老人ホームの部屋のタイプや広さとは?選ぶ際のポイントや探し方を紹介
2024.6.7

この記事の監修者:さとひろ

介護系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームに勤め介護職員やケアマネジャーを経験。資格取得のための研修講師や新規施設の開設にも携わる。現在は生活相談員として、入所調整や家族対応、行政対応や請求業務などを担っている。 2022年からライターとしての活動。複雑な介護業界の制度をわかりやすく解説します。 保有資格:社会福祉士、公認心理師、介護支援専門員、介護福祉士など
■この記事でわかること
- ・老人ホームの部屋のタイプ
- ・老人ホームの部屋の広さの基準
- ・老人ホームの部屋を選ぶときのポイント
老人ホームの部屋の居室タイプ4種類
老人ホームの居室は、室内や食堂の環境によって4つのタイプに分けられます。それぞれ費用が異なり、高い順に、ユニット型個室→ユニット型個室的多床室→従来型個室→従来型多床室となっています。
下表は、部屋ごとの種類と詳細をまとめたものです。
部屋の種類 | 詳細 |
---|---|
従来型個室(個室) | <居室タイプの特徴>
<一般的に採用されることの多い施設の種類>
|
従来型多床室(相部屋) | <居室タイプの特徴>
<一般的に採用されることの多い施設の種類> |
ユニット型個室(個室) | <居室タイプの特徴>
<一般的に採用されることの多い施設の種類> |
ユニット型個室的多床室(準個室) | <居室タイプの特徴>
<一般的に採用されることの多い施設の種類> |
従来型個室(個室)

従来型は、昔からあるタイプの居室タイプです。大きな共用の食堂から出ている廊下の周りに居室が配置されており、その個室部分を従来型個室といいます。以前は単に個室と呼んでいましたが、ユニット型施設が出てきたことで、区別するために従来型個室と呼ばれるようになりました。
従来型個室は一人部屋のため、プライバシーが確保されています。一方で、人の気配がなく寂しいという声もあります。ベッドやタンスなどの設備はそろっていることが多いです。
<一般的に採用されることの多い施設の種類>
- ・ケアハウス(軽費老人ホーム)
- ・介護医療院
- ・サービス付き高齢者向け住宅
- ・介護付き有料老人ホーム
- ・住宅型有料老人ホーム
- ・健康型有料老人ホーム
従来型多床室(相部屋)

従来型多床室は、従来型個室同様、共用の食堂から出ている廊下の周りに部屋がありますが、個室ではなく複数人と一緒の相部屋になります。1室の定員が2人~4人の居室で、4人部屋が一般的です。
同室者との区切りはカーテンだけのこともあれば、家具で仕切られている場合もあります。
最近では、壁で仕切られている施設もあります。
入居者1人あたりの面積は狭いですが、ほかのタイプと比べて費用が抑えられます。また、人の気配があって良いと感じる人もいます。しかし、同室者の音や匂いが気になってしまう人もいるでしょう。
<一般的に採用されることの多い施設の種類>
ユニット型個室(個室)

ユニット型個室は、入居者が最大15名の小規模の環境で過ごすことを主旨とした、ユニットケアを提供する施設で、すべて個室です。食堂の周りに居室が配置されており、居室を出ればすぐにリビングがあるため、自宅で過ごしているのと似た環境で過ごすことができるでしょう。
洗面台は各居室に設置されていることが多いですが、トイレは共用の場合もあります。費用は高めですが、従来型個室と比べて広めに作られており、プライバシーも保たれています。
厚生労働省はユニットケアの推進を掲げており、新しく開設する施設は原則ユニット型施設か、ユニット型と従来型の両方がある施設です。
<一般的に採用されることの多い施設の種類>
ユニット型型個室的多床室(準個室)

