口内を清潔にするだけではない「口腔ケア」の意外なメリット
2018.10.3
「口腔ケア(「オーラルケア」とも呼ばれる)」は、口の中を手入れすることです。一般的に行われている歯ブラシや洗浄液などを使い、口の中を清潔に保つ歯磨きなどもそのひとつで、虫歯や歯周病、口臭などの予防に役立ちます。
また「口腔ケア」をすることで、口腔の病気や、誤嚥性肺炎などの疾患を見つけることもできます。さらに加齢で衰えた摂食・咀嚼・嚥下といった口腔機能の健全維持や回復、味覚や発声の改善ほか、全身の健康を守ることにも繋がります。
意外に忘れがち。健康にもつながる口腔ケアとは?
口腔ケアには、自分でできる「セルフケア」、歯科医師や歯科衛生士が行う「プロフェッショナルケア」の二つがあります。
〇セルフケアでできること
- ・歯ブラシを使い、毎日(なるべく毎食後)きれいにみがく
- ・歯石予防のため、歯間ブラシやフロスなどを用いて歯垢を取り除く
- ・口腔体操やマッサージを行い、口腔機能を維持
- ・栄養バランスのとれた食事を、しっかり咀嚼して食べる
- ※上記を自分で行えない場合は、家族や介護職が行う
- ・定期的に歯科検診を受ける
〇プロフェッショナルケア
- ・歯石の除去など、自分で清掃することができない部位を専門的にケア
- ・虫歯、歯周病の状況を診て、適切な口腔内清掃やアドバイスを行う
- ・口腔内機能の維持や回復を目的とした口腔ケア
- ・摂食の支援
- ・入れ歯の清掃・洗浄へのアドバイス
- ・被介護者への状況に応じた口腔内ケア
- ・フッ化物洗口など、口腔トラブル予防のための薬剤の紹介やアドバイス
可能であれば、週1回~月2回程度のプロフェッショナルケアがおすすめです。健康を維持するためにも、セルフケアとプロフェッショナルケアの両方を上手に取り入れるといいでしょう。
口腔ケアのメリットとは?
口腔ケアを行うことで、全身の病気を防ぐことが期待されています。口腔ケアで発症や悪化といったリスクを予防・回避することが可能な疾病には、下記のようなものがあります。
〇認知症
しっかりと噛むことは、脳へ良い影響を与えると期待されています。逆に噛む力が衰えると、脳の認知機能の低下も招く恐れがあるといわれています。そのため、歯がほとんどなく、入れ歯もしていない人は、歯が20本以上ある人と比較すると認知症の発症リスクが高くなるという結果が出ています。そのためには歯を失わないよう、虫歯や歯周病の予防が必要。また、口腔ケアで噛む機能を高め、噛み合わせを矯正することも、認知症予防につながります。
〇肺炎:高齢者や要介護者の場合
口腔内に蓄積した食べ物や唾液が誤って気道に入り込み、「誤嚥性肺炎」を発症する危険性があります。一般的に寝たきりの高齢者に起こりやすいとされていますが、嚥下能力は年齢と共に低下するので注意が必要です。これを予防するには、口腔内を清潔に保つことが大切。口腔内をきれいにしておくと、誤嚥性肺炎の発症リスクは低くなります。
〇インフルエンザ
近年、口腔内ケアで口腔内細菌を減少させていくことがインフルエンザの予防には有効だと考えられています。そのためセルフだけでなく、専門的な口腔内ケアの必要性が高まっているようです。
口腔ケアを行う上でのポイント
口腔ケアで健康管理するためには、日頃から自分で行う「セルフケア」、介護者や専門家が行う「プロフェッショナルケア」の両方を用いることが効果的です。虫歯や歯周病に加え、肺炎、認知症などの予防、発症リスクを下げる口腔ケアは、高齢者だけでなく、すべての人が習慣にしておくことが望ましいといえるでしょう。
ですから介護施設を選ぶときは、口腔ケアにも気を配っているか、指導をしているかという点も確認することが重要だといえます。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)