービス付き高齢者向け住宅は、介護施設と異なり、外出や外泊が自由にできるところが多く、家族や友人も自由に訪問できるなど、生活の自由度が高いのが特徴です。
サービス付き高齢者向け住宅は、自立した生活を送ることが可能な高齢者で、一人暮らしには不安がある人に向いています。
シニアのあんしん相談室では、老人ホームの無料入居相談を行っています。
サービス付き高齢者向け住宅も紹介可能ですので、まずはご相談ください。
介護保険制度での介護サービス
介護保険による介護サービスのうち、自宅で生活しながら利用できるものは、訪問サービスと通所サービス、短期入所サービスに分けられます。
訪問サービスには、訪問介護員が自宅を訪問して身体介護や生活援助を行う「訪問介護」のほか、「訪問看護」や「訪問リハビリテーション」などがあります。
通所サービスとは、デイサービスセンターで食事や入浴、レクリエーションなどを行う「通所介護(デイサービス)」や、リハビリを受ける「通所リハビリテーション(デイケア)」などです。
短期入所サービスは、施設への宿泊で介護サービスが提供される「短期入所生活介護(ショートステイ)」を指します。
介護保険による介護サービスを利用するには、要介護認定を申請し、要支援1~2または要介護1~5の判定を受けることが必要です。居宅介護支援事業所でケアマネジャーにケアプランを作成してもらうと、身体の状態に応じた必要なサービスを利用できます。
ただし、介護度が重い場合、介護サービスを利用しても一人暮らしは難しいため、軽度の介護が必要な高齢者に向いています。
各自治体による支援サービス
自治体によっては、一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯に向けた支援サービスを行っています。
たとえば、ボタンを押すと緊急通報される機器の貸し出しや公衆浴場で利用できる入浴券の支給、家具転倒防止器具の取り付け、火災安全システムの給付などが挙げられます。
自立した高齢者や軽度の介護が必要な高齢者に人が、安心して自宅で暮らしたい場合に適しています。
まとめ
高齢者の一人暮らしには、日常生活や病気・健康面の問題が起こる可能性があるほか、いざという時の不安を抱えたり、孤独死を招いたりするおそれもあります。
家族が本人の状況や意見を把握・尊重することが大切である一方、家族だけでのサポートが容易ではないことも事実です。
高齢の家族が安心して一人暮らしを送れるよう、介護保険によるサービスや自治体のサービス、民間の生活支援サービスなどを上手に活用しましょう。
シニアのあんしん相談室では、有料老人ホームへの入居相談を承っています。
入居は決めていなくても、将来の選択肢の一つとしてご検討いただくためのご相談も可能です。
高齢者の一人暮らしで生じる問題点 |
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一人暮らしの高齢者をサポートする支援サービス |
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