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高齢者に多い骨折の原因と予防法|寝たきりになり介護が必要になることもある

2021.8.18

高齢者は、どうしても骨折をしやすい傾向にあり、骨折が原因で寝たきりになってしまうこともあります。若者では気にならない段差でも、加齢によって身体の機能が低下した高齢者にとっては、骨折のリスクを引き起こすことがあります。そこで、高齢者の骨折の特徴や骨折しやすい原因について解説した上で、骨折を予防する方法、治療法、退院後の生活について触れていきます。

高齢者の骨折の特徴


高齢者の骨折は、若者が骨折した場合と事情が異なります。高齢者の骨折には、次のような特徴が挙げられます。

  • ・ちょっとした転倒が骨折になる
  • ・高齢者の骨折は治りにくい
  • ・骨折が原因で寝たきりになることも

高齢者は、わずかな段差でもつまずいて転倒し、骨折してしまうことがあるなど、若者では問題がないようなケースで骨折が引き起こされることもあります。
また、高齢者は骨折をしてしまうと、骨を修復する力が弱く、体力や筋力の問題からリハビリテーションに時間がかかり、治りにくいのも特徴です。
骨折による運動量の低下によって、ますます筋力が低下し、寝たきりの原因になることさえあります。

■ちょっとした転倒が骨折になる

高齢者の骨折の多くは、転倒によるものです。若者は、ちょっとした転倒で大事に至るようなことが少ないですが、高齢者は転倒によってわずかな力がかかるだけで、骨折を起こすことがあります。例えば、わずかな段差につまずいて転んだだけでも、骨折を招くケースがあります。また、治ったと思ったら、今度は別の部位を骨折するなど、繰り返してしまう高齢者もいます。骨折すると、部位や状態によって、入院による手術が行われます。

■お年寄りの骨折は治りにくい

高齢者が一度骨折してしまうと治りにくいのは、骨を修復する力が弱くなっていること、体力や筋力が低下しているためリハビリテーションに時間がかかることが要因です。加齢によって手足の関節が硬く、動きにくい状態となるため、足腰が弱くなっていると、リハビリテーションがスムーズに進みません。

骨折の治療に手術が必要なケースでも、体調が悪化している場合は手術するのが難しく、適切な治療が行えないケースもあります。

また、骨折によって運動量が低下する状態が続くと、身体が弱くなって思うように身体が動かせなくなり、なかなか骨折する前の生活に戻しにくくなります。骨折は、持病の悪化や新たな病気を引き起こす要因となることもあるなど、身体の状態の悪化を招くこともあるのです。

■骨折が原因で寝たきりになることも

高齢者は、骨折が原因で寝たきりになり、介護が必要となってしまうケースも少なくありません。

引用元:内閣府 令和2年版高齢社会白書(全体版)「2 健康・福祉」

内閣府の「令和2年版高齢社会白書」によると、65歳以上の要介護者に介護が必要となった主な原因は、「転倒・骨折」が12.5%と、1割以上を占めています。骨折は、介護が必要となる要因の一つとなっています。

高齢者が骨折によって寝たきりになり、介護が必要となるケースが多いのは、太ももの付け根の大腿骨頸部骨折です。
大腿骨頸部骨折を起こすと、寝返りも打てないほどの強い痛みを伴い、立つこと、歩くこともできなくなってしまいます。そのため、手術をして早期にリハビリテーションを行わなければ、筋力が低下し、再び歩けるようになるのが難しくなり、寝たきりの状態になってしまうのです。

高齢者が骨折してしまう原因

高齢者がちょっとしたことで骨折をしてしまうのは、なぜでしょうか。
高齢者の骨折を招く主な原因として、次のような点が挙げられます。

高齢者の骨折を招く主な原因
  • ・骨粗鬆症による骨の強度の低下
  • ・筋力の低下
  • ・バランス感覚の低下
  • ・皮下脂肪の菲薄化(ひはくか)
  • ・認知症

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2015年版」によると、大腿骨頚部の骨粗鬆症の有病率は、加齢とともに上昇し、70代の女性では4割以上、80歳以上の女性では6割以上となっています。
加齢によって骨粗鬆症になってしまうのは、身近な問題でもあるといえます。

