リロケーションダメージを気にして遠距離介護 介護割引と各種サービスを有効利用しよう
2016.10.7
昔と今とではライフスタイルが変化して、親子が別居することは普通になりました。それゆえ、親が要介護状態になった場合、身辺の世話をするために時間とお金をかけてたびたび帰省する「遠距離介護」が必要になってきます。
では、遠距離介護の負担を少しでも軽くするには、どんな方法があるでしょう?
「遠距離介護」は12.7%
認知症高齢者のリロケーションダメージについては、先月『特養の入居の為に引っ越し……リロケーションダメージに注意が必要です』で解説しました。高齢になれば、住み慣れた土地を離れるのを嫌がるものです。それでも介護が必要となれば、離れて生活する親族が親の住む家に時々戻って介護をする「遠距離介護」という選択があります。
遠距離介護のメリットとデメリット
とはいえ、遠距離介護は家族にとってなかなか大変なことです。往復するごとに交通費がかかりますし、肉体的・精神的な疲労の蓄積もあります。さらに「自宅に戻っていて介護ができない時に認知症が進行しないか心配」といった不安もあります。
それらデメリットの一方で、メリットもあります。ひとつは「施設の優先順位」。
入所待ちの多い特別養護老人ホームなどでは、遠距離介護の事情があれば優先的に入所できる場合もあります。
もうひとつは「介護生活のリセット」。認知症介護でたとえストレスが溜まっても、遠い自宅に戻って生活することで気持ちがリセットできる、という人もいます。
ストレスを抱えすぎて介護する側が病気になってしまうケースは決して少なくありません。適度に介護から解放されることも大切です。
急な帰省にも便利!介護割引
遠距離介護のリスクで最も切実なのは、やはり交通費でしょう。介護をしている方のうち、13.8%以上の方が片道5,000円の交通費を使っているそうです。往復移動すればそれだけで1万円以上の出費ということになり、これが週一回ペースともなれば大幅に家計を圧迫してしまいます。
そこで、交通費の負担額の多さで悩む人に向けた、各交通会社の割引制度について把握しておくことをお勧めします。
日本航空・全日空・スターフライヤー・ソラシドエアの航空会社4社では、介護割引の制度を導入しています。
割引の条件は会社ごとに異なりますが、いずれも「要介護・要支援と認定された人の二親等以内の親族」「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」「子の配偶者の父母」を割引対象にしており、いずれも当日予約での適用も可能です。他にも情報の登録が必要な会社もありますので、興味のある人はチェックしてみてください。
鉄道会社には介護割引制度はありませんが、JRでは既成の割引制度を上手に利用すればかなり節約できます。例えばJR東海とJR西日本が展開しているエクスプレス予約などがあります。
他に、格安航空会社や疲れが残ってしまうかもしれませんが高速バスなど低料金の交通機関を利用するのも手段の一つでしょう。
企業や自治体のサービスも有効利用!
遠距離介護では、介護に行けない日や期間が当然ありますが、「そんな日に限って何かあるんじゃないか?」と、心配になってしまいますよね。そんな時には、企業や市町村が実施する、遠距離介護をしている家庭に向けた「見守りサービス」を積極的に利用するのも有効です。
象印マホービンの「みまもりほっとラインi-pot」や、カシオ計算機の「DaisyCircle(デイジーサークル)」、郵便局の「みまもりサービス」など、最近は多くの企業が介護問題に取り組み、サービスを展開しています。
各サービスを簡単に説明します。
これは、子どもや親族と離れて暮らす高齢者などの家に無線通信を内蔵したポットを置き、利用状況をメールで配信するサービスです。利用頻度や利用した時間を確認できるので、「今日も元気みたいだ」と一安心できます。
■DaisyCircleこれは、介護をする家族とケアマネージャーと介護の事業者が連絡を取り、近況を共有できるサービスです。直接会えなくても、ケアマネージャーを通じで様子を確認できますし、何より大切な家族を任せるスタッフと密に連絡ができることも、安心ですね。
■みまもりサービス郵便局が展開するサービスで、月額制で安否確認や遠くに住む家族への連絡をしてくれます。 直接家に上がって話をした様子を家族に伝えてくれるので、家族にとっても嬉しいですし、また一人暮らしの高齢者にとって会話をすることはとても重要なことです。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)