ユニット型個室的多床室は、以前は多床室として使用していた居室をパーテンションや可動式のパネルのような簡易的な壁で仕切り、個室のようなしつらえにしたタイプの居室です。
1人部屋に近い環境で自分だけの空間は確保できますが、完全には区切られていないため、隣の入居者の音は聞こえてしまいます。費用の相場はユニット型個室と同程度になっています。
なお、ユニット型個室的多床室は、個室化を進める観点から、2021年の介護報酬改定で新しく開設することが禁止されました。
老人ホームの部屋の広さの基準
老人ホームのような介護施設では、入居者の暮らしやすさのため、生活するための十分なスペースを確保するよう求められています。そのため、施設ごとに1室あたりの広さの基準が設けられています。
下表は、施設の種類ごとの1部屋あたりの最低床面積と、畳に換算したときの畳数をまとめたものです。なお、床面積については、バルコニーを除く1室あたりの床面積のことを指します。
部屋の種類 | 1室(1人)あたりの最低床面積 | 畳数に換算(江戸間:1.548㎡) |
---|---|---|
特別養護老人ホーム | 10.65㎡ | 6.88畳 |
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 21.6㎡ (洗面所、トイレ、収納、簡易的キッチンを除いた面積は14.85㎡) ※2人で共有する場合は31.9㎡ ※例外あり |
13.94畳 |
有料老人ホーム | 13㎡ | 8.39畳 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 25㎡ ※居間や食事等の共同部分が、共同して利用するために不便のない広さである場合は18㎡ |
16.14畳 |
グループホーム | 7.43㎡ ※サービス提供上、必要と認められる場合は2人の入居も可能 |
4.8畳 |
参考資料:社会福祉住居施設の設備基準|厚生労働省
なお、上記はあくまで基準です。古くからある施設では、当時の基準で建てられているため、基準を下回っている施設もあること存在します。
特別養護老人ホーム
1室(1人)あたりの最低床面積 | 10.65㎡ |
畳に換算(江戸間:1.548㎡) | 6.88畳 |
特別養護老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人が運営する公的な老人ホームです。原則要介護3以上の人を対象とした施設です。日常的に介助が必要な方に対して、食事や排泄、入浴などの介助や、機能訓練、その他の日常生活の世話を行います。
特別養護老人ホームの場合、個室でも多床室でも、1人あたりの床面積は同じ10.65㎡です。一般的な部屋の広さが6畳ほどと言われているため、同等かやや広めのスペースが確保されています。
居室以外では、共有スペース(食堂)の設置が義務付けられており、入居者の人数×3㎡以上にするよう定められています。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
1室(1人)あたりの最低床面積 | 21.6㎡ (洗面所、トイレ、収納、簡易的キッチンを除いた面積は14.85㎡) ※2人で共有する場合は31.9㎡ ※例外あり |
畳に換算(江戸間:1.548㎡) | 13.94畳 |
ケアハウス(軽費老人ホーム)は、身寄りがなかったり、家族との同居が難しかったりする高齢者のうち、一人暮らしに不安のある人のための施設です。洗面所やトイレなどを除いた床面積は14.85㎡以上(約10畳)あり、ほかの老人ホームと比べると広い設計になっています。
自立度の高い入居者が生活するため、洗面所やトイレ、収納などは居室に設置されています。浴室は共用の場合が多いですが、居室内にシャワーがついている場合もあり、施設によってさまざまです。
部屋の広さやシャワーの有無で料金の異なるタイプの居室を用意しているケアハウスもあります。また、原則個室ですが、夫婦用に2人部屋を設けている施設もあります。
有料老人ホーム
1室(1人)あたりの最低床面積 | 13㎡ |
畳に換算(江戸間:1.548㎡) | 8.39畳 |
有料老人ホームは、高齢者の心身の健康保持や生活の安定を目的とした施設です。食事・介護・生活支援・健康管理のうち、1つ以上のサービスを提供しています。
有料老人ホームには、対象者や提供するサービスによって「介護付」「住宅型」「健康型」の3つの種類に分けられています。居室は個室が原則で、1部屋あたりの最低床面積は、3種類とも共通で13㎡(約8.4畳)です。
