老人ホームは外出禁止?可能なケースとできないケース・注意点を解説
2024.5.28
この記事の監修者:さとひろ
介護系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームに勤め介護職員やケアマネジャーを経験。資格取得のための研修講師や新規施設の開設にも携わる。現在は生活相談員として、入所調整や家族対応、行政対応や請求業務などを担っている。 2022年からライターとしての活動。複雑な介護業界の制度をわかりやすく解説します。 保有資格:社会福祉士、公認心理師、介護支援専門員、介護福祉士など
■この記事でわかること
- ・外出可能な施設と外出の条件
- ・外出が禁止される条件
- ・老人ホームから外出する際の注意点
老人ホームでの外出は基本的に可能
老人ホームでの外出は基本的に可能で、外出を制限する法律はありません。しかし、入居者の安全を守るために、外出の際の条件を設けている施設もあります。ここでは、外出可能な施設の特徴と条件について解説します。
ある程度は自由に出入りできる施設
外出が自由にできる施設は、自立や要支援の方、介護度の低い方が入居対象になっている施設です。下表の施設では、安全が確保されていれば、行き先や帰宅予定時間を施設の職員にあらかじめ伝えることで、単独でも外出・外泊ができます。
施設の種類 | 施設の特徴 |
---|---|
サービス付き高齢者向け住宅 | 【特徴】
【入居対象】
|
健康型有料老人ホーム | 【特徴】
【入居対象】
|
上記の施設は「高齢者の住居」という位置付けの施設であり、自由度の高い生活を送れることが特徴です。介護の必要性の低い方が入居する施設なので、買い物や外部のサークル活動など、自由に出かけられます。
ただし、付き添いが必要な場合に施設で対応することは難しいため、家族や外部のヘルパーに依頼する必要があります。
【監修者コメント】
かかりつけ医への受診や映画鑑賞、自宅の掃除などの理由で外出する入居者もいます。
制限はあるが外出可能な施設
施設の種類によっては、外出に制限(ルール)を設けている場合があります。ここでは、外出する際の基本的な制限と、その制限が設けられていることの多い施設を紹介します。
<外出にかかる制限(ルール)>
- ・事前申請が必要
- ・施設の職員の許可
- ・家族の付き添いが必要
- ・公共交通機関を利用する場合は職員の付き添いが必要
- ・夜間の外出の禁止
- ・長期間の外泊の禁止
<制限が設けられていることの多い施設>
施設の種類 | 施設の特徴 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 【特徴】
【入居対象】
|
介護老人保健施設 | 【特徴】
【入居対象】
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介護医療院 | 【特徴】
【入居対象】
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ケアハウス(軽費老人ホーム) | 【特徴】
【入居対象】
|
介護付き有料老人ホーム | 【特徴】
【入居対象】
|
住宅型有料老人ホーム | 【特徴】
【入居対象】
|
グループホーム | 【特徴】
【入居対象】
|
介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームのように、自立している方の入居が可能な施設でも、要介護や認知症の方が一緒に過ごす施設では制限が設けられます。
例えば、安全のためにドアに施錠されていたり、日勤スタッフの勤務時間外は自由に出入りができなかったりするため、外出を希望する際は、職員への許可取りが必要です。また、認知症のある方の場合は、施設と家族からの了解がなければ、安全確保の観点から単独での外出は難しいでしょう。
【監修者コメント】
外出の制限を設けている施設では、事前申請が必要な場合があります。特に新型コロナウイルスの感染が流行して以降、各施設の外出に関するルールは感染状況によって変化するため、確認が必要です。
老人ホームでは外出が禁止されるケースもある
老人ホームでは、事前に申請しても、入居者の安全のために外出が禁止されるケースもあります。以下に、外出が認められないケースをまとめています。
- ・認知症の場合
- ・要介護度が重い場合
- ・日常的な医療的ケアが必要な場合
- ・体調が悪い場合
- ・家族の付き添いがない場合
【認知症のある方や要介護度が高い方の場合、安全面の問題から一人での外出は難しいでしょう。認知症の症状によって施設の場所がわからなくなり、警察に保護されるケースは少なくありません。2022年の1年間に、認知症が原因で行方不明になった方は18,709人(※)います。
