有料老人ホームとグループホームの違い7選
2024.4.23
この記事の監修者:さとひろ
介護系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームに勤め介護職員やケアマネジャーを経験。資格取得のための研修講師や新規施設の開設にも携わる。現在は生活相談員として、入所調整や家族対応、行政対応や請求業務などを担っている。 2022年からライターとしての活動。複雑な介護業界の制度をわかりやすく解説します。 保有資格:社会福祉士、公認心理師、介護支援専門員、介護福祉士など
■この記事でわかること
- ・有料老人ホームとグループホームの規模や入退去の条件の違い
- ・それぞれのサービス、外出・看取り対応の可否、費用の違い
- ・より適した施設を選ぶためのポイント
有料老人ホームとグループホームの違い
下表は、有料老人ホームとグループホームの主な違いについてまとめたものです。
比較項目 | 有料老人ホーム | グループホーム |
---|---|---|
施設の規模・生活環境・雰囲気 |
|
|
入居条件 | 施設によって異なる |
|
退去条件 | <住宅型の場合>
<介護付きの場合>
|
|
サービスの違い |
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|
外出の可否 | 身体能力や認知症、介護度などの問題がなければ外出も可能 | 1人での外出は不可 |
看取りの可否 | 対応しているところが多い(施設によって異なる) | 対応していないところが多い(施設によって異なる) |
費用 | 初期費用:0~数千万円 月額費用:15万~40万円 |
初期費用:0~30万円 月額費用:13万~20万円 |
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
【違い①】施設の規模・生活環境・雰囲気
有料老人ホーム | グループホーム | |
---|---|---|
規模 |
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生活環境 |
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雰囲気 |
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有料老人ホームの定員に定めはなく、小規模の施設から大規模の施設までさまざまです。
居室は原則個室で、外観や設備が豪華な施設もあります。自立の方から要介護認定を受けている方まで入居しているため、その方の希望や状態に合わせた生活が提供されます。
一方、グループホームは、1ユニット5〜9人の定員で、最大3ユニットまでという定めがあり、多くても27人の小規模であることが特徴です。家庭的な雰囲気の中で、調理や洗濯、掃除などの家事をしながら共同生活を送ります。有料老人ホーム同様、居室は原則個室のためプライバシーも守られます。
【違い②】入居条件
自立 | 要支援 | 要介護 | 認知症 | ||
---|---|---|---|---|---|
有料老人ホーム | 介護付き | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
住宅型 | △ | 〇 | 〇 | △ | |
健康型 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | |
グループホーム | ✕ | △ | 〇 | 〇 |
「〇」受け入れ可/「△」要相談/「×」不可
有料老人ホームには「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類があります。施設の種類によって入居条件が異なるため、以下で確認しましょう。
有料老人ホームの入居条件
- ・介護付き
65歳以上、もしくは40歳以上で要介護認定を受けている方が対象。介護付きの中でも「介護専用型」「自立型」「混合型」の3タイプがあり、介護専用型は要介護1以上、その他は自立の方から入居可能 - ・住宅型
60歳以上の高齢者。65歳以上としている施設もある。介護が必要になると、外部のサービスを利用することになる - ・健康型
60歳以上の高齢者が対象。介護が必要になると退去する必要がある
一方、グループホームの入居条件は以下のとおりです。
グループホームの入居条件
- 1.認知症の診断を受けている
- 2.要支援2以上の認定を受けている
- 3.施設と同じ市町村に住民票がある
- 4.65歳以上(施設によっては65歳未満でも利用可)
- 5.集団生活を送ることに支障がない
【違い③】退去条件
施設の種類 | 退去条件 |
---|---|
有料老人ホーム | <住宅型の場合>
<介護付きの場合>
|
グループホーム |
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有料老人ホームもグループホームも、基本的な退去条件は共通で、以下の3点にまとめられます。
- 1.長期の入院が必要となった場合
- 2.施設の対応範囲外の認知症や介護度の重度化、医療的ケアが必要になった場合
- 3.共同生活に支障を及ぼす行為が続いた場合
ただし医療的ケアについては、看護師の配置基準によって対応可能な範囲が変わります。例えば介護付き有料老人ホームの場合は、日中の看護師が勤務している時間内で行う医療的ケアは対応が可能です。
ただし、夜間帯の医療行為や24時間管理が必要な人工呼吸器や末梢点滴などの高度な医療行為は行えないこともあります。
一方のグループホームは、看護師の勤務が週に1度だけの施設もあるため、対応できる医療的ケアは限られます。
いずれにしても、退去条件は契約書に記載されているため、入居前に確認しておきましょう。
【監修者コメント】
グループホームは、家庭と同程度の設備のため、家庭用の浴槽に介助があっても入れなくなった場合は、特別養護老人ホームへの転居を勧められる場合があります。
【違い④】サービスの違い
生活支援 | リハビリ | 介護 | レクリエーション | 医療 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
有料老人ホーム | 介護付き | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
住宅型 | 〇 | △(外部サービスを利用) | △(外部サービスを利用) | 〇 | △ | |
健康型 | 〇 | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ | |
グループホーム | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
「〇」ほとんどの施設で受けられる/「△」施設による/「×」基本的に受けられない
