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高額介護サービス費とは|手続き方法や負担限度額についてわかりやすく解説!

2021.12.17

高額介護サービス費とは|手続き方法や負担限度額についてわかりやすく解説!

介護保険による介護サービスは、要介護度が高くなるにつれて、費用負担が大きくなります。特に、自己負担割合が2割・3割の場合や、一世帯で複数人が介護サービスを利用している場合は、費用負担が大きくなりやすいです。介護保険制度は、所得区分ごとに上限額を設けて高額介護サービス費を支給する制度があります。ここでは、高額介護サービス費の対象となる費用や計算方法、いつ払い戻しされるのかなどについて、分かりやすく解説します。

高額介護サービス費とは

介護保険による介護サービスを利用する際には、所得に応じて1~3割の自己負担額が発生します。高額介護サービス費とは、1カ月の自己負担額が所得区分ごとに決められた負担限度額を超えた場合、申請によって超過分を払い戻すという制度です。要介護度が上がると、介護サービスの利用が増えますが、特に自己負担割合が2割・3割の場合は、大きな負担となります。そこで、介護保険による介護サービス利用時の経済的な負担を軽減するために、高額介護サービス費の制度が設けられているのです。

令和3年8月利用分から負担限度額が見直しされた

高額介護サービス費は、令和3年(2021年)8月の利用分から負担限度額の見直しが行われました。高額介護サービス費制度では、所得による区分ごとに自己負担上限額が決められていますが、高所得者世帯に向けた新たな所得区分が設けられました。これは、負担能力に応じた介護費用の負担を求めるための措置で、高所得者世帯では、介護費用の負担がアップしています。

<自己負担上限額>
区分 負担の上限額(月額)
課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上)14万100円(世帯)
課税所得380万~690万円未満
(年収約770万~1,160万円未満)
9万3,000円(世帯)
住民税課税~課税所得380万円未満(年収約770万円未満)4万4,400円(世帯)
世帯全員の住民税が非課税2万4,600円(世帯)
上記のうち、前年の課税年収額+その他の合計所得金額の合計80万円以下1万5,000円(個人)
生活保護の受給者など1万5,000円(世帯)
参照:厚生労働省 高額介護サービス費の負担限度額

高額介護サービス費の見直しの対象となったのは、課税所得380万円以上の世帯です。新たに「課税所得380万~690万円未満」と「課税所得690万円以上」の2つの所得区分が設けられました。

この見直しに先立って、平成29年(2017年)8月からは、住民税を課税されている人のいる世帯の負担上限額が、3万7,200円から4万4,400円に引き上げられました。急激な介護費用の負担の増加を避けるため、介護サービスの自己負担割合が1割の世帯を対象に、負担上限額を据え置く激変緩和措置が設けられていましたが、3年間の実施だったことから令和2年(2020年)7月で廃止されています。

高額介護サービス費の対象

高額介護サービス費は、介護費用の全てが対象になるというわけではなく、公的な介護保険の適用による介護サービスの利用に関わる1~3割の自己負担分のみです。以下、高額介護サービスの対象となる3つの基本サービスに加え、対象にならないものについて紹介します。

  • ・居宅サービス(在宅介護)
  • ・通所サービス(施設通所)
  • ・入所サービス(施設介護)
  • ・高額介護サービス費の対象にならないもの

■ 居宅サービス(在宅介護)

介護保険による居宅サービス(在宅介護)の1~3割の自己負担額は、高額介護サービス費の対象です。対象となる居宅サービスとしては、以下のものが挙げられます。

  • ・訪問介護(ホームヘルプ)
  • ・訪問入浴
  • ・訪問看護
  • ・訪問リハビリテーション
  • ・夜間対応型訪問介護
  • ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

■ 通所サービス(施設通所)

介護保険による通所サービス(施設通所)の1~3割の自己負担額は、高額介護サービス費の対象です。ただし、レクリエーションの材料費、食費、居住費といった費用は、高額介護サービス費の対象外となります。

高額介護サービス費の対象となる通所サービスとしては、以下のものが挙げられます。

  • ・通所介護(デイサービス)
  • ・通所リハビリテーション
  • ・地域密着型通所介護
  • ・療養通所介護
  • ・認知症対応型通所介護
  • ・短期入所生活介護(ショートステイ)
  • ・短期入所療養介護
  • ・小規模多機能型居宅介護
  • ・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

■ 入所サービス(施設介護)

介護保険による入所サービス(施設介護)においても、1~3割の介護サービス費の自己負担額は、高額介護サービス費の対象となります。ただし、施設入所した場合のレクリエーションの材料費、居住費、食費、歯ブラシやタオルといった日常生活費などについては、対象となりません。

高額介護サービス費の対象となる入所サービスとしては、以下のものが挙げられ、施設スタッフによる介護サービスが提供されています。

  • ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • ・介護老人保健施設
  • ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • ・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • ・介護療養型医療施設
  • ・介護医療院
  • ・特定施設入居者生活介護
  • ・地域密着型特定施設入居者生活介護

特定施設入居者生活介護が適用されるのは、都道府県など自治体の指定を受けた施設であり、介護付き有料老人ホーム、ケアハウス(介護型)、一部のサービス付き高齢者向け住宅などが該当します。

<関連記事>
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■ 高額介護サービス費の対象にならないもの

介護に関連する費用であれば、何でも高額介護サービス費として払い戻しの対象になるというわけではありません。介護保険を使ったサービスであったとしても、対象外のものもあります。以下、高額介護サービス費の対象とならない主なものをまとめてみました。

  • ・住宅改修費の1~3割の自己負担分
  • ・特定福祉用具の購入費の1~3割の自己負担分
  • ・レクリエーションの材料代、食費、居住費、日常生活費
  • ・医療費
  • ・介護保険の支給限度額を超えた自己負担分

