認知症、在宅介護なら気をつけたい 高齢者の薬事情と向き合い方
2018.2.9
皆さんは毎日、何種類の薬を服用していますか?
中高年期を過ぎ、病院に通う回数が増えるにつれて、毎日の習慣となる薬は増加してしまうものです。しかし、だからといって無計画に薬に頼るのはよいことではありません。特に高齢者の場合は、一層の注意が必要となります。ではその注意とは、一体どのようなことなのでしょうか?
高齢者の薬の量が多くなってしまう理由とは?
2014年の厚生労働省のデータでは、後期高齢者の約4人に1人は7種類以上の薬を医療機関でもらっています。それほど最近の高齢者の多剤傾向は高いとされています。
ところで、この多剤傾向、何が原因でもたらされるものなのでしょうか?
下記の3つが高齢者の多剤傾向に拍車をかけてしまう要因とされています。
- ・医療機関での投薬効果が不十分で、その効果を補うため、薬が増やされる
- ・高齢になると複数の持病を患う傾向が高まり、それに伴って服用しなければいけない薬の数が増えてしまう
- ・症状などに合わせて複数の医療機関に通うことで、複数から薬が処方されてしまう。
そして、この服用する薬の種類の増加によって、副作用発症の可能性が高まってしまいます。特に6つ以上薬を処方されており、それらを服薬している方は発症しやすくなるので要注意です。
高齢者が起こしやすい副作用の症状としては「ふらつき・転倒」「食欲低下」「便秘」「排尿障害」「うつ・せん妄」などがあり、それ以外にも、副作用がもとで転倒し、骨折で寝たきりになり、認知症を発症してしまうといったケースもあります。
また、副作用の発症を考慮してなるべく控えた方がよい薬としては、不眠症やうつ病の薬、循環器系の薬、糖尿病の薬などがあります。ただし、わからないままいきなり減薬をすると症状悪化にもつながりかねません。独自の判断ではなく、かかりつけの医者や専門家に相談し、減らしてもらうとよいでしょう。
正しい服薬管理のための四つの心構え
何種類もの薬を服用する高齢者にとって、正しい服薬管理は日常生活の中で重要なことです。特に、後期高齢者になると服薬管理能力が衰えます。また、認知症の初期症状としてもこの管理能力が低下するとされています。もしあなたの身近な高齢者の方の中に、医療機関からの処方薬が余り始める、その薬の余りに自覚がないようなことがあれば、認知機能障害を疑った方がよいかもしれません。
さて、正しい服薬管理を行うための心構えや対応として、以下の4つのことを覚えておくとよいでしょう。
一つめは「おくすり手帳の確認」。複数の医療機関で処方される薬の情報は、すべて一冊にまとめられ、薬剤師がチェックしてくれるので管理に役立ちます。
二つめは「専用ツールの活用」。あらかじめピルケースに分けたり、服薬カレンダーを使ったりして、飲み忘れをしないようにします。チェックシートを作成するのもよいでしょう。
そして三つめは「家族の確認」。認知症の初期症状がある場合は、周囲の家族が服薬の状況や生活の状況をよく把握しておくことも大切です。
さらに四つめとして、在宅介護の場合は「かかりつけの薬剤師」を決めておくことが必要です。処方の履歴や市販の薬をまとめて覚えてもらえるうえ、専門知識による応対や困ったことへのアドバイスなど、薬についていろいろ相談に乗ってくれる、頼もしい役割をしてくれます。
薬との付き合い方、考え直してみるのもいいかも
「かかりつけ薬剤師」の存在は、万が一のときに助けてくれるサポーターのような役割ですが、最終的に当事者の健康を左右するのは、当事者自身の「薬と向き合う姿勢」でしょう。
むやみに多くの薬に頼る余り、かえって副作用で苦労する高齢者も少なくありません。その意味では、「完治を目指さず、薬との付き合い方を変えた穏やかな生活」という意識を持って過ごすことも必要でしょう。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)