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老人ホームの費用が払えない時の対処法|払えなくなったらどうなる?

2024.4.9

老人ホームの費用が払えない時の対処法|払えなくなったらどうなる? 老人ホームに払うお金がない」、「老人ホームの費用が払えなくなったらどうなるの?」 老人ホームへの入居期間が長くなると、このように不安を感じることもあるでしょう。 利用料金が払えなくなっても、すぐに退去させられるわけではありません。しかし、滞納が続けば退去しなければならないため、何らかの対策を行い費用を支払う必要があります。 本記事では、老人ホーム代が払えないときの対処法や、必要な資金の調達方法について解説します。

この記事の監修者:さとひろ

さとひろ

介護系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームに勤め介護職員やケアマネジャーを経験。資格取得のための研修講師や新規施設の開設にも携わる。現在は生活相談員として、入所調整や家族対応、行政対応や請求業務などを担っている。 2022年からライターとしての活動。複雑な介護業界の制度をわかりやすく解説します。 保有資格:社会福祉士、公認心理師、介護支援専門員、介護福祉士など

HP:https://www.satohiro-2.com/portfolio/

■この記事でわかること

  • ・費用が払えない場合にどうなるのか
  • ・費用が払えなくなるときの対処法
  • ・当面の資金の調達方法

老人ホームの費用が払えない場合は即日退去?

老人ホームの費用が払えない場合でも、その日のうちに退去させられるわけではありません。 滞納が生じた時点で、保証人(連帯保証人)や身元引受人に対して、費用の請求が行われます。それでも滞納が続いた場合は退去勧告に至ります。

退去勧告までの期間は施設によって異なりますが、3ヶ月程度に設定している施設が多いです。滞納が発生したときの対応については、契約書や重要事項説明書に必ず記載されているので、入居時には確認するようにしましょう。

なお、保証人(連帯保証人)や身元引受人は家族がなることが一般的です。

滞納が続くと3ヶ月で退去勧告を受ける

老人ホームの費用が払えなくなったときの対処法

老人ホームの費用が払えなくなったときの対処法として、以下の5つを紹介します。

  • ・施設の生活相談員・ケアマネジャー・施設長などに相談する
  • ・支払いが可能な施設へ転居する
  • ・在宅介護やデイサービスに切り替える
  • ・軽減・助成制度を活用する
  • ・住宅の担保による融資・売却を行う

それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。

【1】施設の生活相談員・ケアマネジャー・施設長などに相談する

費用を払えなくなってしまったら、まずは生活相談員やケアマネジャー、施設長などに相談してみましょう。相談することで解決策が見つかることがあるかもしれません。

例えば、支払日の延長や分割払いなど、支払い方法の調整をすれば支払える場合は、それが可能かどうかを話し合います。また、ほかに利用できる制度があれば、説明やサポートをしてくれるかもしれません。

安定した支払いの継続が難しい場合は、他施設の紹介センターやより低額な施設を紹介してもらったほうがよいケースもあります。放置するのが一番よくないので、費用の支払いが心配な場合は早めに相談することが大切です。

【監修者コメント】

利用料金の滞納は、最終的に退去につながります。費用が払えないと気づいたときは、たとえ一時的であってもすぐに施設へ相談しましょう。


【2】支払いが可能な施設へ転居する

支払いが難しくなってきたら、支払いが可能な施設への転居を早めに検討しましょう。支払い方法を工夫して乗り切っても、いずれは行き詰まってしまう可能性があります。

また、希望の施設に転居したくても、人気のある施設は空きが出るまで待つことも多いです。転居先の費用を考える際は、民間施設よりも、特別養護老人ホームのような公的施設のほうが安い傾向があります。

