介護休暇とは|制度利用の条件・賃金の有無・介護休業との違いを解説
2021.9.6
「介護休暇」は、育児・介護休業法で決められている介護と仕事を両立するための支援制度の一つです。しかし、介護休暇の取得を検討するに当たって、給与はどうなるのか、介護休業とどちらを取得すべきか、気になる人は少なくないのではないでしょうか。そこで、介護休暇を取得できる条件、日数、給料の取り扱いなどについて解説した上で、介護休業と比較していきます。
目次 |
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介護休暇とは
「介護休暇」とは、要介護状態にある家族の介護のために休暇を取得できる制度のことです。介護休暇は、有給休暇と別に取得することが可能です。介護休暇は、要介護状態の家族を介護するために休暇を取りやすくすることで、介護と仕事を両立できるように設けられています。
食事の世話や排せつなどの身体介助だけではなく、通院への付き添い、介護に関連する買い物、介護サービスの手続き、ケアマネージャーとの打ち合わせといったケースでも、介護休暇を取得することができます。
■法律で定められた制度
介護休暇は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」といいう法律で定められた制度です。
一定の要件を満たす労働者は、介護休暇を取得する権利があり、労働者から介護休暇の申し出があった場合、会社側は拒むことができません。
■介護休暇取得の条件
介護休暇を取得するためには、対象となる労働者、家族の続柄、心身の状態に条件が設けられています。
対象者 | 要介護状態にある家族の介護をする労働者 |
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対象とならない者 |
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対象となる 介護対象者との続柄 |
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対象となる要介護状態 | 要介護2以上、または12項目の状態のうち、 2が2つ以上、あるいは3が1つ以上 |
介護休暇を取得可能な日数
介護休暇は、2021年1月の制度改正によって取得単位が変わりました。
介護休暇が取得可能な日数としては、対象となる家族が1人の場合は5日、2人以上の場合は10日です。特に、会社で規定が設けられていない場合は、毎年4月1日から翌年3月31日までを1年間としてカウントします。
■時間単位で取得が可能
介護休暇は、2021年1月の制度改正によって、1日単位または時間単位での取得が可能となりました。ただし、時間単位での取得が困難な業務に就いている労働者は、労使協定を締結されている場合、1日単位のみでの取得となります。
介護休暇を時間単位で取得する場合、1日分とカウントする時間数は所定労働時間によるため、労働者によって異なるケースがあります。所定労働時間と同じ時間数の介護休暇を取得する場合は、1日という取り扱いです。ただし、時間単位で取得する場合の1日の時間数は、所定労働時間に端数がある場合、切り上げとなります。例えば、所定労働時間が7時間40分の場合、8時間分の介護休暇の取得で1日分というカウントとなります。
また、時間単位での介護休暇の取得は、原則として、始業あるいは終業から連続した時間となります。会社が認めるケースを除いては、就業時間の途中で取得し、再び業務に戻るといった中抜けによる取得ができない点に注意しましょう。
■時間単位での取得例
介護休暇を時間単位で取得する場合、間違えやすいケースとしては、以下のような例が挙げられます。
<例1:休憩時間を挟むケース>
<例2:変形労働時間制のケース>
変形労働時間制の場合、労使協定や就業規則などによる取り決めによって、1年単位、1カ月単位、1週単位のいずれかの平均で、1週間の労働時間が40時間以下になるよう、労働時間が決められています。そのため、1日の法定労働時間の8時間を超えて働く日もあれば、6時間など労働時間が短い日もあります。
変形労働時間制の場合は、1日平均所定労働時間数分の介護休暇を取得すると、1日分というカウントになります。例えば、1日の所定労働時間数が7時間20分というケースで6時間分の介護休暇を取得した場合、あと2時間分を取得すると、1日分というカウントになります。
介護休暇中の給与支払い
育児・介護休業法では、介護休暇の取得に関する規定が定められていますが、介護休暇中の給与に関する規定はありません。
■介護休暇には給付金や助成金がない
介護休暇には、給付金や助成金といった制度がない点に注意が必要です。一定の要件を満たすと、雇用保険による介護休業給付金が受給できるのは「介護休業」です。
■介護休暇中の給与は会社ごとに異なる
介護休暇中の給与の支払いの有無は、育児・介護休業法などの法律による規定がありません。会社によって有給か無給か決められていますので、就業規則などを確認しましょう。
介護休暇の申請方法
介護休暇の申請は、口頭で行うこともできますが、会社によっては書面での提出が規定となっているところもあります。ただし、介護休暇は、当日の申し出による取得も可能なため、「書面提出は後日でも良い」という形で運用することが義務付けられています。
介護休暇を取得するに当たって、会社に伝えるべき項目としては、以下のようなものが挙げられます。
- ・氏名
- ・対象となる家族の氏名と労働者との続柄
- ・対象となる家族が要介護状態にあるという事実
- ・介護休暇を取得する年月日(1日単位での取得の場合は介護休暇の取得を開始する日と終了する日)
このうち、「対象となる家族の氏名と労働者との続柄」「対象となる家族が要介護状態にあるという事実」については、会社から証明書類の提出を求められることがあります。