介護保険の対象となる住宅改修費や特定福祉用具の購入費の1~3割の自己負担分は、高額介護サービス費の対象とならないといった点に注意が必要です。また、デイサービスなど通所サービスの食費、施設サービスやショートステイの食費、居住費、日常生活費についても、高額介護サービス費の対象外となります。

高額介護サービス費の計算方法(令和3年8月~)

高額介護サービス費を申請することで払い戻しを受けられる額は、自身で計算することができます。以下、高額介護サービス費の計算方法や計算例を紹介します。

<高額介護サービス費の計算式>
対象となる介護サービス費の自己負担額-所得区分に応じた負担の上限額=高額介護サービス費

<高額介護サービス費の計算例1>
  • ・在宅介護で、介護保険による介護サービスの自己負担額が1割の場合は3万1,000円
  • ・住民税非課税世帯で、高額介護サービス費の負担の上限額は2万4,600円
3万1,000円-2万4,600円=6,400円 高額介護サービス費6,400円

<高額介護サービス費の計算例2>
  • ・在宅介護で、介護保険による介護サービスの自己負担額が2割の場合、夫5万円、妻3万8,000円
  • ・住民税課税~課税所得380万円未満の区分で、高額サービス費の負担の上限額は4万4,000円
5万円+3万8,000円-4万4,000円=4万4,000円 高額介護サービス費4万4,000円

高額介護サービス費の申請方法

高額介護サービス費は、市区町村の窓口への申請によって支給を受けることができます。ただし、手続きが必要なのは初回のみで、以降は払い戻しの対象となる金額があれば、指定した口座に自動的に振り込まれます。高額介護サービス費の申請は、介護サービスの利用から「2年」という期限がありますので、該当する場合は速やかに手続きを行いましょう。

■ 申請手続きの流れ

高額介護サービス費は、以下の流れで申請手続きを行います。

  1. 1.高額介護サービス費の対象となった月の2~4カ月後に、市区町村から申請書類が郵送される
  2. 2.市区町村から届いた申請書類に必要事項を記入する。市区町村によっては、申請書類がホームページからもダウンロードできる
  3. 3.市区町村の窓口(介護保険課や高齢障害支援課)で申請手続きを行う(市区町村によっては郵送も可)
  4. 4.市区町村から支給決定通知が届く
  5. 5.高額介護サービス費が振り込まれる

多くの市区町村では、これまで高額介護サービス費の申請をしてない人が対象になると、申請書類の郵送を行っています。高額介護サービス費の申請には期限がありますので、「対象になる」と思われるケースで申請書類が届かない場合は、問い合わせてみましょう。

■ 申請手続きに必要なもの

高額介護サービス費の申請に必要なものは、市区町村によって異なりますが、一般的には、以下のものを用意します。

  • ・マイナンバーカードや通知カード
  • ・介護保険証
  • ・通帳
  • ・印鑑

高額介護サービス費を受け取る口座は、基本的に本人名義のものとなり、本人以外の代理の人の口座に振り込む場合は、委任状が必要です。また、本人が亡くなった後に申請を行う場合は、相続人代表者による誓約書や、相続関係を証明する書類の提出が必要となることがあります。

■ 手続き後の払い戻しはいつになるのか?

高額介護サービス費の申請を行った後、支給の審査を経て振り込まれます。郵送で届く支給決定通知に振り込み日が記載されています。申請書類が届いてから速やかに申請を行った場合、利用した月の3~4カ月後に振り込まれるのが目安です。2回目以降は、利用した月の3カ月後に振り込まれるのが目安となります。ただし、国民健康保険団体連合会から市区町村にデータが届くタイミングによっては、振り込みの時期が遅くなる可能性があります。

確定申告で医療費控除を受けるときの申告

介護保険による介護サービス(介護予防サービスを含む)の中には、所得税の医療費控除の対象となるものもあります。

<医療費控除の対象となる居宅サービス・通所サービス(支給限度額を超えた利用分を含む)>
  • ・訪問看護
  • ・訪問リハビリテーション
  • ・居宅療養管理指導
  • ・通所リハビリテーション
  • ・短期入所療養介護
  • ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護を利用する場合)

<上記と併せて利用した場合に医療費控除の対象となる居宅サービス・通所サービス(支給限度額を超えた利用分を含まない)>
  • ・訪問介護(身体介護のみ)
  • ・夜間対応型訪問介護
  • ・訪問入浴介護
  • ・通所介護(デイサービス)
  • ・地域密着型通所介護
  • ・認知用対応型通所介護
  • ・小規模多機能型居宅介護
  • ・短期入所生活介護(ショートステイ)
  • ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護を利用しない場合)

<医療費控除の対象となる施設サービス>
◎介護サービス費、食費、居住費が対象
  • ・介護老人保健施設
  • ・介護療養型医療施設
  • ・介護医療院

◎介護サービス費、食費、居住費の半額が対象
  • ・特別養護老人ホーム

確定申告で介護サービス費を含めて医療費控除の申請をする際、高額介護サービス費を受け取っている場合は、「介護サービス費(自己負担額)-高額介護サービス費」として、差し引いて算出します。また、民間の介護保険による保険金も控除するといった点に注意が必要です。

まとめ

高額介護サービス費によって、介護保険による介護サービスの費用負担が高額になると、所得区分に応じて軽減されます。ただし、申請しなければ支給を受けることができず、さらに申請には「2年」という期限が設けられています。高額介護サービス費の対象となった場合は、申請書類が届いたらすぐに手続きを行うようにしましょう。

■記事作成・監修 シニアのあんしん相談室
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)
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