IADLとADL 介護でよく聞くこの用語の違いって?
2017.4.7
介護福祉に携わる人たちの間で使われる専門用語の一つに、IADLとADLという言葉があります。 どちらも重要な意味を持つ言葉ですが、介護の世界から縁遠い人からすれば、なかなか中身を想像できる言葉ではありません。
今回は、介護について深く理解するために、IADLとADLの用語について解説していきます。
ADLとIADLの用語解説
ADLは「日常生活動作」、IADLは「手段的日常生活動作」とも呼ばれ、介護の世界では使われる機会の多い言葉です。
まずはADLの説明からしておきましょう。
ADLは「Activity of Daily Living」の略で、食事やトイレ、入浴や整容、さらに移動などといったような、私たちが日常生活の中でごく当たり前に行っている習慣的行動のことです。
一方、IADLは「Instrumental Activity of Daily Living」の略です。「Instrumental(手段的)」という単語を含むことでも分かるように、ADLよりも一段階複雑な行動を指します。
具体的な事例として、厚生労働省では以下の8項目をIADLの尺度の指標としています。
- ・電話を使用する能力(自分で番号を調べて電話をかけるか、など)
- ・買い物(すべての買い物を自分で行うか、など)
- ・食事の準備(自分で献立を考え準備・給仕までするか、など)
- ・家事(日常的な範囲のことをすべて自分で行うか、など)
- ・洗濯(すべて自分で行うか、など)
- ・移送の形式(自分で運転したり公的機関を利用して旅行したりするか、など)
- ・自分の服薬管理(適正な量の薬を規定の時間に飲めるか、など)
- ・財産取り扱い能力(銀行手続きやお金の出し入れ等、お金の管理をすべて自分で行うか、など)
なお、IADL能力の低下はADLの前段階で起こり得るもので、順番的にADLの障害がIADLの障害より早く起こることはありません。
上記の指標は、要支援および要介護の人の進行程度を窺い知るうえでの大切な手掛かりとなるため、介護の世界でIADLは重要視されています。
IADLの状況チェックで見えてくることは…
では実際のところ、上記の行動を行っている人の割合はどうなっているのでしょう?
同じく厚生労働省が、IADLのどの指標を実際に行っているか・行うことができているかを、訪問介護サービス利用者を対象に調査を実施しました。
その結果、「請求書の支払い」59.9%、「新聞を読んでいる」59.7%、「本や雑誌を読んでいる」56.8%などが高数値であることが判明しました。
さらに「健康についての記事や番組に関心がある」も61.8%と高い数字を記録しており、何か情報をインプットする行動は、多くの方が行っていることが分かりました。
反対に、行っていない(できない)割合が高かったIADLは、「バスや電車を使って一人で外出」 53.5%、「友だちの家を訪ねる」35.5%、「日用品の買い物」34.8%、「病人を見舞う」33.4%、「食事の用意」31.7%などであることが結果として判明しました。
こちらは要介護度が高くなればなるほど、どの項目においても数値が高くなり、行動範囲が徐々に限定されてゆく現状をつぶさに窺うことができます。
今からあなたもIADL尺度を要チェック!
まだIADLの尺度項目を知らなかったという人は、是非今からチェックして、あなたがお世話をする方についてしっかり確認してみてくださいね。
もしIADLについて不明点や、介護に関する不安などあれば、お気軽にご相談ください。
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参考:要支援者・要介護者のIADL等に関する状態像とサービス利用内容に関する調査研究事業報告書
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)