要介護認定とは|要支援との違いなどの基本知識から申請方法や更新について解説
介護保険による介護サービスを利用するために、まず、必要となるのが要介護認定です。
また、一度要介護認定を受けても有効期間があり、更新申請の手続きが必要になります。
要介護認定とは何か、基準や要介護と要支援の違いなどについて解説したうえで、申請の方法や利用できるサービスについても触れていきます。
目次 |
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要介護認定とは
要介護認定とは、身体の状態や認知機能などかから、介護をどの程度必要とするのか、判定するためのものです。
介護保険を使って介護サービスなどを受けるためには、要介護認定が必要です。
要介護認定では、非該当、要支援1~2、要介護1~5のいずれかの判定が下されます。非該当は自立という認定となり、介護保険によるサービスを利用することはできません。
要支援1~2と要介護1~5は区分ごとに、介護保険で利用できるサービスや支給基準限度額(支給限度額)に違いがあります。支給基準限度額とは、介護保険によるサービスを利用できる上限額です。
サービス | 支給限度基準額(1ヶ月) | |
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要支援1 | 介護予防サービス | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 | |
要介護1 | 介護サービス | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 | |
要介護3 | 270,480円 | |
要介護4 | 309,380円 | |
要介護5 | 362,170円 |
要支援と要介護の違い
要支援は日常生活の基本動作はほぼ自分でできるものの、将来、介護を必要とする状態になることを予防するために、部分的な支援を必要とする状態です。これに対して、要介護は日常生活の基本動作を自分で行うことが難しく、介護を必要とする状態が該当します。
介護保険によって利用できるサービスは、要支援は介護予防サービスなのに対して、要介護は介護サービスになります。
また、介護保険による介護予防サービスや介護サービスの利用にあたってはケアプランの作成が必要です。ケアプランは本人や家族が作成することもできますが、ケアマネージャーに依頼するのが一般的です。
要支援の場合は地域支援包括支援センターのケアマネージャーに依頼するのに対して、要介護の場合は居宅介護支援事業所のケアマネージャーに依頼するという違いもあります。
ケアプランの作成にかかる費用は、全額介護保険で賄われるため、自己負担はありません。
要支援 | 要介護 | |
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分類 | 要支援1~2 | 要介護1~5 |
状態 | 日常生活の基本動作をほぼ自分で行うことができるが、部分的な支援を必要とする状態 | 日常生活の基本動作を自分で行うことが難しく、介護を必要とする状態 |
利用できるサービス | 介護予防サービス | 介護サービス |
ケアプランの依頼先 | 地域包括支援センターのケアマネージャー | 居宅介護支援事業所のケアマネージャー |
要介護認定の審査方法
要介護認定の申請を行うと審査が実施されます。要介護認定の審査は、次の2つのステップで行われます。
- 1.一次判定
- 2.二次判定
一次判定は、市区町村の調査員による本人や家族に対する訪問調査と主治医の意見書から、コンピューターが介護にかかる想定時間を算出し、要支援1~2と要介護1~5の7つの区分に分類するものです。
二次判定では一次判定の結果や主治医の意見書などをもとに、保健医療福祉分野の5名程度の学識経験者によって構成される介護認定審査会で審査が行われ、要介護度が判定されます。
要介護認定の基準
要介護認定のための訪問調査では、調査項目は6つに分類されていて、本人の能力や介助の方法、障害が現象の該当の有無で判定されます。
また、審査の一次判定の基準となるのは、訪問調査や主治医の意見書をもとにコンピューターが算出した要介護認定等基準時間です。
要介護認定のチェック項目
一次判定で市区町村の調査員による訪問調査の項目は、以下に分類されています。
- ・身体機能・起居動作
- ・生活機能
- ・認知機能
- ・精神・行動障害
- ・社会生活への適応
- ・過去14日間に受けた特別な医療について
調査方法は、本人に実際にやってもらうなど能力によって判定する項目と、介助の有無や方法で判定する項目、障害や現象の該当の有無で判定する項目に分かれます。
「身体機能・起居動作」と「認知機能」は能力によって判定する項目が多く、「生活機能」と「社会生活への適応」は介助の方法による判定項目が多いです。「精神・行動障害」と「過去14日間に受けた特別な医療について」の項目は主に該当の有無によって判定が行われます。
要介護認定等基準時間
要介護認定等基準時間とは、介護にかかる手間を時間で示したもので、要介護認定の審査の一次判定で、コンピューターによって算出されます。
要介護認定等基準時間は、入浴や排せつ、食事の介助などの「直接生活介助」、洗濯や掃除などの家事といった「間接生活介助」、徘徊の捜索や不潔行為の処理などの「BPSD関連行為」、リハビリが該当する「機能訓練関連行為」、床ずれの処置の診療補助などの「医療関連行為」の5項目の介護にかかる時間の推計によるものです。
要介護認定等基準時間と実際にケアにかかる時間は異なります。