骨粗鬆症は、骨量が減って骨がもろくなる病気のことで、特に、閉経後の女性に多いとされています。
女性ホルモンの減少、腸管からのカルシウムの吸収の低下、カルシウムの吸収をサポートするビタミンDの生成が弱まることなどが原因です。骨が非常に弱い場合は、転倒をしなくても背骨がつぶれていくことがあります。

加齢による筋力の低下で、特に転倒による骨折の原因となるのは、腸腰筋(ちょうようきん)です。
腸腰筋は、太ももを持ち上げる筋肉のことで、筋力の低下によって、段差につまずきやすい、歩行の際の足の動きが鈍いといったことが起こります。

加齢による皮下脂肪の菲薄化は、食事量の減少による栄養不足によって起こります。 皮下脂肪が薄くなると、転倒したときに骨をクッションのように守る機能が低下するため、骨折を起こしやすくなります。

また、認知症になると、転倒しやすくなるとともに、手をうまくつけないことが骨折しやすい原因となります。

高齢者の骨折を予防する方法


高齢者の骨折を防ぐためには、転倒しにくい環境を整えることと、健康面から予防する方法があります。

まず、環境面から見ていくと、高齢者が転倒しやすい場所は、段差のあるところや、濡れているところです。
特に2㎝ほどのわずかな段差などは気付きにくいことから、つまずきやすい場所となります。 自宅での転倒のリスクを軽減するには、バリアフリー化を図ることが重要です。リフォームで床の段差を解消したり、玄関、廊下、トイレ、浴室などに手すりを付けて姿勢を安定しやすくしたりします。置き敷きタイプのラグは、足を滑らせて転倒する恐れがあるため、テープで留めるなどの対策が必要です。

また、家の中が散らかっていると、コードに足を引っ掛けてしまうといった危険性があるため、片付けをしておくことも大切です。

高齢者自身に関しては、靴のかかとを踏んでいると転倒の原因になりやすいため、面ファスナーの付いた靴など、脱ぎ履きしやすい靴を選ぶこともポイントです。

健康面の予防では、筋力を維持するためにウォーキングをすることや、ストレッチを行って柔軟性を高めることが有効です。厚生労働省では、「健康日本21」で、高齢者の1日の歩数の目標を「男性6,700歩、女性5,900歩」としています。

骨密度の低下を予防するためには、カルシウムやタンパク質の摂取を意識し、栄養バランスの良い食事を取ります。また、日光に当たるようにすると、ビタミンDの生成が促されます。

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高齢者の骨折の治療・入院

高齢者の骨折が目立つのは、次の4つの部位が挙げられます。

  • ・大腿骨
  • ・背骨
  • ・肩
  • ・手首

骨折した部位や状態によっては、手術、入院、リハビリテーションが必要です。 大腿骨頸部骨折では、長期間ベッドの上で安静に過ごすことで筋力が低下し、寝たきりになるのを防ぐため、手術を選択されることが多いです。また、手術後は、早期にリハビリテーションを開始することが大切です。

■手術が必要になる可能性

骨折すると、部位や状態によって、ギブスによる保存療法と手術のいずれかの治療方法が取られます。保存療法の場合は、数週間から数カ月にわたって、骨折した箇所を安定した状態で保ちます。

背骨、肩、手首を骨折した際に、骨折箇所が安定している場合は、保存療法を行うのが一般的です。
一方、大腿骨頸部骨折では、保存療法による治療だと長期間の安静によって、筋力の低下、床ずれ、認知症の進行により、寝たきりになるリスクがあります。
そのため、麻酔の使用や手術にリスクがある場合を除き、入院による手術を選択されることが多いです。

大腿骨の手術には、「骨接合術」「人工骨頭置換術」という方法があります。
骨接合術は、骨折した箇所を金属のプレートなどで固定する方法です。人工骨頭置換術よりも手術の負担が軽いものの、骨がくっつかないケースや大腿骨頭壊死などの合併症の起こるリスクがあります。
人工骨頭置換術は、主に骨折による骨のズレが大きいときに用いられ、関節部分を金属やセラミックの人工骨頭に交換する方法です。人工骨頭置換術は、深くしゃがんだときなどに脱臼することがあります。