■有料老人ホーム
「生活支援]
-住まいや食事、掃除や洗濯などの家事、行政手続きなどの支援
「リハビリ]
-介護付きでは機能訓練指導員によるリハビリ、住宅型は外部のサービスを利用
「介護]
-入居者3人に対して介護スタッフ1人以上を配置
[レクリエーション]
-体操や麻雀、囲碁、生花など、楽しみながら身体機能の維持や脳の活性化を目指せる活動
[医療]
-介護付きは看護師を1名以上配置し、検温や服薬管理、その他の医療的ケアを受けられる。住宅型は往診や緊急時の対応にとどまる
■グループホーム
「生活支援]
-掃除や洗濯、調理など「できることは自分で行う」のが基本、スタッフはできない部分のサポート役
「リハビリ]
-買い物や調理、掃除など、共同生活の中で行う生活リハビリが中心
「介護]
-入居者3人に対して介護スタッフ1人以上を配置
[レクリエーション]
-有料老人ホームと同様、認知症の進行予防を目的とした活動が中心
[医療]
-看護師の配置義務はない。勤務が週に1度程度の施設もあり、ルーティンの処置や健康確認が中心
有料老人ホームとグループホームで、受けられる介護やレクリエーションに大きな違いはないものの、医療体制は異なります。
介護付き有料老人ホームでは、日中の看護師の配置が義務付けられているため、看護師の勤務時間内であれば一定の医療的ケアの提供が可能です。
一方グループホームの場合は看護師が勤務している時間が限られているため、手厚い対応は難しいでしょう。しかし最近では、医療的ニーズの高まりから、グループホームでも看護師を常勤で配置したり、近隣の訪問看護事業所と連携したりして、医療体制を整えている施設が増加しています。
【違い⑤】外出の可否
施設の種類 | 外出の可否 |
---|---|
有料老人ホーム | 身体能力や認知症、介護度などの問題がなければ外出も可能 |
グループホーム | 1人での外出は不可 |
料老人ホームでは、人員に余裕のあるときに、個別に外出の付き添い対応をしている場合があります。歩行状態が安定していて、転倒や事故、道に迷うなどのリスクが低い場合は、家族の同意も得たうえで、1人で外出できる施設もあります。
グループホームの場合は、有料老人ホームほど自由な外出はできないでしょう。入居者が認知症の方であり、事故や道に迷ってしまうリスクがあるためです。1人での外出は難しくても、買い物や散歩など、ほかの入居者やスタッフと一緒に出かける機会を作っている施設はあるため、入居前に確認してみましょう。
【違い⑥】看取りの可否
施設の種類 | 看取りの可否 |
---|---|
有料老人ホーム | 対応しているところが多い(施設によって異なる) |
グループホーム | 対応していないところが多い(施設によって異なる) |
有料老人ホームの看取り対応の可否は、施設の種類によってさまざまです。介護付きの場合は対応可能な施設が多く、施設のスタッフを中心に看取り介護を行います。住宅型の場合は施設によりますが、外部サービスを利用して看取るケースはあります。健康型の場合は対応はできない施設が大半です。
グループホームの場合は日常的な医療的ケアが難しいため、看取り介護を行っていない施設が多いです。しかし、看護師が常勤で配置されていて、対応可能な施設もあります。人員や看護師の配置によって異なるため、各施設に確認が必要です。
【違い⑦】費用
有料老人ホーム | グループホーム | |
---|---|---|
初期費用 | 0~数千万円 | 0~30万円 |
月額費用 | 15万~60万円 | 13万~20万円 |
有料老人ホームとグループホームの費用は、「初期費用」と「月額費用」に分けられます。
有料老人ホームの初期費用は、家賃相当分を一括もしくは分割して入居時に支払い、退去時にあらかじめ設定された償却分が差し引かれて返金される仕組みです。
グループホームの場合は、敷金や保証金を入居一時金として支払い、退去時には必要経費を差し引いた額が返金されます。
月額費用の内訳は概ね共通していて、以下のような内容です。
- ・施設利用料(介護保険負担分)
- ・食費
- ・家賃
- ・管理費
- ・光熱水費
- その他の日常生活費
細かい費用の内訳は施設ごとに異なるため、各施設へ確認しましょう。
【監修者コメント】
有料老人ホームには、入居金がない、または安く抑えられている施設があります。しかし、初期費用が抑えられている分、月額利用料に上乗せされるため、トータルで計算しましょう。
有料老人ホームとグループホームどちらが自分に適している?
ここでは、有料老人ホームとグループホームのどちらが適しているのか、あるいは入居できる施設なのかについてまとめています。自身の身体状況やその他の条件に合う施設を選べるよう、参考にしてください。
施設の種類 | 適している・入居できる入居先 | |
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有料老人ホーム | 介護付き |
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住宅型 |
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健康型 |
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グループホーム |
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有料老人ホームとグループホームは、それぞれ民間施設で運営元が異なるため、施設によって入居条件や受けられるサービスなどが変わります。入居前によく情報収集を行い、適切な施設を選びましょう。
自身に合った施設を探すのが大変だと感じている方は、専門の相談室を利用するのもひとつの方法です。シニアのあんしん相談室では、その道のプロが相談から入居までをトータルでサポートするため、入居を検討している方の身体状況や希望条件に合った施設を紹介します。
有料老人ホームとグループホームの違い【まとめ】
本記事では、有料老人ホームとグループホームの違いを7つの視点から解説しました。同じ有料老人ホームであっても、介護付きや住宅型、健康型のそれぞれに特徴があります。
また、グループホームの場合も施設の人員配置や医療体制などによってサービス内容は異なります。施設の種類によって異なる点を理解して、より状況に合った施設を選ぶようにするとよいでしょう。
施設選びに不安を感じる場合は、専門の相談室であるシニアのあんしん相談室を活用するのがおすすめです。利用は無料なので、まずはお気軽にご相談ください。
【監修者コメント】
有料老人ホームは種類によって特徴が異なり、グループホームのサービス内容も施設によってさまざまです。自分だけで考えるのではなく、専門の相談室へ相談しましょう。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)