老人ホームは何歳から入居できる?年齢等のルールを解説
2024.4.9

この記事の監修者:さとひろ

介護系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームに勤め介護職員やケアマネジャーを経験。資格取得のための研修講師や新規施設の開設にも携わる。現在は生活相談員として、入所調整や家族対応、行政対応や請求業務などを担っている。 2022年からライターとしての活動。複雑な介護業界の制度をわかりやすく解説します。 保有資格:社会福祉士、公認心理師、介護支援専門員、介護福祉士など
■この記事でわかること
- ・老人ホームに入居できる年齢
- ・老人ホームに入居するときの平均年齢
- ・老人ホームへの入居を検討する際の注意点
老人ホームに入居できるのは何歳から?
老人ホームに入居できる年齢条件は、公的施設か民間施設かによって異なり、公的施設の場合は原則65歳以上の方が対象です。
運営しているのは公的団体(国・地方自治体)や社会福祉法人、医療法人などで、介護保険法に沿って運営しています。
介護保険法が原則65歳以上の高齢者を対象にしていることから、公的施設の対象者も65歳以上となっています。ただし、2つの要件と16種類の特定疾病に該当している場合は、40歳以上65歳未満の方でも入居が可能です。
一方、民間企業が運営している施設の場合は、施設ごとに年齢条件を決めているため、認められれば65歳未満の方でも入居が可能です。
■公的施設・民間施設の分類と入居条件
分類 | 施設の種類 | 年齢制限・その他条件 |
---|---|---|
公的施設 |
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民間施設 |
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公的施設の入居に関わる「2つの要件と16種類の特定疾病」の詳細は以下のとおりです。
■公的施設:40歳以上65歳未満で入居が認められる2つの要件
- 1.一般的に65歳以上の者に発生する疾病だが、40歳以上65歳未満の者でも発生が認められるなど、加齢との関係が認められる疾病である。なおかつ、その医学的根拠を明確に定義できる疾病であること。
- 2.3~6ヶ月以上継続して、要支援・要介護状態になる割合が高いと考えられる疾病であること。
■公的施設:40歳以上65歳未満で入居が認められる16種類の特定疾病
- 1.がん(医師が一般的な医学的知見に基づいて、回復の見込みがないと判断した場合に限る)
- 2.関節リウマチ
- 3.筋萎縮性側索硬化症
- 4.後縦靱帯骨化症
- 5.骨折を伴う骨粗鬆症
- 6.初老期における認知症
- 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
- 8.脊髄小脳変性症
- 9.脊柱管狭窄症
- 10.早老症
- 11.多系統萎縮症
- 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 13.脳血管疾患
- 14.閉塞性動脈硬化症
- 15.慢性閉塞性肺疾患
- 16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
そのほか、老人ホームの入居条件については、以下の記事を参照してください。
老人ホーム入居者の平均年齢は80代
国土交通省の調査によると、「サービス付き高齢者向け住宅」の入居者の平均年齢は84.2歳、「有料老人ホーム」は85歳以上の割合が高い結果となりました。
いずれの施設も、85歳以上の割合が6割を占めています。74歳以下は全体の1割未満で、75歳から徐々に入居される方が増えていることがわかります。

