高齢者が行う3種類の機能訓練と3つのメニュー
2018.8.8
以前、「IADLとADL 介護でよく聞くこの用語の違いって?」について紹介しました。
デイサービスでは、高齢者に対する機能訓練を実施してくれるケースもあります。しかし、そもそも機能訓練がどのようなものか知らないという人も少なくないでしょう。ここでは機能訓練とは何か、種類やメニューはどのようなものがあるのかを解説していきます。
機能訓練とは?
高齢者の機能訓練とは、一言でいうと「リハビリ」です。低下した生活機能や身体機能の向上や維持を目的としています。高齢者の身体状況は千差万別のため、「個別機能訓練」として個々の高齢者に適したプログラムが組まれるのが一般的です。
目的別・機能訓練の種類
機能訓練の種類は目的別に分けることができます。ここでは、特に重要な3つの機能訓練を紹介します。
1.認知症予防のための機能訓練
認知症を防ぐためには脳を活性化させることが必要です。そして、脳の活性化のためには指の運動が効果的といわれています。老化が始まる前の段階であれば、数独などのパズルやドリルなども効果的でしょう。しかし、一度脳の老化が始まると、まずは物理的な刺激を脳に与えることが必要になります。そのため「指回し運動」などの機能訓練が有効です。
2.日常生活動作のための機能訓練
自力で立ち上がることが難しい高齢者や、着替えなどの日常的な動作が困難な高齢者の場合、日常生活動作のための機能訓練が実施されます。具体的にどのような方法でこの訓練をするかは、高齢者個人の状況によります。単純に筋肉量が減少しただけでなく、手術で人工関節を入れているケースもあるでしょう。その他、脳梗塞の後遺症などあらゆる症状や状況に合わせた訓練が実施されます。
3.誤嚥予防のための機能訓練
誤嚥性肺炎は、高齢者の死亡原因として特に多く見られるものの1つです。この誤嚥を防ぐためにも、顔の筋肉や舌、喉などの機能を総合的に鍛える必要があります。具体的なやり方としては、まず「あ・い・う・え・お」の表情をはっきり区別して作ることです。これにより顔の筋力が向上するだけでなく発声も良くなり、コミュニケーションの面でもプラスになる事例がしばしば見られます。
機能訓練の一般的なメニュー・3種類
機能訓練のメニューは豊富にあります。ここでは、一般的なメニューの中から道具別に3種類のメニューを紹介します。
1.タオルを使用するメニュー
タオルを用いた機能訓練は、日常生活動作のための機能訓練のメニューです。たとえば椅子に座りながらタオルを踏みつけ、その両端を腕で引っ張り上げるなどのメニューがあります。引っ張ることで腕の筋力が鍛えられ、それに逆らって蹴る(踏む)ことで脚の筋力が鍛えられるものです。
高齢者の機能訓練は、成果が出て完全に自立して生活できるようになった後でも、簡単に継続できることが理想といえます。その点、どこにでもあるタオルを使った訓練方法は特に有効なメニューの1つなのです。
2.セラバンドを使用するメニュー
セラバンドは「トレーニング・ラバー」とも呼ばれるものです。基本的には「ゴムの紐」ですが、これをさまざまな態勢で引っ張ることで、日常生活に必要な筋力を鍛えます。具体的なメニューについては、「安全な形で適度に負荷をかけることができれば何でも良い」ものです。上に書いたメニューのタオルをセラバンドに置き換える例もよく見られます。また、一番簡単なメニューとして「体の前でセラバンドを両横に引っ張る」というものもあります。
3.セラプラストを使用するメニュー
セラプラストは簡単に言うと「ゴム製の粘土」です。粘土のように手が汚れることがなく、乾燥して固まることもないため、毎日の機能訓練に使いやすくなっています。具体的なメニューとしては、器や動物などさまざまな造形をすることが多いものです。指の筋力が回復するだけでなく、脳の活性化にもつながることが期待できます。
機能訓練のやり方を正しく理解しよう!
機能訓練の種類やメニューを正しく理解すれば、より良いデイケアのサービスを選ぶことができます。質の高い機能訓練のサービスを受けることで、高齢者の脳や全身の機能も向上する可能性が高まるでしょう。個々のデイケアについて調べるだけでなく、機能訓練自体についても知識を得るようにしてください。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)