■治療にはリハビリテーションが重要

大腿骨頸部骨折で手術を行った場合には、早期にリハビリテーションを開始することが、筋力の低下によって寝たきりにならないための重要なポイントです。

痛みを我慢できる場合などは、手術前から腕や骨折していない側の足の運動を行います。手術後は、座ることからスタートし、立つ訓練、車椅子に乗る訓練をします。スムーズ立てるようになったら、平行棒内歩行訓練を始め、歩行器、松葉杖、T字杖を使った訓練に移行していきます。

退院後の生活


骨折による入院から退院した後は、リハビリテーションが必要なケース、介護が必要な状態になるケースがあります。

大腿骨頸部骨折の場合には、病院でリハビリテーションを行っていた期間を含め、最低でも6カ月間のリハビリテーションが必要です。ただし、リハビリテーションを行っても、骨折前の状態に戻れるとは限らず、歩行に杖を使うなどのサポートが必要となるケースもあります。

また、大腿骨頸部骨折で、身体の状態から麻酔や手術のリスクが高く、保存療法による治療を行った場合には、1カ月以上病院のベッドで過ごすため、筋力の低下から寝たきりになり、介護が必要となることが考えられます。
骨折によって介護が必要となった場合や、介護の必要性の度合いが高まった場合には、今後の介護の体制を考えていく必要があります。

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■要介護認定を受ける・見直す

退院後に症状が安定した段階で介護が必要となったケースや、要介護度の区分が今よりも重い状態に該当すると考えられるケースでは、要介護認定に関する手続きを行うと良いでしょう。

介護保険による介護サービスを利用するには、要支援・要介護認定を受ける必要があります。
要支援1・2、要介護1~5までの認定に応じて、介護保険で利用できる介護サービスの上限額が異なります。市区町村の役所の窓口で要介護認定の申請を行うと、訪問調査が行われた後、判定結果が通知されます。

既に要介護認定を受けていて、骨折による介護の必要性の度合いが高まった場合には、市区町村の役所の窓口で区分変更申請を行うと、要介護度の見直しが行われます。

要介護認定の申請も、区分変更申請も、いつでも行うことが可能です。いずれも原則として、申請から30日以内に結果が通知されます。

要介護認定の申請や区分変更申請を行うことで、心身の状態に応じた介護サービスを利用できるようになります。

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■在宅での介護

在宅介護を行う場合には、介護サービスの申し込みと、介護に必要な設備の準備をします。

介護保険による介護サービスを利用するには、通常、要介護1~5の場合、居宅介護支援事業所のケアマネージャーに「ケアプラン」の作成を依頼します。
ケアプランは、要介護者本人や家族の希望、心身の状態を踏まえた上で、どのように訪問介護サービス、デイサービス、デイケア(通所リハビリテーション)といった介護サービスを利用するのか、計画を立てるものです。
ケアプランに基づいて、介護サービスが提供されます。

介護に必要な設備の中には、介護保険を利用したレンタルや、購入できる福祉用具があります。
介護保険でレンタルできる福祉用具は、車椅子、介護ベッド、スロープ、歩行器、歩行補助杖、移動用リフトといった繰り返し使用できるものです。要介護度によって利用できるものに違いがあり、所得に応じて費用の1~3割が自己負担となります。

介護保険で購入できる福祉用具は、腰掛け便座、入浴補助用具、簡易用浴槽、移動用リフトのつり具部分など、直接肌に触れるものとなります。
要介護度の区分に関わらず、年間10万円までが介護保険の対象となり、所得に応じて1~3割を自己負担します。
介護保険を利用した福祉用具のレンタルや購入は、都道府県または市区町村の指定を受けた福祉用具貸与事業者が取り扱っています。利用に当たっては、ケアマネージャーに相談しましょう。

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■老人ホームへの入居

自宅での介護が難しい場合は、老人ホームへの入居も選択肢となります。
老人ホームへの入居は、家族の介護の負担を軽減できることや、介護の専門家による介護を受けられることがメリットです。

