在宅介護のための「介護リフォーム」について知っておくべきこと
2018.10.10
「介護リフォーム」とは、高齢者、介護者・被介護者が、共に安心して暮らしやすい家にするために行う住宅リフォームです。条件を満たせば、各種補助金や助成金を受けることもできます。
要介護の有無に関わらず、高齢者がいる家庭はもちろん、いつかは必要になり得る介護リフォームを、今のうちから考えておくことが大切です。
「介護リフォーム」は高齢者・要介護者のためだけではない?
介護リフォームの基本は危険個所をなくし、高齢者、介護の必要な人が、住み慣れた自宅(部屋)で安全に生活できる環境を作ることです。ただ、被介護者の視点のみでリフォームすると、思わぬ問題が生じる場合があります。たとえば、トイレ介助が必要な方のいる家なら、トイレには被介護者と介護者の両方が入れるスペースが必要です。このような点を踏まえて、介護リフォームの目的をまとめてみました。
■高齢者・被介護者の生活向上
- ・高齢者や被介護者が、「できるだけ自分の力で行動」できるようにする
- ・「手すりをつける」「段差をなくす」ほか、日常生活(外出・入浴・排泄など)が円滑に行えるような環境を作る
- ・介護リフォームによる、ある程度の自立した暮らしは、高齢者や被介護者の活力ある生活を促す。
■介護者の負担を軽減
- ・先述の「トイレに介助スペースを作る」など、介護者の身体および精神的な負担を軽くする。
- ・車いすを使用するなど、安全に介助できる動線を確保する
■将来に備える
- ・高齢者になってからのリフォームは大変。来るべき日に備えて、介護リフォームを計画する
快適な生活のため、抑えておきたいリフォーム場所
年齢を重ねると、今まで何でもなかった生活が不便に感じることも多くなってきます。それを補うために、下記のようなリフォームをおすすめします。
- ・手すりの取り付け:階段の昇降時、廊下を歩くときの支え。またトイレや浴室への設置は、転倒防止などに役立つ
- ・床の滑り防止:滑らない床材を用いることで転倒を防ぐ
- ・段差の解消:敷居やドア部分の段差をなくし、つまずきや転倒を防止。
- ・引き戸への変更:ドアを引き戸にすることで、開閉の負担を軽くする
- ・トイレの付け替え:自動洗浄機付きほか、高齢者・被介護者向けのトイレに改修。またトイレ内に介助用スペースを設置する
介護リフォームを行う際には、介護を受ける方、行う方の状況を踏まえ、効率的な計画を立てることが大切です。一部を改修することもできますが、将来的なことも含めれば、トータルなリフォームも視野に入れたほうがいいでしょう。
介護保険で「リフォーム補助金」が出るって本当?
要支援・要介護度区分にかかわらず、介護保険には特定の介護リフォームにかかった費用(住宅改修費)を支給する制度があり、最高20万円(自己負担1 割が上限。20万円を超えた分は全額自己負担となる)が支払われます。
※一人一回まで
■リフォーム補助金の対象者
「利用者が要介護認定で、要支援もしくは要介護に認定されている人」「改修住宅の住所が利用者の被保険者証の住所と同一。利用者が実際に居住していること」「利用者が福祉施設、病院に入っていない」
■リフォーム補助金の申請プロセス
- 1.自治体より、要支援または要介護認定を受ける
- 2.ケアマネジャーに住宅改修を相談(ケアマネジャーへの事前相談は、ほとんどの自治体で必須となっている)
- 3.施工業者の選択・打ち合わせ・契約
- 4.市区町村に申請書類を(住宅改修費支給申請書、住宅改修理由書、工事見積書・工事図面、改修前の状況が確認できる写真ほか)
- 5.施工業者による工事
- 6.施工業者への費用支払い
- 7.市区町村に支給申請書類を提出(改修前後の状態がわかる図面や写真、領収書、工事費の内訳書)なお、所有者が異なる場合は「住宅の所有者の承諾書」が必要」
- 8.住宅改修費の支給
また、独自に補助金制度を設けている自治体もあります。たとえば東京都千代田区では「介護予防住宅改修等給付」として、65歳以上の区民(日常生活の動作等に困難があり、区が調査を行った結果、介護予防・自立支援の観点から改修が必要と認めた人。要介護認定を受けていない方または非該当の人)に介護リフォーム費用が支給されています。ほかにも大阪市、名古屋市、札幌市などで補助金の取り組みを行っているので、介護リフォームに着手す前に、お住まいの各自治体へ連絡・確認することをおすすめします。
ただし、家自体の構造、費用がかかりすぎるなどの理由で、介護リフォームが難しいケースもあります。その場合は、介護施設への入所も検討しなくてはなりません。「在宅介護か、施設介護か」を判断するには、被介護者、自宅、家族の現状にあわせて考えることが大切だといえます。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)