要支援1~2と要介護1~5は、要介護認定等基準時間によって、以下のように区分されています。ただし、要介護認定等基準時間に限らず、それぞれの区分に相当するとされる状態も含まれます。
要支援認定 |
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要介護認定 |
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要支援2と要介護1の要介護認定等基準時間は同じです。
認知症の有無と、半年以内に状態が変化する可能性を評価して区分されます。
想定される症状や状態
要支援1~2と要介護1~5は、次に挙げる症状や状態が想定されています。
要支援認定 |
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要介護認定 |
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要介護認定の申請方法
要介護認定の申請や審査は以下の流れで行われます。通常、要介護認定の申請から要介護認定結果通知が届くまでの期間は約30日ですが、2ヶ月程度を要することもあります。
- 1.市区町村の窓口などへ申請
- 2.市区町村の調査員による訪問調査
- 3.市区町村からの依頼によって主治医が意見書を作成
- 4.コンピューターによる一次判定
- 5.介護認定審査会による二次判定
- 6.要介護認定結果通知
- ・要介護認定・要支援認定申請書
- ・介護保険被保険者証
- ・健康保険証(年齢が40歳~64歳の第2号被保険者のみ)
- ・主治医の医療機関の名称や所在地がわかるもの(診察券など)
- ・介護保険審査会に不服の申し立て
- ・区分変更申請
- 1.市区町村の窓口などへ申請
- 2.市区町村の調査員による訪問調査
- 3.市区町村からの依頼によって主治医が意見書を作成
- 4.コンピューターによる一次判定
- 5.介護認定審査会による二次判定
- 6.要介護認定結果通知
- 訪問リハビリテーション:週1回
- 通所リハビリテーション:月2回
- 訪問リハビリテーション:週2回
- 通所リハビリテーション:月2回
- 訪問介護:週2回
- 通所介護または通所リハビリテーション:週4回
- 福祉用具貸与:歩行補助杖
- 訪問介護:週2回
- 通所介護または通所リハビリテーション:週4回
- 訪問看護:週1回
- 福祉用具貸与:介護用ベッド、歩行補助杖
- 訪問介護:週3回
- 通所介護または通所リハビリテーション:週3回
- 訪問看護:週1回
- 短期入所介護:週1回
- 福祉用具貸与:介護用ベッド、車椅子、歩行器
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 訪問看護:週1回
- 訪問入浴介護:週1回
- 福祉用具貸与:介護用ベッド、車椅子
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 訪問看護:週4回
- 訪問入浴介護:週1回
- 短期入所生活介護:月2回
- 福祉用具貸与:介護用ベッド、エアマット、車椅子
- 1.地域包括支援センターへ相談する
- 2.地域包括支援センターのケアマネージャーが介護予防ケアプランを作成
- 3.介護予防サービスを利用する
- ・自宅で介護サービスを受ける場合
- 1.市区町村の介護保険課などの窓口や地域包括支援センターでリストをもらうなどして、居宅介護支援事業所を探す
- 2.居宅介護支援事業所を選び、担当のケアマネージャーが決定する
- 3.ケアマネージャーが自宅訪問などにより、本人の状況を把握
- 4.ケアマネージャーが必要なサービスを検討して、ケアプランを作成
- 5.介護サービスを利用する
- ・介護施設で介護サービスを受ける場合
- 1.入居したい介護施設を探す
- 2.介護施設に入居申し込みをする
- 3.介護施設のケアマネージャーがケアプランを作成する
- 4.介護サービスを利用する
申請場所は市区町村の窓口
要介護認定の申請を行うのは、本人が居住する市区町村の介護保険課などの窓口です。本人や家族による申請が難しい場合には、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、入居する介護保険施設に申請の代行を依頼することもできます。
申請に必要なもの
要介護認定の申請には次に挙げるものが必要になります。
要介護認定・要支援認定申請書は市区町村の窓口で入手するか、市区町村のホームページからダウンロードすることができます。
要介護認定・要支援認定申請書にはマイナンバーの記入欄があるため、マイナンバーカードや通知カードの用意も必要です。
要介護認定に納得できないとき
要介護認定結果に納得できない場合には、次の2つの対処方法があります。
都道府県に設置されている介護保険審査会に不服の申し立てを行える期間は、要介護認定結果通知を受け取った日から3ヶ月以内です。ただし、介護保険審査会による採決が出るまでには、数ヶ月かかることもあります。
そこで、本来は本人の状態に変化があったときに行う、区分変更申請を利用する方法もあります。区分変更申請を行うと、再度認定調査が行われます。
要介護認定の更新は申請が必要
要介護認定には有効期間があり、自動更新はされないことから、引き続き介護保険によるサービスを利用するには、更新申請の手続きが必要です。
要介護認定の更新によって要介護度が変わることがあり、身体の状態や介護の負担によっては、現状の介護体制を見直すきっかけになります。