骨折してしまうと、これまで自立して歩けていた人に杖が必要となるなど、身体の機能が戻らないといったケースがあります。家族よりも、老人ホームでプロのスタッフに介助を行ってもらった方が、適切なケアが受けられます。また、理学療法士・作業療法士が常駐するなど、リハビリテーション環境が充実している施設、看護師・機能訓練指導員が日常生活の動作における生活リハビリテーションに力を入れている施設であれば、機能の回復や残された機能の維持を図れることが期待できます

シニアのあんしん相談室での実際の骨折がきっかけの入居事例

シニアのあんしん相談室に実際にお問い合わせのあった事例を紹介します。

■骨折をきっかけとした老人ホームへの入居事例1

【入居検討者様の状態・状況】

性別 男性 相談者
年齢 95歳 ご予算 特になし・月払い希望
介護度 要介護2 資料送付施設数 5施設
お身体の状態 認知症中度・歩行難 見学施設数 2施設

【相談内容】

足首を骨折して、今入院中です。
入院前はデイサービスに週2回通っていたんですが、退院後、妹(娘様)と二人暮らしで、これまでよりもさらに介護が必要になると思うと心配です。
どういう施設があるかを探しています。

【ご提案から入居まで】

エリアや予算を伺ったうえで、リハビリがきちんとできる施設を複数ご案内し、相談者様と相談者様の妹様で見学に行かれました。見学した老人ホームから一つに絞り込み、退院に合わせて、体験入居から入り、お問い合わせから約1か月で入居無事入居されました。
ご入居された老人ホームは、介護付き有料老人ホームで、お一人おひとりのニーズに合わせて音楽や道具、マシンを使いながら小集団や個別のリハビリができる老人ホームです。ご希望通りの月額払い対応です。
「病院の時には気分が落ちていたものの、入居してからは活気がでてきている」というご様子を後日伺い、あんしん相談室一同、安堵の気持ちでいっぱいです。

■骨折をきっかけとした老人ホームへの入居事例2

【入居検討者様の状態・状況】

性別 女性 相談者 義理の娘
年齢 89歳 ご予算 月額20万程度
介護度 要介護2 資料送付施設数 7施設
お身体の状態 骨折で入院中 見学施設数 3施設

【相談内容】

骨折して入院中で、左腕に神経麻痺が出ています。
退院に合わせて施設への入居を考えています。
病院の方に相談したら、まずはリハビリ病院でリハビリをしたほうが良いといわれ、そこにしようか考えています。

【ご提案から入居まで】

リハビリ病院にまずは入られた場合でも、半年先か一年先かいずれか施設への入居を視野に入れている場合、いざというときに慌てずに検討するために、早めに情報収集・見学をおすすめしました。
複数の老人ホームへの見学もご案内し、最終的には病院退院後は老人ホームへのご入居を決められ、お問い合わせから約3か月後に無事ご入居されました。
ご入居された老人ホームは、住宅型有料老人ホームです。訪問介護事業所・居宅介護支援事業所を併設している老人ホームなので、リハビリも必要に応じて受けられるような体制です。月額も20万以内とご予算におさまる形になりました。


シニアのあんしん相談室では、お客様のご状況に合わせて施設探しのサポートをいたします。 施設に入居するべきか迷っている方も、すぐに入居をしたい方も、お気軽にご相談くださいませ。

まとめ

高齢者は、転倒などによって骨折しやすく、筋力の低下といった要因から寝たきりになるといったリスクもあります。そのため、環境面や身体面から、転倒などによる骨折を引き起こさない環境を作ることが大切です。骨折によって介護が必要となった場合は、在宅介護の他に老人ホームへの入居という選択肢もあります。

■記事作成・監修 シニアのあんしん相談室
シニアのあんしん相談室 「シニアのあんしん相談室」は高齢者住宅の相談窓口。介護の知識に長けた専門の相談員が、納得できる施設選びをサポートします。介護ニュースでは、介護に関する最新情報をはじめ、医療や健康に関連するニュースを定期的に発信しています。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)
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