集団生活では要注意! 老人ホームで行われている感染症対策
2018.4.4
今回は高齢者が集団生活をすることから要求される、老人ホームでの感染症対策について紹介します。老人ホームで行われている感染症対策にはどのようなものがあるのか、どのような病気が感染症として危険視されているか、また入居者が気を付けて行うべき予防法などを見ていきましょう。
高齢者がかかりやすい感染症
高齢者が特に注意したい感染症には、以下のようなものがあります。
- ・肺炎
肺炎は病原微生物を原因として発症します。高齢者が肺炎になる理由の多くが誤嚥によるものです(誤嚥性肺炎)。食べ物や飲み物に限らず、唾液が気管に入ることで 誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。唾液の中に細菌がたまらないよう、うがいをするなど口の中を清潔に保つようにしておきましょう。
- ・インフルエンザ
高齢者は免疫力が低いため、感染が広まりやすく、また重症化しやすいので注意が必要です。 感染経路は飛沫感染、接触感染の2種類があります。マスクの着用や、うがい手洗いの徹底がインフルエンザ予防のポイントです。
- ・結核
結核菌は臓器に感染することが一般的ですが、免疫力が低下傾向にある高齢者の場合、全身に感染することがあるので注意が必要です。65歳以上の高齢者は、定期健診などで早期発見、早期治療が大切になります。
- ・ノロウイルス
カキなどの二枚貝に含まれ、生で食べたりすることで感染します。感染力が高いので、集団生活をする老人ホームでは感染しないための対策を徹底する必要があります。生モノは極力避ける、うがい手洗いの徹底が大切です。
- ・MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌をMRSAといい、院内感染などが現在問題になっていると言われています。高齢者が感染すると肺炎などにつながる恐れがあるので注意が必要です。手洗い、アルコール消毒を意識的に行いましょう。老人ホームでは、保菌者のケアをするときにマスクや手袋などを着用するなどの感染拡大対策を講じます。
- ・疥癬(かいせん)
ヒセンダニと呼ばれる疥癬虫が皮膚の角質層に寄生することで感染します。激しいかゆみが出るのが特徴で、介護施設や病院などの集団感染が問題になっています。 長時間肌と肌を密着させることで感染しますので、ヘルパーは手袋を装着するなどして感染拡大を予防します。
老人ホームが行う感染症対策
厚生労働省が策定している「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」には、老人ホームで感染症が拡大しないための環境作りに関する注意点が記されており、これに基づき、老人ホームでもさまざまな感染症対策が実施されています。
【日常的な対策】
- ・手洗い、うがいの徹底化
- ・蛇口に触れないようにするための自動手洗い機の導入
- ・食事の提供の際にビニール手袋を利用する
【面会者やボランティア、委託業務者が出入りする際の対策】
- ・手洗い刷り込み式消毒剤の利用を促す
- ・うがい手洗いの実施を促す
- ・マスクの着用を促す
【その他の対策】
- ・ワクチンの予防接種
- ・排泄物や吐しゃ物の適切な処理
感染症が発症、拡大させないため以上のようなさまざま対策が取られています。
感染症に感染しないためには、入居者個人が日常から予防に意識を向けることも重要です。手洗いをしっかり行い、充分な睡眠、食事をとるなど、老人ホームで行われる予防と合わせて、入居者自身が意識的に感染症対策をとるようにしていきましょう。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)