特養(特別養護老人ホーム)の費用が利用者によって異なる理由とは?
2017.7.28
以前に掲載した『特別養護老人ホームにかかる費用ってどれくらい?』という記事の中で、特養(特別養護老人ホーム)で必要になる費用を大まかに解説しました。
今回は利用する方によって費用が変わる理由と、特養の利用料の内訳についてご紹介します。
特養でも料金は変化する
特養は原則として「要介護3以上」という入居条件があります。やむを得ない理由がある場合に限って要介護1の方からも利用が可能です。特養の費用は要介護度1~5の段階や利用者の所得に応じて変わります。
特養ではすべてのサービスにおいて介護保険が適用されるため、費用は他の施設と比べて安くなります。月額費用の目安は10万円前後です。
しかし、状況によっては金額が大きく異なる場合もあります。金額が変わる要因としては、居室タイプや食事・入浴など、利用するサービスの違いが挙げられます。基本的に、介護によって発生する費用は介護保険が適用され、1割分が利用者の負担となります。しかし、所得によっては介護保険の負担額が2割になる場合もあるので確認が必要です。
また、所得が一定以下の場合や、介護保険を適用しても生活が困難だと役所に認められた場合、規定の限度額を超えた分は介護保険から支給されます。
以上のことから施設で支払う金額は、介護度だけでなく利用者の所得によっても変わってくるのです。
特養で支払う生活費とは
特養で支払う生活費の内訳は、賃料(居住費)・食費・その他の費用(賃料・食費以外に発生する日常生活費など)が挙げられます。
【居室タイプ別賃料】
居室は「従来型個室」「多床室」「ユニット型個室」「ユニット型準個室」があります。
- ・従来型個室:34,500円/月(1,150円/日)
- ・多床室:25,200/月(840円/日)
- ・ユニット型個室:59,100/月(1,970/日)
- ・ユニット型準個室:49,200/月(1,640/日)
そして、介護度の違いと居室タイプの違いによって利用者が負担する介護保険の負担額が異なります。
- ・従来型個室と多床室の居室の1割負担額 (1か月を30日で計算しています)
- 【要介護3/20,460円(1日682円)】
- 【要介護4/22,470円(1日749円)】
- 【要介護5/24,420円(1日814円)】
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・ユニット型個室とユニット型準個室の居室の1割負担額
- 【要介護3/22,860円(1日762円)】
- 【要介護4/24,840円(1日828円)】
- 【要介護5/26,820円(1日894円)】
【食費】
食費は1日1,380円に金額が固定されているため、介護度に関係なく30日分をかけた41,400円が毎月発生します。 また、食事をするのが難しい場合などでは、特別な食事を用意する分、新たに費用が加算されます。
【その他の費用】
先の項目で「その他の費用」の例として「日常生活費」を挙げています。この日常生活費とは、歯ブラシや化粧品などの日常で消費するものや、趣味や娯楽として日常的に使用するものを施設から受け取ったときの費用です。
ただし、施設を利用する人が一律で支払うのではなく、それぞれが使用した分だけ支払います。日常生活費の内容や金額は、利用者の同意(サイン)が得られない限り発生しません。
金額は個人差があるため、正確には提示できませんが月に1万円前後と考えて良いでしょう。他にも、趣味や娯楽で新聞・雑誌などを注文する場合も別途費用が発生します。
サービス加算について
特養では基本的な介護サービス費の他に、状況によって通常とは異なる特別介護を行った際に、新たに費用が発生します。介護保険が適用されるため、自己負担の割合は基本的に1割となります。
【主に利用されるサービスと加算金額】
以下に紹介する金額は自己負担額です。
- ・外泊 246円/日
- ・栄養マネジメント 14円/日
- ・看取り介護 1,280円/日
※ここでの金額は目安です。死亡日の何日前から看取り介護をしているかによって変化します。 - ・認知症専門ケア I:3円/日 II:4円/日
※入居施設に認知症に関する研修を受けた人員によっても加算金額が影響されます。たとえば、施設の入居者の半数以上が認知症生活自立度「III」以上であること。また、職員間で認知症ケアに関する技術的私道会議が定期的に実施されているなどの条件が当てはまる場合、「I」が適用されます。 また、「I」の条件を満たしており、なおかつ認知症介護指導者研修修了者を配置すること」また「介護・看護職員ごとに研修計画を作成し実施」している施設では「II」が適用されます。 - ・経口維持 I:28円/日 II:5円/日
※口で食事をすることができるものの、障害などがあり誤嚥する恐れがある方に対し、食事を見守り、口からの食事を維持するために発生する栄養管理の費用です。
特別養護老人ホームではさまざまな費用が細かに計算されます。 「単純に居住費と介護サービスの1割負担額で計算すると、実際の金額と差が出てくることもある」と理解しておくことが大切です。
もし、負担が大きく支払いが難しい場合は、所得に応じて一定の上限までであれば残りの金額は介護保険から支給されることがあります。その場合は施設のスタッフやケアマネージャーと相談することをおすすめします。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)