在宅介護から施設への入居を検討する場合には、「シニアのあんしん相談室」を利用すると、身体の状態や希望条件にあった施設をスムーズに探すことができます。
要介護認定の有効期間
要介護認定の有効期限は原則として、新規認定は6ヶ月、更新認定は1年です。
ただし、市区町村が必要と認める場合は、新規認定の場合は3ヶ月~12ヶ月の間、更新認定の場合は3ヶ月~3年の間で、月単位で定めることができます。
要介護認定の更新方法
要介護認定の有効期間満了前日から数えて60日前から満了日までに更新申請の手続きを行う必要があります。要介護認定の更新方法は、原則として新規の認定申請の場合と同様です。
更新に必要なものも新規の認定申請と同様です。
申請書や介護保険被保険者証、診察券など主治医の医療機関の名称や所在地がわかるもののほか、40歳~64歳の第2号被保険者は健康保険証も用意します。
状態悪化時には区分変更を申請できる
要介護認定の有効期間内であっても、身体の状態が変わり、介護を必要とする度合いが変化した場合には、区分変更申請を行うことが可能です。
区分変更申請を行って、状態が変化したことが認められれば、新たな介護度に応じた介護サービスを受けることができます。
区分変更申請の手続き方法も新規の認定申請と同様で、約30日で結果が通知されます。
介護度により使用可能なサービス内容
要介護認定による介護度によって、介護保険によって利用できるサービスは異なります。また、介護保険の支給限度額の範囲内で利用できるサービスにも違いがあります。
要支援1~2 | 要介護1~5 | |
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訪問介護 | × | ○ |
訪問入浴介護 | ○ | ○ |
訪問看護 | ○ | ○ |
訪問リハビリテーション | ○ | ○ |
通所介護(デイサービス) | × | ○ |
通所リハビリテーション(デイケア) | ○ | ○ |
短期入所生活介護(ショートステイ) | ○ | ○ |
短期入所療養介護 | ○ | ○ |
特定施設入居者生活介護 | ○ | ○ |
福祉用具貸与 | ○(対象の福祉用具は介護度による) | |
特定福祉具販売 | ○(対象の福祉用具は介護度による) | |
夜間対応型訪問介護 | × | ○ |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | × | ○ |
地域密着型通所介護 | × | ○ |
療養通所介護 | × | ○ |
認知症対応型通所介護 | ○ | ○ |
小規模多機能型居宅介護 | ○ | ○ |
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | ○ | ○ |
地域密着型特定施設入居者生活介護 | × | ○ |
地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護 | × | ○ |
看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) | × | ○ |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | × | △(原則として要介護3以上) |
介護老人保健施設 | × | ○ |
介護療養型医療施設 | × | ○ |
介護医療院 | × | ○ |
要支援1 |
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要支援2 |
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要介護1 |
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要介護2 |
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要介護3 |
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要介護4 |
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要介護5 |
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介護サービスの利用方法
要介護認定を受けた後に介護保険によるサービスを利用する方法は、要支援1~2と要介護1~5では異なります。また、介護施設へ入所する場合も、違う利用方法になります。
要支援1~2の場合 |
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要介護1~5の場合 |
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まとめ
要介護認定は介護保険による介護予防サービスや介護サービスを利用するにあたり、必ず必要となるものです。介護度によって、利用できるサービスの内容やボリュームに違いがあり、支給限度基準額という利用上限額が決められています。サービスの利用にあたって、自分でケアプランを作成するのは難しいですので、在宅介護を利用する場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談しましょう。
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