施設区分 費用相場(月額)
民間施設 5万円※~35万円

※シニア向け分譲マンションのため初期費用は高い
公的施設 6万円~20万円

施設の転居を検討する際は、プロに相談するのがおすすめです。シニアのあんしん相談室では、費用やその他の条件を考慮し、ご希望に合わせた老人ホーム探しをお手伝いします。相談から紹介まで費用は一切かかりませんので、お気軽にご相談ください。

【監修者コメント】

特別養護老人ホームの待機者には、有料老人ホームの入居者が多く含まれています。入院や急な状態の変化で取り急ぎ入居した方の中には、経済的に入居の継続が難しく、特別養護老人ホームへの転居を希望する方もいます。


【3】在宅介護やデイサービスに切り替える

老人ホームの費用が払えなくなったら、食事・入浴などのサービスを日帰りで受けられるデイサービスや在宅介護に切り替えることも選択肢のひとつです。

ここでは、老人ホームと在宅介護、デイサービスの費用相場を比べてみましょう。

介護の方法 費用相場
老人ホーム 6万円~60万円
在宅介護 ベッドなどの一時的費用が74万円、月額費用が4.8万円
デイサービス 介護保険適応で1回あたり1,000~2,000円

参考:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|リスクに備えるための生活設計|公益財団法人生命保険文化センター

老人ホームでの生活を続けるよりも、在宅介護のほうが費用を抑えられる可能性が高いです。とはいえ、在宅介護ならではの負担もあるため、本人と家族の双方にベストな選択肢であるかどうかを考える必要があります。

家族にかかる肉体的・精神的な負担は、訪問看護や訪問入浴などの外部サービスと併用をすることで、ある程度抑えられる可能性があります。また、入居者本人にとっても「家族に負担をかけてしまっている」といった心配をさせずに済むほか、プロが介助する方が体への負担も少ないでしょう。

老人ホームにかかる費用についての詳しい説明は、以下の記事を参照してください。

老人ホームにかかる費用とは|年金で賄えるのかを知って備えることが大切

【4】軽減・助成制度を活用する

老人ホームの費用が支払えなくなった場合、利用できる軽減・助成制度を活用できないか確認しましょう。利用者の負担軽減のために、国や自治体ではさまざまな補助制度を設けています。

うまく活用できれば、毎月の費用負担を抑えられ、入居を継続できる可能性もあります。下表は、主な軽減・助成制度についてまとめたものです。

軽減・助成制度 詳細
生活保護
  • ・老人ホームの費用の大半が賄われる
  • ・4人部屋への移動や、生活保護受給者を受け入れている施設へ転居しなければならないこともある
特定入所者介護サービス費
  • ・介護保険施設の食費や居住費を軽減できる制度
  • ・住民税が非課税であることのほか、預貯金や年金などの要件がある
介護保険料の減免制度
  • ・市区町村によって定められた条件を満たすと、介護保険料の減免が受けられる
  • ・免除ではなく減免であることに注意が必要
高額介護サービス費
  • ・介護保険サービスの利用料金が、負担上限額を超えたときに、超えた分が払い戻される
  • ・施設の食費や居住費など対象外のものもある
自治体独自の助成制度
  • ・自治体ごとに条件を定め、助成制度を設けている
  • ・新宿区の場合、要件を満たすと、介護者に年間10万円が支払われる

4-1:生活保護

年金だけでの生活が厳しく、ほかに頼れる親族がいない場合は生活保護の申請を検討しましょう。年金受給者でも生活が苦しいと認められれば受給できる場合があります。

生活保護を受給すると、老人ホームの費用の大半は保護費で賄われます。ただし、生活保護受給者の入居を受け入れていない施設もあるため、他施設への転居や4人部屋への移動が必要になる可能性もあるのがデメリットです。

生活保護の申請については、市町村役場の窓口や、施設のスタッフ、ケアマネジャー、ケースワーカーに相談しましょう。

4-2:特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費は、介護保険施設に入居している方や、ショートステイを利用している方の居住費や食費を軽減できる制度です。

