住所地特例とは? 適用される施設はどれ?
2017.9.8
「近所で入居できる介護保険施設を探していて、うちの市内ではなく隣の市にちょうどいい施設を見つけたのよ。 そこに決めようと思うんだけど、隣の市は介護保険の負担額がうちの市よりも割高だから、やめようかな…」 こんな疑問を抱いたことがある人のために、ここでは住所地特例の制度について説明したいと思います。
自治体によって介護保険の負担額は違うけど…
入所する介護保険施設探しをしていて、自宅がある市区町村ではなく隣の市町村に自分の希望に沿った有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を見つけるケースも珍しくないでしょう。
その際に気になるのが、地域における介護保険の負担額の差です。公的介護保険の負担額は、たとえ同一サービスであっても地域ごとに利用料が異なるもの。この場合、隣の市区町村に合わせた負担額を改めて計算し直す必要があるのでしょうか?
実はこういった場合、住所地特例という特別な措置によって、利用者の前の住所のある市区町村が保険者となるのをご存知でしたか?
自治体が財政の圧迫を受けないために…その4つの筋道
住所地特例というのは、被保険者である利用者が介護保険施設に入所して住所が変わった後にも、保険者となる市区町村は以前のまま変わらず引き続いて、費用の負担を継続してゆく特例措置のことです。
もし仮に、被保険者が入所した施設の居住地が保険負担の対象となったとしたら、施設がたくさん設立されている市区町村には負担が集中することになってしまいます。そうなれば自治体の財政が圧迫を受ける形で影響を被ってしまいますから、そんなリスクを回避するためにこの特別な措置がとられているわけです。
具体的な例を挙げながらイメージを掴みましょう。
(2)居宅のあるA市から、施設のあるB市に入所後、退所して別のC市に居住した場合・・・保険者はC市
(3)居宅のあるA市から、B市、さらにC市と2箇所以上の施設への入所した場合・・・保険者はA市
(4)居宅のあるA市から、B市の養護老人ホームに入所措置を取られ、その後さらにC市の施設に入所した場合・・・保険者はA市
お忘れなく!住所変更後の窓口への届け出
住所地特例の対象となる施設は、介護保険施設(介護老人福祉施設/特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)、地域密着型を除いた特定施設(有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、適合高齢者専用賃貸住宅)が該当します。
サービス付き高齢者住宅でも適用に
従来は、住所地特例が適用されるのは特養や有料老人ホームなどの施設だけでしたが、2015年に介護保険法が改正され、2015年の4月以降はサービス付き高齢者向け住宅についても住所地特例の適用が可能になりました。
ただ、すべてのサービス付き高齢者向け住宅が適用対象になるわけではありません。
原則的に、特定施設入居者生活介護の指定を受けていることが適用対象になるための条件になります。
介護や食事、家事や健康管理のいずれかのサービスを提供している利用権方式の契約形態をとっている施設など、有料老人ホームに近い形態のサービス付き高齢者向け住宅も適用対象となっています。
また、2015年までは、契約形態が「利用権方式」に限定されていましたが、介護保険法の改正により、「賃貸借方式」のサ付きについても適用対象になりました。
以下に住所地特例の適用対象になるための条件をまとめておきます。
- ・契約形態が利用権方式
- ・契約形態が賃貸借方式
- ・特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設
なお、この特例措置を受けるにあたっては、施設に住所を変更した後、各自治体の担当窓口にその旨の書類を提出する必要がありますので、忘れないようにしてください。
サービス付き高齢者向け住宅が住所地特例の適用対象になったことで、受けられるサービスの幅が広がりました。
これから老人ホーム・介護施設への入居をご検討中の方は、住所地特例について調べて、より自分たちの希望に沿ったサービスを受けられる施設を選ぶようにしましょう。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)