介護疲れの危険性|在宅介護に限界を感じる前に対策をして負担を軽減しよう
在宅介護は、親の介護を担う子の負担が大きいことなどによる「介護疲れ」が、しばしば問題になることがあります。
介護は短期間で終わるものではなく、休みなく続いていくものです。家族の負担が大きいと介護うつなどを招くケースもあります。そこで介護疲れを引き起こす要因や、軽減するための方法などについてご紹介します。
目次 |
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在宅介護のメリット
在宅介護とは、親の介護を子が担うなど、要介護者を自宅で介護することをいいます。
在宅介護では、家族による介護を受ける他、介護保険による介護サービスを利用することができます。
在宅介護には、次のようなメリットが挙げられます。
在宅介護のメリット |
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在宅介護は、住み慣れた自宅での生活を続けられることが大きなメリットです。
在宅介護では、要介護度に応じて、必要な介護サービスを選択して利用することができます。
在宅介護で利用できる介護サービスには、訪問介護や訪問リハビリなどの「訪問系サービス」、通所介護(デイサービス)や通所リハビリなどの「通所系サービス」、ショートステイなどの「短期入居系サービス」などがあります。
在宅介護は、施設介護よりも介護費用が安く、利用頻度を調整することで、費用を抑えることもできます。
在宅介護のデメリット
家族が在宅介護を担うと、次に挙げるデメリットが生じてしまうことがあります。
在宅介護のデメリット |
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在宅介護のデメリットのうち、主なものについては、次の「介護疲れが引き起こす問題」で詳しく解説していきます。
介護疲れが引き起こす問題
在宅介護によって、家族にはさまざまな介護疲れによる問題が引き起こされることがあります。
介護疲れによって起きる問題は、主に次の3つに分けられます。
- ・身体的な疲労
- ・精神的な疲労
- ・経済的な問題
「身体的な疲労」は、身体介護によるもので、深夜にも排せつの介助などの介護が発生することにより、睡眠不足になるなど、身体的な負担となります。
「精神的な疲労」は、主に、要介護者や他の家族、親族、介護スタッフとの人間関係によるものです。また、在宅介護にもお金がかかり介護のために離職をしてしまうと、将来に対する不安が生じるなど、「経済的な問題」が起こることもあります。
身体的な疲労
身体介護は、在宅介護を担う家族の身体的な疲労の原因となります。
一日に何回も行う必要があり、介護者を持ち上げたり、支えたりする動作を伴うことから、介護者の腰や膝、腕などへの負担がかかりやすくなります。
中でも、前かがみになる動作が多いことが、介護者の腰を痛めてしまいやすい理由といえます。
また、家族が介護を担う場合、専門的な知識やスキルがないことからも、身体へ過度な負担がかかりやすくなります。
身体的な疲労の原因となる身体介護には、次のようなものが挙げられます。
身体的な疲労の原因となる身体介護 |
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また、介護は日中だけではなく、夜間にも必要になることがあります。
夜中にトイレに付き添ったり、おむつ交換をしたりしていると、十分な睡眠時間を確保しにくくなるため、寝不足も身体的な疲労につながっていきます。
精神的な疲労
厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査」によると、同居の主な介護者に対して、日常生活での悩みやストレスの有無を聞いた問いでは、「ある」が68.9%、「ない」が26.8%という割合となっています。 7割近くの介護者が、介護による悩みやストレスを感じていることが分かります。
参考:「平成28年 国民生活基礎調査 概要」
一般的に、在宅介護では、さまざまな立場の人との人間関係の疲れが、精神的な疲労として蓄積していくことがあります。人間関係の煩わしさから、介護の大変さを誰にも相談できなくなることも、精神的に追い詰められていく要因です。
在宅介護を担う人がストレスを抱える要因となるのは、主に次に挙げる人間関係です。
- ・要介護者
- ・他の家族
- ・親族
- ・ケアマネジャー
- ・介護スタッフ
要介護者との関係では、言動にイライラしてしまうことや、要介護者のためにやったことが反発を招いてしまい、苛立たしく感じることが精神的な疲労の要因です。
また、疲労が蓄積して、感情がコントロールできなくなってしまったときに、思わず要介護者に対して怒鳴ったり、喧嘩になってしまったりすると、自己嫌悪から精神的に落ち込んでしまいがちです。
他の家族や親族が介護に協力的ではない場合には、「自分だけが介護の負担が重く、嫌になった」という思いがストレスにつながっていきます。
また、ケアマネジャーや訪問介護などの介護スタッフとの相性が悪いケースや、介護サービスに不満を抱えていても言い出せないケースも、精神的な疲労の原因となります。
経済的な問題
在宅介護による経済的な問題も、介護疲れにつながる要因です。
在宅介護には、介護保険による介護サービスの自己負担額の他、おむつ代などの費用がかかります。
要介護度によっては介護保険を利用できますが、介護ベッドやポータブルトイレといった介護用品の準備も必要です。
自宅のバリアフリーリフォームが必要な場合、介護保険が適用される工事もありますが、大規模なものだと多額の費用が発生します。
在宅介護は、介護と仕事との両立がしばしば問題となります。
家族で協力して介護を担うケースはまだ負担が軽減されますが、介護を一人で背負うと、心身の疲労が溜まっていってしまいがちです。
また、要介護度に応じて、介護保険による介護サービスは利用限度額が決められていて、超えた分は全額自己負担となります。
家族が介護を担う時間が増えることも、介護と仕事の両立が難しくなる要因です。
介護の負担から、介護者が仕事を辞めるような事態になると、貯蓄や要介護者の年金で生活することになり、ますます経済的な不安を抱えることになります。
在宅での介護に不安を感じている方は、シニアのあんしん相談室にご相談ください。