居住費や食費は、介護保険の適用外のため全額自己負担になります。この制度を利用すると、段階によっては費用が半額程度になる場合もあり、大きな負担軽減になるでしょう。

利用するには市区町村へ申請する必要があります。対象になるのは世帯全員が非課税で、預貯金や年金額などの要件を満たした方です。

認定を受けると発行される「介護保険負担限度額認定証」を利用する施設へ提出すると、認定の段階に応じた減免を受けられます。

4-3:介護保険料の減免制度

40歳になった月から支払い義務が生じる介護保険料には、減免制度があります。年金と違い免除ではなく減免の制度ですが、認められれば月々の出費を減らせるでしょう。

減免を受けるための条件は自治体によって異なりますが、収入や貯蓄、資産などの基準を満たしているほか、負担能力のある親族に扶養されていない、介護保険料を滞納していないなどの条件があります。

具体的な条件や申請方法は、お住まいの市区町村や健康保険組合などに確認してみるのがよいでしょう。

4-4:高額介護サービス費

高額介護サービス費は、1ヶ月に支払った利用者負担額の合計が、所得によって設定されている負担上限額を超えたときに、超えた分の金額が後から払い戻されます。

負担上限額は所得によって6つの区分があり、15,000円から140,100円に分類されます。

対象になるのは介護保険の適用分に限られ、食費や居住費、その他の実費分などは対象外になるので注意が必要です。

制度を利用するには申請が必要です。初めて該当した際に市区町村から申請書が送られてくるため、必要事項を記載して返送すると、後日指定の口座に振り込まれます。

2回目以降は対象になったときに自動的に払い戻されるため、手続きの負担はかかりません。

4-5:自治体独自の助成制度

自治体によっては、独自の助成制度を設けていることもあります。新宿区の場合、以下の要件を満たすと、1年間で10万円の慰労金が支給されます。

  1. 1.1年間を通じて要介護4以上
  2. 2.1年間介護保険のサービスを利用していない(年間1週間程度のショートステイ利用は可)
  3. 3.高齢者、介護者とも住民税非課税世帯である
  4. 4.要介護者と同居もしくは隣地に居住する

条件は自治体ごとに異なり、年間の医療機関への入院日数の要件が設けられている自治体もあります。自治体ごとに条件や手続き方法が異なるため、お住まいの市区町村の窓口で相談してみましょう。

【監修者コメント】

軽減・助成制度は、原則申請しなければ受けられません。どのような制度があるかわからなくても市役所へ行き、困っているということを相談しに行くとよいでしょう。何かよい選択肢を提示してくれる可能性があります。


【5】融資等でお金を工面する

老人ホームの費用が払えなくなったときの対処法として、融資でお金を工面する方法もあります。

例えば、不動産を所有していれば、不動産を担保にした借り入れや、賃料収入を得ることが可能です。自宅を手放さずにお金を工面するための制度なので、売却するわけではありません。

制度の概要を以下にまとめていますので、確認してみてください。

軽減・助成制度 詳細
リバースモーゲージ
  • ・自宅を担保にして金融機関から融資を受けられる制度
  • ・契約者が存命中は利息の支払いのみ
  • ・金融機関が取り扱っている
不動産担保型生活資金
  • ・低所得の高齢者が、自宅を担保に生活資金を借りられる
  • ・公的なリバースモーゲージと言える
  • ・窓口は市区町村の社会福祉協議会
マイホーム借り上げ制度
  • ・空き家を活用し、安定した賃料収入が得られる
  • ・国の基金によるサポートがあり、空室でも保証賃料を得られる
  • ・窓口は「移住・住みかえ支援機構」

5-1:リバースモーゲージ

リバースモーゲージを利用すると、自宅を担保にして融資を受けられます。融資を受けられる金額は自宅の資産価値に応じて決まります。契約者が存命中は、利息のみの支払いのため、返済額は少額です。

