特養の待機者が3割減!?その理由と影響とは
2017.8.30
ここでは、特養の待機者が減る原因となった「入居要件の厳格化」とその影響、また入居要件の特例の状況についてご紹介します。
国が発表する「特養待機者3割減」とは?
特養はその費用の安さから、多くの人が希望するため、非常に多くの待機者が生まれ、申請をしてから入居するまでの長い待機期間が問題視されていました。
そこで厚生労働省は、2015年度から特養に入居できる高齢者を原則的に「要介護3以上」にするという基準を設けました(※1.)。このことで、より介護を必要とする人を優先するようにし、待機者を減らすことに成功したのです。
しかし実際に特養の待機者が激減した理由は、入居基準を設けたために要介護2以下の人が門前払いされていることにあると指摘されています。実際に、2016年4月1日時点の要介護1~2の申込者は7万902人であり、厳格化される前の2013年4月の16万8926人から半数以下に減っているのです。
※1.要介護2以下の方はやむを得ない場合にのみ、「受け入れ可能」と定めています。
実際の申込者の変化は?
入居基準が設けられる前と後で比較してみると、申込者の数自体が減っているのがわかります。
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平成25年度申込者数 (2014年3月発表)
- 要介護1~2 17.8万人(34.1%)
- 要介護3 12.6万人(24.1%)
- 要介護4 12.2万人(23.3%)
- 要介護5 9.7万人(18.6%)
- 申込者合計:52.4万人(100%)
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平成28年度申込者数(2017年3月発表)
- 要介護1~2 7.1万人 (22.1%)
- 要介護3 11.5万人(31.4%)
- 要介護4 10.4万人(28.1%)
- 要介護5 7.6万人(20.7%)
- 申込者合計:36.6万人(100%) 介護3~5の合計:29.5万人
以上の変化から2017年3月発表の申込者数は、特例入居の要介護1~2の7.1万人を含んで36.6万人と概算を出すことができます。これは2014年発表の52.4万人からおよそ3割減った数字ですが、要介護1~2が以前発表された人数から約60%減ったこと、要介護3以上の申込者数が以前の発表から約14%減ったことを見ると、要介護1~2の申込者数の削減に頼っているところが大きいと言えるでしょう。
要介護1~2の方でも申し込める特例とは
先にご紹介しましたが、やむを得ない場合においては要介護1~2でも特養に申し込むことが可能です。やむを得ない場合にあたる要件は以下の通りになります。
- ・認知症で日常生活に支障をきたすような症状や行動が見られ、在宅生活が困難な場合
- ・知的障害、精神障害を伴っており、日常生活に支障をきたすような症状や行動が見られ、在宅生活が困難な場合
- ・家族などによる深刻な虐待があり、心身の安全と安心の確保が困難な場合
- ・家族の支援が期待できない上に地域の介護サービスでは不十分な場合
最近では、厚生労働省が全国の自治体に「要介護1~2の人からの申し込みがあった場合に門前払いをしないように」という通知を出したというニュースもあります。要介護者の介護度が1~2でも、自宅での介護やサポートが困難だと感じる方は、この「やむを得ない場合」と照らしわせながら、ケアマネージャーや特養の施設に問い合わることをおすすめします。
これまで要介護1の人も多く受け入れていた施設が、介護3以上の高齢者をだけを受け入れるようになったことは、職員の業務の増加にもつながります。このため、介護離職も増える恐れがあると考えられます。
さらに高齢化社会が進む現代では、要介護1~2の方が増えており、より要介護1~2に焦点を当てた介護体勢の充実が求められています。
今後も引き続き、特養の入居基準の見直しや新たな対策などが必要だと言えるでしょう。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)