一人暮らしに必要な最低畳数は7〜8畳と言われているため、同等の広さと言えるでしょう。洗面台やトイレは部屋の中にあり、浴室が居室に設置されている施設もあります。
サービス付き高齢者向け住宅
1室(1人)あたりの最低床面積 | 25㎡ ※居間や食事等の共同部分が、共同して利用するために不便のない広さである場合は18㎡ |
畳に換算(江戸間:1.548㎡) | 16.14畳 |
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者単身・夫婦世帯が居住できるバリアフリーの賃貸等の住まいで、専門の相談員による安否確認サービスや生活相談サービスを受けられます。入居の対象になるのは介護度が低く、認知症のない、自立した方です。介護が必要な方は外部サービスを利用します。
サービス付き高齢者向け住宅の1部屋あたりの最低床面積は原則25㎡以上です。また、各戸にキッチンや浴室を設置することになっています。ただし、利用するために不便のない広さの共有スペースを確保していれば、18㎡以上でよいとされているため、居室にキッチンや浴室がない場合もあります。
グループホーム
1室(1人)あたりの最低床面積 | 7.43㎡ ※サービス提供上、必要と認められる場合は2人の入居も可能 |
畳に換算(江戸間:1.548㎡) | 4.8畳 |
グループホームは、認知症と診断された高齢者が、介護職員のサポートを受けながら少人数で共同生活を送る施設です。入居の対象になるのは、認知症の診断を受けている要支援2以上の方です。施設によっては要介護1以上の方を対象にしている場合もあります。
グループホームは地域密着型のサービスのため、入居者は施設のある市町村に住民票がある方に限定されます。1部屋あたりの最低床面積は7.43㎡で、居室のほかに利用者同士が交流できる共有スペースがあります。
【監修者コメント】
それぞれの施設の床面積は最低の基準です。実際の床面積は各施設によって異なりますので、施設見学などで直接確認しましょう。
老人ホームの部屋を選ぶときのポイント
老人ホームの部屋選びは、入居した後に快適に過ごせるかどうかに大きく関わります。ここでは、老人ホームの部屋を選ぶときのポイントを5つ紹介します。施設見学をする際は、これらの点を確認しましょう。
老人ホームの部屋を選ぶときのポイント | 詳細 |
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快適に過ごせる広さか |
|
生活動線が良いか |
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部屋の設備が備わっているか |
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気持ちよく過ごせる環境か |
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夫婦で同じ部屋を利用できるか |
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【1】快適に過ごせる広さか
居室の広さが入居者にとって快適に過ごせる広さかどうかは大切なポイントです。入居者が生活する部屋は、狭すぎても広すぎても過ごしにくいものです。
部屋が狭すぎると、必要な家具を置けなかったり、圧迫感を感じたりします。車椅子を使っている方は、居室内の方向転換ができなくなる場合もあるでしょう。
一方、部屋が広すぎる場合は、移動に時間がかかったり、手すりまでの距離が遠くなることで転倒のリスクが高まったりします。また、広い部屋の場合は、費用が高くなる可能性も考えられます。
身体的・経済的負担を考慮し、入居する本人にとって程よい広さの部屋を選びましょう。
【2】生活動線が良いか
部屋の中での動きや、共有スペースへの移動などの生活動線も大切なポイントです。年齢とともに体が衰えてくるため、本人の身体機能や居室のつくりを考慮して、本人が動きやすい環境になっているかを確認しましょう。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- ・ベットからトイレなどへの移動のしやすさ
- ・車いすで乗り降りしやすいスペースがあるか
- ・車いすで移動しやすいスペースがあるか
- ・部屋の中や廊下に手すりはついているか
- ・生活動線に邪魔になるものはないか
