高齢者の肥満は要注意? 高齢者が陥りやすいサルコペニア肥満とは
2017.10.31
高齢者の中には、痩せるのではなく、筋肉が弱ってくると同時に徐々に太っていってしまう方も少なくありません。この高齢者が陥りやすい肥満をサルコペニア肥満と言います。
ここでは、高齢者に注意が必要なサルコペニア肥満についてご紹介します。
サルコペニア肥満とは
サルコペニア肥満とは筋肉の減少とともに太ってしまうことです。
日常的に運動していない人の場合、加齢とともに筋肉量が落ちていきます。そして、80代になると筋肉量は20代の60%にまで減ってしまうと言われています。
具体的に以下の2つの状態が同時に当てはまるとサルコペニア肥満である可能性が高いです。
- ・筋肉の割合 男性27.3%未満 女性22.0%未満
- ・BMI(体格指数)25kg/㎡以上
筋肉が減ると、今まで消費できていたエネルギーが消費できなくなります。結果、余ったエネルギーは脂肪に変わり、溜まりやすくなるのです。 このサルコペニア肥満は、筋肉が減った分脂肪が増えているため、体型や体重では変化があらわれにくく、体重やBMIが標準であっても安心はできません。
サルコペニア肥満の危険性
サルコペニア肥満は筋肉量の低下による身体機能の低下のリスクと、脂肪の増加による心血管のリスクを生じさせます。
筋肉が減ることで、階段を上るのがつらくなったり家でつまずきやすくなったりするようになり、徐々に寝たきりへと近づいてしまうのです。
また、脂肪が増えることで高血圧になり、心疾患や脳卒中などの生活習慣病に陥りやすくなります。
サルコペニア肥満のチェック方法
体重の変化では分かりにくいサルコペニア肥満ですが、簡単な方法でチェックすることができます。
【指輪っかテスト】
両手の親指と人差し指を合わせて作った輪で、ふくらはぎのもっとも太い部分を囲みます。 輪っかで囲んだときに、隙間ができてしまう人はサルコペニア肥満である恐れがあります。簡単に囲めてしまう場合は、筋肉量が減少していると考えられます。
【片足立ち上がりテスト】
胸の前で腕を組み椅子や台に座り、反動をつけずに片足で立ち上がるというテストです。左右どちらかでもできれば問題ありませんが、できなかった場合はサルコペニア肥満の可能性が高いです。立ち上がりには、背中の脊柱起立筋、大殿筋、太ももの大腿四頭筋、ふくらはぎの下腿三頭筋という体中の筋肉を利用します。立ち上がれるかどうかで、身体全体の筋肉量が減少しているかどうか、身体機能が低下しているかどうかが判断できると言えます。
サルコペニア肥満の予防と改善
サルコペニア肥満の場合、ただ脂肪を減らすために食事を減らすなどのダイエット法は危険です。これは筋肉をつくるたんぱく質も不足して、かえって逆効果になってしまいます。
サルコペニア肥満で最も効果的な方法は筋肉を増やすことです。筋肉が増えれば基礎代謝が上がるため、肥満の解消や予防につながります。
以下の運動がおすすめです。
ふくらはぎの運動
- 1.椅子や机などに手をかけた状態で立ちます
- 2.息を吐きながらつま先立ちをします
- 3.息を吸いながらかかとをつけます
2と3を10回ほど繰り返しましょう。片足で行うとより効果が得られますよ。
ふとももの運動
- 1.椅子の前に立ち、腕組みをします
- 2.椅子には座りませんが、座るようなイメージでゆっくりとひざを曲げます
- 3.じゅうぶんにひざを曲げたら、ゆっくりと立ち上がります
2と3を10~15往復して1回となります。これを1日2回おこなってください。
ひざを曲げる際は背筋をまっすぐに伸ばすことを意識しましょう。
ひざに痛みを感じやすい方は、痛まない程度の角度に曲げるようにしてください。
サルコペニア肥満は、見た目にはあらわれにくい怖い状態です。
筋肉の維持や増強を目標に、毎日少しずつのトレーニングを行うことが健康の維持につながります。
毎日の食事でカロリーを摂りすぎないことと、たんぱく質を積極的に摂取することも大切ですよ。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)