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と似たものとして、「介護休業」があります。介護休暇は1時間から数日程度の短期間での取得であるのに対し、介護休業は通算93日までの長期間にわたって取得できるという点が大きく異なります。また、介護休業には、介護休業給付金という給付金が設けられていることも、介護休暇と異なる点です。
介護休暇は、通院や入院の付き添い、いつも介護をしている人の体調不良、介護サービスの手続き、ケアマネージャーとの打ち合わせなど、突発的に休む必要が起きたときや、短時間で済む用事のために取得するときに向いています
一方、介護休業は、利用する介護サービスを決めるまでの期間、家族で介護を受け持つ体制を相談するまでの間、老人ホームを探している期間など、介護の体制を整えるまでの期間の取得に向いています。
■介護休業の条件
介護休業と介護休暇では、対象となる労働者の条件に違いがあります。日雇い労働者や労使協定による取り決めのある場合を除き、介護休暇は、要介護状態にある家族を介護する労働者であれば、誰でも取得することが可能です。
一方、介護休業は、パートやアルバイトなどの有期雇用の労働者の場合、「入社1年以上で、介護休業の取得予定日から93日を経過する日から6カ月以内に契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと」といった条件が設けられています。
対象となる介護が必要な家族の続柄や、取得が認められる要介護状態は、介護休業と介護休暇では違いがありません。
介護休業 | 介護休暇 | |
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対象者 |
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対象とならない者 |
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対象となる 介護対象者との続柄 |
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対象となる要介護状態 | 要介護2以上、または12項目の状態のうち、 2が2つ以上あるいは3が1つ以上 |
要介護2以上、または12項目の状態のうち、 2が2つ以上あるいは3が1つ以上 |
■介護休業の休暇日数
介護休業を取得できる日数は、対象となる家族1人につき通算93日まで、3回までの分割が可能です。1年ごとに日数が決められている介護休暇とは異なり、通算日数という点に注意しましょう。
介護休業 | 介護休暇 | |
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日数 | 対象家族1人につき通算93日まで | 1年間で、対象家族が1人の場合は5日、 2人以上の場合は10日 |
取得単位 | 対象家族1人につき3回まで分割可能 | 1日単位または時間単位 |
■介護休業の給与・給付金
介護休業も介護休暇も、取得中の給与に関しては、法律による規定がないといった点は同じであり、会社によって給与の支給の有無や支給額が異なります。ただし、介護休業は、一定の要件を満たしていると、雇用保険による介護休業給付金を受給できるという違いがあります。
介護休業 | 介護休暇 | |
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給与 | 法的な規定なし | 法的な規定なし |
給付金 | 介護休業給付金 | なし |
介護休業給付金を受給するには、原則として、介護休業を開始した日以前の2年間に被保険者期間が1年以上あることが条件です。介護休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で算出されます。
介護休業給付金は、介護休業の終了後に申請を行うことで受け取れるため、介護休業中に支給されないという点に注意が必要です。また、介護休業給付金の受給は、職場復帰が前提となるため、介護休業の終了後に退職する予定の場合は、受給できません。
介護休業給付金を受給するには、在職中の企業が管轄のハローワークで申請手続きを行うのが基本ですが、本人が申請することもできます。介護休業給付金の申請に当たっては、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、介護休業給付金支給申請書、賃金台帳、出勤簿、タイムカードといった賃金の額や支払い状況を証明できる書類、介護休業申出書、民票記載事項証明書などが必要です。
■介護休業の申請方法
介護休業を取得したい場合、休業開始予定日の2週間前までの申請が必要です。介護休業の申請に当たっては、原則として、書面で申請を行います。会社独自の書式が用意されている場合は、決められた書式を使用しますが、会社で書式の用意がない場合は、厚生労働省のホームページにある介護休業申出書を使用するといった方法があります。また、会社が認めた場合に限り、メールやFAXによる申請も可能です。
介護休業の申請には、以下の項目の記載が必要です。
- ・介護休業を申請する年月日
- ・氏名
- ・対象となる家族の氏名と労働者との続柄
- ・対象となる家族が要介護状態にあること
- ・介護休業の開始日と終了日
- ・対象となる家族のこれまでの介護休業日数
会社側は、対象となる家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができます。
まとめ
介護休暇は、法律で決められた制度ですので、介護と仕事を両立していくためにも、介護に充てる時間に取得することが可能です。また、介護休業は、要件を満たすことで、介護休業給付金の対象となります。介護と仕事を両立するためには、休暇を取得するタイミングや目的に応じて、介護休暇と介護休業をうまく使い分けることを考えていきましょう。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)