また、車椅子を自分で操作できる方でも、屋外では坂や段差があるため、バリアフリーになっている施設内のようにはいきません。交通事故のリスクも高まるため、家族や施設スタッフの付き添いがない状況では、外出は難しいでしょう。
感染症防止の観点から、外出を制限される場合もあります。ただし、法事や行政手続きなどのやむを得ない事情であれば「人混みは避ける」「飲食は可能な限り少人数の環境で食べる」といった条件で、外出の許可が降りる場合もあります。
老人ホームで外出をする際の注意点
ここでは、実際に外出する際の注意点について解説します。
- ・外出・外泊で施設を留守にしても利用料は発生する
- ・事前申請をしないと食費がかかる
- ・緊急時の対応をチェックしておく
- ・介護タクシーの利用は事前申請が必要
- ・外出時も施設と同じ生活リズムで過ごすようにする
それぞれの注意点について見ていきましょう。
外出・外泊で施設を留守しても利用料は発生する
外出や外泊で施設を留守にしても、施設の利用料は発生します。仮に長期の外泊や入院などが理由でも、居室代や介護報酬で定められている外泊時費用などは請求されてしまいます。
そのため、入院が必要になった場合は、病院の医療費と施設の費用の両方を支払うことになります。
なお、入院期間によっては退去を求められる場合もあるので注意が必要です。特別養護老人ホームは概ね3ヶ月に設定されているケースが多く、介護老人保健施設は入院とともに退所となる場合があります。入院から退去までの期間の取り扱いは施設によって異なるため、契約する際に必ず確認しましょう。
事前申請をしないと食費がかかる
施設によっては、外出や外泊で食事を止める場合は「〇日前までに申請」とルールが決められています。食事の準備や食材の発注のために設けられているルールのため、申請が間に合わなければ、実際には食べていなくても、一日分の食費がかかってしまうことが多いです。
また、食費の設定が一食分ではなく一日分として設定されている施設は、一日に一食でも施設で食事をすれば、減額されずに一日分の費用が請求されてしまいます。
緊急時の対応をチェックしておく
高齢者の場合、普段と環境の異なる外出先で体調を崩す可能性は若年者よりも高くなります。そのため、緊急時に備えて医療機関について調べておきましょう。確認しておくべき内容は以下のとおりです。
- ・近隣の病院名と対応している科
- ・病院までのアクセスと電話番号
- ・緊急時の受け入れ可否
実際に医療機関へかかる際には、本人がこれまでにかかった病気や普段服用している薬に関する情報を伝える必要があるため、メモにして持参しておくとスムーズです。また、外出先の周辺に条件の合った医療機関が見つからない場合は、外出を控えるか、外出先の変更も検討しましょう。
介護タクシーの利用は事前申請が必要
本人が車椅子を利用していて、家族での送迎が難しい場合、外出時の移動は介護タクシーを利用することになります。介護タクシーは要介護1〜5の方で、自宅や有料老人ホームに入居している方などが介助を受けながら利用できるタクシーです。利用目的によっては介護保険が適用される場合もあります。
利用する際は、介護保険を利用できるかどうか施設に確認しておくと安心です。また、事前申請が必要なため、外出先や日程が決まったら早めに予約をしておきましょう。
外出時も施設と同じ生活リズムで過ごすようにする
外出や外泊は、良い景色を見たり、美味しい食事を食べたりしてリフレッシュできますが、心身の負担にもなりえます。若年者であっても、環境や生活リズムの変化で体調を崩してしまうことがあるでしょう。高齢者であればなおさらです。
そのため、起きる時間や寝る時間、食事の時間などに配慮し、なるべく施設での生活と同じようなリズムで過ごせるように計画を立てるのが賢明です。
老人ホームに入居しても外出はできる?【まとめ】
老人ホームに入居していても基本的に外出は可能ですが、施設によって制限が設けられていたり、本人の状態や付き添いの有無によって認められなかったりする場合があります。実際に外出する際は、本記事で解説している注意点を参考に、安全に外出できるよう準備しましょう。
外出できる施設をお探しの場合は、シニアのあんしん相談室のような施設情報サイトを利用すると、条件に合う施設をスムーズに見つけられるでしょう。シニアの安心相談室では、専門の相談員が入居希望者の身体状態や希望条件をヒアリングし、適切な施設をご案内します。
「老人ホームに入居しても外出したい」と考えている方は、シニアのあんしん相談室へお気軽にご相談ください。
【監修者コメント】
外出のルールは施設によって異なります。見学や入居相談を受ける際に、外出や外泊、面会について確認する方は多いので、遠慮せずに確認しましょう。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)