生活動線を確認する際は、本人の身体の状態が、今後変化することも考えながら検討しましょう。
【3】部屋の設備が備わっているか
部屋の中の設備がどの程度備わっているかも、入居を検討する際に確認しましょう。設備は施設によってさまざまで、トイレや洗面台、浴室などの設備が居室内に備わっている施設もあれば、共有の施設もあります。
居室内に設備が整っていれば、生活が部屋の中で完結し、部屋の外に出なくてもよくなり、移動の負担が軽減できます。また、トイレや洗面台が自分専用のものになり、快適に使用できるでしょう。
一方で、居室から出ずに生活できてしまう場合、部屋の中のトイレや浴室での転倒や体調不良の際に、スタッフに気づいてもらいにくくなる可能性があります。異変を感じた際にスタッフをすぐに呼べるよう、ナースコールが押しやすい位置にあるかを確認しておきましょう。
また、設備が整っていることで居室が狭くなってしまう点や、料金が高くなる可能性があります。
【4】気持ちよく過ごせる環境か
老人ホームの部屋を検討する際は、日当たりや防音性、換気のしやすさなど、本人が気持ちよく過ごせる環境かどうかも確認しましょう。日当たりのいい部屋なら、一日のリズムをつくるのに良い影響をおよぼします。特に、身体機能が衰えて部屋で過ごす時間が長くなったときには、日当たりの良い部屋のほうが、心身の安定につながります。
ほかにも、レクリエーションの会場が近すぎると、静かに過ごしたくても周囲の音が気になってしまうこともあるため、部屋の位置や環境音がどの程度かを確認しておきましょう。また、排泄物による匂いや感染症を予防する観点で、換気のしやすさを確認しておくと安心です。
【5】夫婦で同じ部屋を利用できるか
自宅での生活の延長で、同室で過ごしたいと考える方もいるでしょう。施設によっては、夫婦で同じ居室に入居できる場合もあります。
しかし、夫婦部屋は数が少ないため、同じタイミングで入居できなかったり、身体状況が大きく異なったりすると同じ部屋に入居できない場合もあります。また、入居後にどちらかの介護度が重くなった場合、どちらか一方だけが移動しなければならないこともあるため、どのような対応になるのか入居前に確認しましょう。
理想とする老人ホームの部屋の探し方
理想とする老人ホームの部屋を探す際は、パンフレットやホームページだけを見て決めるのはおすすめしません。写真だけではわからない部分はたくさんあるため、条件に合う施設を複数ピックアップし、見学して実際の環境を確認しましょう。
有料老人ホームでは体験入居できる施設もあります。特別養護老人ホームや介護老人保健施設のような公的施設では、ショートステイを利用するのも、施設の様子を知るための一つの方法です。
それでも、希望に合う施設を自分で見つけるのは簡単ではありません。より良い施設への入居を希望するなら、プロへの相談を検討するといいでしょう。シニアのあんしん相談室では、入居される方の希望条件をヒアリングし、適切な施設をご案内します。
老人ホームを見学する際のポイントや手順の説明は、以下の記事を参照してください。
介護施設・老人ホーム見学のポイントや手順を紹介!【見学チェックシートあり】
【監修者コメント】
特別養護老人ホームで働いていると、確定申告が近づいた時期に、入居者から1年間分の領収書の再発行を依頼されることがあります。施設によっては対応できない場合もあるため、毎月送られてくる領収書を保管しておきましょう。
老人ホームへの部屋について【まとめ】
本記事では、老人ホームの居室のタイプや広さの基準、老人ホームの部屋を選ぶ際のポイントについて解説しました。老人ホームの部屋のタイプには、従来型個室、従来型多床室、ユニット型個室、ユニット型個室的多床室の4つがあります。また、入居者が暮らしやすいように施設の種類ごとに1室(1人)あたりの最低床面積が定められています。
老人ホームの部屋を選ぶ際は、部屋の広さや動線、設備などが本人に合っているかを実際に見学して確認しましょう。年齢とともに部屋で過ごす時間が長くなることも考えられます。今回の記事を参考に、より快適に過ごせる部屋を見つけてください。
【監修者コメント】
どの施設にどのようなタイプの部屋があるのかは、実際に見学してみないとわからないでしょう。特に、トイレの有無や居室の広さなどはパンフレットではわかりません。まずは対象になる施設をいくつかピックアップして、見学できるかどうか相談してみるのもよいでしょう。

記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)