入居専門相談員がご状況を伺い、老人ホームへの入居のサポートをいたします。入居の意思が固まっていない状態でのご相談も承ります。
介護のストレスチェックが大切
介護によるストレスは、自分では気づかないケースも見られます。
簡易的なストレスチェック項目で心当たりのあるものが多い場合、介護によるストレスを抱えている可能性があります。
下記のストレスチェック項目で確認してみましょう。
ストレスチェック項目 |
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在宅介護の疲れを軽減する方法
在宅介護によって、精神的な疲労や肉体的な疲労が蓄積していくと、介護うつなどの病気を招く恐れがあります。
現状から脱して、在宅介護による疲れを軽減する主な方法には、次の3つが挙げられます。
- ・悩みを人に相談する
- ・高齢者支援サービスの利用
- ・施設への入居
家族や友人に介護に関する悩みを聞いてもらうだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
また、プロに相談することで有益な情報を得られることが期待できます。実際に、介護の負担を軽減するには、介護保険による介護サービス・行政サービス・民間業者によるサービスなどの高齢者支援サービスを利用する方法があります。
あるいは、介護疲れによって介護うつに陥るといった事態に追い込まれるまでに、施設への入居を検討してみましょう。
悩みを人に相談する
一人で介護に関する悩みを抱えていると、ネガティブな方向へと考えてしまいがちです。介護に関するちょっとした悩みを人に聞いてもらうだけでも、気持ちが軽くなることがあります。また、同じように介護に関する悩みを持っている人と話すと、共感してもらえることによって安心感が生まれたり、有益な情報をもらえたりします。また、ケアマネジャー、認知症の主治医、カウンセラーといったプロに相談して、対処方法のアドバイスをもらうのもおすすめです。
以下、介護の悩みの相談先となりうるところをまとめました。まずは相談しやるい人や機関に頼ってみましょう。
- ・家族
- ・親族
- ・友人
- ・ケアマネジャー
- ・精神科の認知症の主治医
- ・病院のソーシャルワーカー
- ・家族会
- ・カウンセラー
- ・市区町村の役所の介護保険課・福祉課
- ・地域包括支援センター
- ・認知症の相談窓口
高齢者支援サービスの利用
介護疲れは、高齢者支援サービスを利用して、介護の負担を軽減することで、緩和されることが期待できます。
高齢者支援サービスは、介護保険による介護サービス以外にも、公的なものや民間業者によるサービスがあります。
高齢者支援サービス一覧 |
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施設への入居
在宅介護による介護疲れによって、介護うつや介護離職に追い込まれてしまう前に、介護施設を利用するという選択肢もあります。介護施設に入居することで、家族の負担は大きく軽減されます。
介護施設へ入居させるとなると、「親が見捨てられたと感じるのではないか?」と罪悪感を覚える人もいます。
しかし、介護施設への入居に罪悪感を持つ必要はありません。在宅介護に無理が生じている場合は、介護施設に入居して適切なケアを受けることで、要介護者の心身の状態が落ち着くケースもあります。
また、介護は長期間にわたって続くことからも、無理なく続けられる体制を取ることが大切です。
介護施設を探す際には、「シニアのあんしん相談室」を利用すると、心身の状態や希望条件に合った施設の紹介を受けられるため、施設探しの負担が軽減できます。ぜひお気軽にご相談ください
在宅介護と施設介護の違い
在宅介護と施設介護は、介護者に大きな違いがあります。
在宅介護の中でも、家族だけで介護を担う自力介護では、全ての介護を家族が担い、訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを利用する場合も、一部の介護は家族が行います。
在宅介護では、全部あるいは一部の介護を家族が担うのに対して、施設介護では24時間、プロのスタッフが介護を行います。
在宅介護なら、住み慣れた自宅での生活を続けることができます。
要介護度に応じて、必要な介護サービスを組み合わせて利用することができ、施設介護よりも費用を抑えられることもメリットです。在宅介護の平均費用は、介護保険による介護サービスの自己負担分が約1万6,000円、おむつ代など介護保険外の費用が約3万4,000円で、合計5万円程度です。
ただし、要介護度によっても異なり、要介護1の場合の平均は3万3,000円ですが、要介護5では7万5,000円となっています。
一方で、寝たきりになるなど、要介護度が重いほど、介護者の負担が精神的にも肉体的にも重くなるというデメリットがあります。また、日中は介護サービスを利用できても、夜間の介護は家族が担うことになることも、在宅介護の負担が重い要因です。
施設介護は、心身の状態に応じて、プロによる適切な介護を受けられることがメリットです。医療体制が充実している施設であれば、医療ケアを受けることもできます。
また、施設介護によって、家族の介護の負担が軽減され、要介護者の気疲れが緩和されることもあります。
ただし、施設介護は、施設による違いもありますが、高額な費用がかかることがデメリットです。要介護者と施設の相性が悪いと、短期間で退所するケースがあるため、本人に合った施設を探すことが大切です。
シニアのあんしん相談室の「老人ホーム診断」では、質問に答えるだけであなたにあった老人ホームの種類を診断できます。
まとめ
在宅介護による介護疲れは、主に身体的な疲れ、精神的な疲れ、経済的な問題によるものです。
在宅介護の悩みは一人で抱え込まずに、家族、友人、専門家に相談したり、高齢者支援サービスを利用したりすることが大切です。
また、介護疲れによって、介護うつに陥る前に、施設への入居を検討してみましょう。
シニアのあんしん相談室では、一人一人の心身の状態や希望条件に合った施設を、無料でご紹介しています。介護、仕事、家事などで忙しい人でも、スムーズに介護施設を探すことができます。まずはお気軽にご相談ください。
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