元金の返済は契約者が亡くなった後に行い、自宅を売却するか、相続人が一括返済する方法が一般的です。まとまった金額の融資を受けられるので、有料老人ホームの一時金や、月々の支払いに充てられます。

リバースモーゲージは金融機関で取り扱っている金融商品なので、申請は金融機関の窓口で相談します。まとまったお金が必要な方は、事前に調べておくとよいでしょう。

5-2:不動産担保型生活資金

動産担保型生活資金は、低所得の高齢者を対象に、保有している不動産を担保にして生活資金や医療費などを借りられる制度です。

国が行う生活福祉資金貸付制度のひとつで、公的なリバースモーゲージと言われています。

原則65歳以上、住民税非課税世帯程度の収入、融資額は不動産の評価額の70%以内で月30万円以内など条件は複雑です。また、連帯保証人が必要なケースもあります。

民間の金融機関の関与はなく、社会福祉協議会が実施主体となっています。制度の適用になる条件は自治体によって異なるため、詳しくは社会福祉協議会の窓口へ相談しましょう。

5-3:マイホーム借り上げ制度

マイホーム借り上げ制度は、空き家になっているマイホームを「一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)」が借り上げ、賃貸住宅として活用し、その賃料収入を得られる制度です。

対象になるのは、空き家になっている居住用の住宅を保有している50歳以上の方です。

国の基金によるサポートがあるため、空室でも一定の保証賃料を受け取れ、空き家を売却せずに安定した賃料収入を得られるメリットがあります。

一方、賃料が相場より低くなるケースや、耐震工事やリフォームを認めなければならないケースもあるので、詳しい内容はJTIへお問い合わせください。

老人ホームの費用が払えない事態を防ぐために

老人ホームの費用が払えない事態を防ぐために

老人ホームの費用が払えない事態を防ぐためには、長期的な目線で費用計画を立てることが大切です。自身の貯金や年金収入、家族が支援できる金額などの予算を把握し、無理のない計画を立てていきましょう。

入居した後でも、本人の状態が変化したり、家族が援助できる金額が変わったりするなど、状況が変化することもあります。場合によっては施設の転居が必要になる可能性も考えておきましょう。

施設で実際にいくらかかるかのシミュレーションも必要です。老人ホームへの入居には以下のような費用がかかります。

お金がかかるタイミング 費用項目 費用相場
入居時 入居一時金 0~数千万円
引っ越し費用 5万~10万円程度
生活用品(家電など) 100万円程度
※新品の場合
入居してから継続的 月額利用料 6万円~35万円
介護サービスの自己負担額 介護度によって異なる
その他
  • ・医療費
  • ・通院の付き添い
  • ・日用品などの生活用品
  • ・レクリエーション参加費
    • など

入居する本人や保証人になる家族の預金・資金で問題ないか、余裕を持って計画を練りましょう。

老人ホームの費用が払えないとき【まとめ】

老人ホームの費用が払えなくなっても、即日退去させられるわけではありません。しかし、滞納が続くと強制退去に至るため、早めの対策が必要です。

ほかの施設への転居や在宅復帰も選択肢のひとつですが、公的な減免制度や助成制度をうまく活用すれば、老人ホームへの入居を続けられる可能性もあります。

また、リバースモーゲージや不動産担保型生活資金などの融資制度や、マイホーム借り上げ制度を活用するのも有効です。

予算に合わせた施設探しはプロに任せるのが安心です。シニアのあんしん相談室では、専門の相談員が予算に合わせた施設選びをサポートします。無料で利用できるので、費用面に不安のある方は一度ご相談ください。

【監修者コメント】

老人ホームの費用を考える際は、本人の生活だけでなく、家族の生活も守れる範囲で検討しましょう。本人の支援のために、家族の生活が苦しくなってしまっては元も子もありません。使える制度をうまく活用し、無理のない費用計画を立てましょう。


■記事作成・監修 シニアのあんしん相談室
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)
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