サービス付き高齢者住宅とは・・・
- ・自立して生活できる方の移住施設
- ・集合住宅のため住宅のように暮らせる
- ・安否確認や生活支援といったサービスが提供される
有料老人ホームとは・・・
- ・「食事の提供」「介護」「家事の提供」「健康管理」のうち、いずれかのサービスを提供している施設(複数可)
- ・介護型、自立型、住宅型の3つの種類がある
老人ホームへの入居は年齢よりも身体状況によるものが大半
老人ホームに入居されている方の約8割が80歳以上ですが、必ずしも年齢を理由に入居しているわけではありません。病気や加齢によって身体状況が変化した影響が大半で、なかには自宅の介護環境によって入居せざるを得なくなるケースもあります。
入居を決めたきっかけとしては、以下のようなものが挙げられます。
- ・身体状況の変化により自宅での介護が難しい
- ・退院したあとに自宅の環境で生活するのが困難
- ・大声や徘徊、火元や水の不始末など、認知症が進行してきた
- ・介護者が急に亡くなり独居になる
- ・介護による身体的負担や不眠、うつなど家族の健康が保てない
【監修者コメント】
自宅内での移動や排泄がスムーズにできなくなったことで施設入所を考える方が多いです。また、介護によって家族が不眠状態が続くと、在宅介護の継続は難しいでしょう。
何歳になったら老人ホームへ入居を検討すべき?
上述のとおり「〇歳になったら」と年齢を境に老人ホームへ入居する方は少なく、必要に迫られてはじめて入居を検討する方が多いようです。
しかし、入居の方針については、なるべく早い段階で検討を始めるべきでしょう。
自宅での生活がいつ難しくなるかはわからず、焦って入居を決めると、希望とかけ離れた環境の施設を選んでしまうリスクがあります。また、老人ホームへの入居には審査があるため、ほかの人の審査が通ってしまえば、空きが出るまで待つか、他の施設を検討しなくてはなりません。
そのため、親御さんが元気なうちから老人ホームへの入居を視野に入れ、希望条件をまとめておくのがおすすめです。いざというときにスムーズに手続きを進められます。
老人ホーム選びの手順や、希望条件の例については以下の記事を参照してください。
元気な状態で老人ホームへの入居を検討する際の注意点
元気な状態で老人ホームへの入居を検討する際には、以下の2点に注意をはらいましょう。
- ・生活レベルや年齢が合うか
- ・介護サービスの利用が必要となったときの対応を確認しておく
それぞれ解説していきます。
生活レベルや年齢が合うか
元気なうちに老人ホームへ入居する場合には、入居を検討している施設の入居者の生活レベルや年齢、介護度などをチェックすべきです。自立している方を受け入れている施設だからといって、自分と同じような状態の方ばかりが入居しているとは限りません。
ほかの入居者と生活レベルや介護度、年齢などが合わないと、仲良くできる人を作れず、老人ホームでの暮らしを楽しめなくなる可能性があります。スタッフの説明を聞いたり、施設見学をしたりすることで、ほかの利用者の状態はある程度確認できます。「本人らしく生活できる場であるか」を第一に重視しましょう。
介護サービスの利用が必要となったときの対応を確認しておく
元気な状態で老人ホームに入居する場合でも、後に介護が必要となった際に、その施設で介護サービスを利用できるかどうかを確認しておきましょう。
自立している方が入居できる老人ホームは何種類かありますが、介護が必要となった際の対応はさまざまです。外部サービスを併用することで入居を継続できる施設もあれば、退去しなければいけない施設もあります。
別途費用がかかる場合や、別の施設を探さなければならない可能性があることも踏まえて、老人ホームを選びましょう。
■介護サービスの利用が必要となった際の対応
外部サービスの利用が必要な老人ホーム | |
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退去しなければならない老人ホーム | ・健康型有料老人ホーム ※自立して生活する方の移住施設 |
【監修者コメント】
元気なうちから老人ホームに入居すると、入居期間が長期間に及ぶことも考えられます。突発的な病気によって医療費が多くかかる場合もあるため、貯金や年金などの経済状況も考慮して施設を選ぶとよいでしょう。
老人ホームに入居できるのは何歳から?【まとめ】
老人ホームに入居できるのは、おおむね60〜65歳以上です。公的施設の場合は、条件を満たすと40歳から入居できます。
実際に入居している方の平均年齢は80歳代ですが、入居の決め手は年齢よりも何らかの理由で必要に迫られて入居する方が多いです。本人らしい生活を送るためには、入居の検討だけでも元気なうちから始めておくのがおすすめです。
シニアのあんしん相談室では、専門の相談員が相談から入居までをトータルでサポートします。対象になる施設や入居条件などの不明点がある場合は、シニアの安心相談室にお気軽にご相談ください。
【監修者コメント】
最後まで自宅で生活できるのが理想ですが、必要に迫られて理想と異なる施設に入らなければならない可能性もあります。入居の条件や大切にしたいことを早くから検討しておくことで、より理想に近い、充実した生活を送れる可能性が高まります。

記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)