オレオレ詐欺に認知症、インターネット普及がもたらす高齢者への影響
2018.3.16
約20年前にインターネットが一般家庭にも普及して、「パソコンは一家に一台」の時代に突入しました。さらに携帯も、ここ数年でスマートフォン中心に移行しています。
そうした時代の流れを肌身で感じているシニア世代の中には、移り変わりの早いネット事情に戸惑う人や、トラブルに巻き込まれてしまう人も。
意外と多い?シニア世代のインターネット利用
一般的に機械には疎いと思われがちなシニア世代ですが、近年、スマホの利用が高齢者層にもかなり普及していますし、インターネットを上手に生活に取り入れている人も決して少ないわけではありません。
総務省が2017年に発表したインターネット普及状況調査によれば、2016年の高齢者のインターネット利用率は、60代前半が83.3%、60代後半が69.4%、70代が53.6%、80代以上でも23.4%に上ります。70代の半数以上、80代の約4分の1が日常生活でパソコンやスマホを利用しており、世代によっては増加傾向にあるほどです。
参考:総務省 インターネットの普及状況「第2部 基本データと政策動向」しかしその一方で、高齢者ユーザーの増加に伴い、インターネットトラブルに高齢者が巻き込まれてしまう件数が増えているのも事実です。メールを使った架空請求トラブル、インターネット接続の勧誘電話を強引にされ続け契約させられたうえ、解約したら違約金を請求されてしまうトラブル、無料サンプルを注文したら定期購入になっていたなどのネット通販トラブルなどがあり、中には悪質なものも存在します。
当欄では以前「高齢者のインターネットトラブル! いくつかの事例を紹介!」の記事でも紹介しましたが、これらのトラブルは日に日に多様化し、増加の一途を辿っているようです。
高齢者だけでなく若者にも!怖い「デジタル認知症」
実は、インターネットやスマホの普及が起こす問題は、こうしたネットトラブルだけではありません。
特に近年問題視されている、デジタル認知症と呼ばれる症状です。パソコンやスマホを長時間使用するうちに、記憶力低下などの記憶障害や認知機能低下などの精神障害を招くのがデジタル認知症の特徴です。
認知症といっても高齢者だけではなく、若年層でも発症するケースがあります。特にスマホ依存症では、脳内のホルモンバランスが崩れて脳の神経細胞に強いダメージを与え、認知症と似た症状に陥ることがあるそうで、さらにスマホやSNSのし過ぎで不眠症からうつ病になる可能性もあります。もっとも、これらは若年層に限らず、スマホが普及したシニア世代にも同様のリスクが存在することも忘れてはいけないでしょう。
見守りや詐欺回避に…スマホのメリット
過剰利用による弊害ばかりに目が行きがちなスマホですが、高齢者にとって役立つ側面もあります。例えばソフトバンクは2018年から、認知症高齢者のためにスマホの「オレンジセーフティネット(OSN)」という、アプリを使った見守り支援サービスを提供開始する予定で、認知症高齢者を抱える世帯にとっては朗報でしょう。それ以外にも高齢者のスマホ活用は「家族との交流が密になりオレオレ詐欺の回避に役立つ」とか「災害時の連絡手段が増える」などのメリットがあります。
インターネットやスマホは上手に使いこなせば便利で生活も潤います。ただし何につけても依存し過ぎは禁物。これは高齢者に限らず、あなた自身も注意しなければならないことなのです。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)