要介護の一歩手前の状態 「フレイル」には早期発見&対応が大切
2016.9.9
フレイルは、「Frailty(虚弱)」の日本語訳で、日本老年医学会が提唱した概念です。
高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、様々な合併症を引き起こしてしまう可能性もあります。
フレイルとはどのような状態なのか、また対策方法を紹介します。
「健常」と「要介護」の中間
現在、「フレイル」という新しい健康ワードが、高齢者を対象とする医学の分野で注目を集めつつあります。
用語としては新しく、聞き覚えがない人の方が多いでしょう。
元々の表現は「Frailty」で、日本語では「虚弱・脆弱」などと訳されてきましたが、2014年5月に日本老年医学会が「フレイル」という名前を提唱しました。
同学会によれば、フレイルは「健常な状態」と「要介護状態」の中間の状態を指し、多くの場合、健常な状態から要介護状態に至るまでにこのフレイル段階を通過すると定義しています。健康な状態からいきなり要介護状態になるわけではないということですね。
身体的な問題だけではなく、認知機能障害やうつなど精神・心理的な問題や、経済的困窮・独居などの社会的な問題も含まれる概念です。
高齢者は特にフレイルが発症しやすいと言われています。
65~69歳の人で5.6%が、80歳以上の人で34.9%の方がフレイル状態にあるというデータもあります。高齢者の保健事業の現状について
フレイル状態になると、心身や生活の中でのダメージを受けたときに回復できる力が弱く、ストレスに対して弱い状態になってしまいます。そんなフレイルの原因となるのは
- ・社会的な交流機会の減少
- ・身体機能の低下
- ・筋力の低下や筋肉量の減少(サルコペニア)
- ・認知機能の低下
- ・活力低下
- ・慢性疾患(糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患・関節炎・抑うつ状態など)
- ・低栄養
- ・収入の変化・家族構成の変化
などと言われています。
フレイルのチェックリスト
フレイル段階の人にはいくつかの傾向がみられます。
複数の疾患を持つ、転倒しやすい、複数の薬を摂っている、などです。
こうした状況においても対策を施さずにいると、将来要介護状態に近づいてしまうわけです。
ここで試しに、健康状態を記した以下の5項目をセルフチェックしてみましょう。
- (1)体重が減った
- (2)歩く速度が遅くなった
- (3)握力が落ちた
- (4)疲れやすくなった
- (5)普段の身体活動力が低下した
この中で3項目に該当した人はフレイルであると、アメリカの老年医学会が定めています。
栄養・運動・社会参加の3つの柱でフレイル予防
フレイルの状態は、早めに発見して早めに対応することが大切です。
適切な対処をして健常な状態に戻ることができれば、要介護のリスクは回避できるはずです。
フレイル予防には、
の3つの柱が重要とされています。
これらはお互いに影響をしあっているため、一つだけしっかりすれば良いというわけではなく、3つの柱をうまく生活サイクルに組み入れることが大切です。
身体活動
しっかりとたっぷり歩きましょう。
少しの運動でも継続して行うことが大事です。
筋トレを行い、筋力の低下を防ぐことで転倒・骨折などで寝たきりになるリスクを軽減できます。
社会参加
社会参加の機会の低下は、フレイルの入り口になりやすいことが分かってきています。
地域のボランティア活動や、趣味のクラブ・サークル、友人や知人との交流、ご近所付き合い、就労など、社会に関わる参加をすることが大切です。
自分に合った活動を見つけて、積極的に前向きな気持ちで参加してみましょう。
栄養
高齢期の痩せは肥満よりも死亡率が高くなるため、痩せてきたという方は要注意です。
「メタボ予防」から「フレイル予防」に切り替えましょう。
食事は活力の源です。
食事で気を付けたいことは次の3つです。
【2】1日2回以上は主食(ごはん・パンなど)・主菜(肉・魚・卵・大豆料理)・副菜(野菜・キノコ・海藻類)を組み合わせて食べましょう。
【3】いろいろな食品から栄養素を摂取しましょう。
バランスのとれた食事を作ることが難しいという場合には、市販の惣菜や缶詰、レトルト食品も活用してみることもおすすめです。
また、高齢者向けの宅配弁当であれば、主食・主菜・副菜を手軽に組み合わせることができます。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)