ADLの評価法を知り、高齢者の能力を把握しよう!
2018.2.2
以前、「IADLとADL 介護でよく聞くこの用語の違いって?」でADLとIADLの違いについて紹介しました。
「日常生活動作」を意味するADL。食事やトイレ、入浴など、生活を送るための動作のことを指し、人の話を理解することや、人の顔や名前を記憶するなどの、認知的な動作もADLに含まれます。
高齢者によって日常生活で行うことのできる動作には差があるものです。また、どれくらいの動作ができるのかによってリハビリなどのメニューが変わりますので、高齢者のADLは定期的にチェックする必要があります。
今回はそのADLをチェックするための評価方法(FIM)について紹介します。
ADLの評価方法「FIM」
ADLをチェックする方法に、FIM(機能的自立度評価表)というのがあります。ADLにはほかにもいろいろと評価法がありますが、FIMはその中でも信ぴょう性が高い評価法です。また、専門家でなくても簡単にADLの評価行うができるので、自分でできるADL評価法として広く普及しています。
FIMの項目
FIMには「運動項目」と「認知項目」という2つの分類があります。
運動項目には4つの大項目があり、その大項目の中に小項目(チェック項目)が13個。認知項目には2つの大項目があり、大項目の中に5つの小項目があり、合計18個のチェック項目が用意されています。
では、どのようなチェック項目があるのか見ていきましょう。
運動項目
【セルフケア】
- 1.食事に関する動作(咀嚼や嚥下も含む)
- 2.整容(洗顔、歯磨き、髭剃りなど)
- 3.清拭(風呂、シャワーなど)
- 4.上半身の更衣
- 5.下半身の更衣
- 6.トイレ動作
【排泄管理】
- 7.排尿コントロール
- 8.排便コントロール
【移乗】
- 9.ベッド、椅子、車いすなどへの移乗
- 10.トイレ(便器への移乗)
- 11.浴槽、シャワー室までの移乗
【移動】
- 12.歩行、車いす操作
- 13.階段昇降(12~14段の昇降)
認知項目
【コミュニケーション】
- 14.理解
- 15.表出
【社会的認知】
- 16.社会的交流
- 17.問題解決
- 18.記憶
以上18個のチェック項目に7点満点(最低が1点 ※0点はない)で点をつけていき、評価をおこないます。
FIMの採点基準
FIMは18個の小項目に7点満点で点数をつけていきADLの評価をおこないます(最高得点が126点、最低得点が18点です)。
この項ではFIMの採点基準をご紹介します。
- 7点
完全自立
介助者を必要とせず、動作に問題がない。 - 6点
修正自立
介助者は不要だが、動作に時間がかかったり、補助具が必要だったりする。 - 5点
監視・準備
介助者による、監視、指示、促しが必要。 - 4点
最少介助
介助者に助けられながらADLの75%以上を自分でおこなう。 - 3点
中等度介助
介護者に助けられながらADLの50%以上、75%未満を自分でおこなう。 - 2点
最大介助
介助者に助けられながらADLの25%以上、50%未満を自分でおこなう。 - 1点
全介助
ADLの25%未満までしか自分でおこなえず、介助者の手助けが必要不可欠。
それぞれの項目に点数をつけたら、高齢者のFIMの総合点を算出します。
総合点が80点以上で「歩行が自立(80点台後半以上なら屋外歩行自立、前半なら屋内歩行自立)」、70点~80点で「セルフケアが自立」50点~70で「半介助」、50点未満で「全介助」となります。老人ホーム探しの参考にしてみるといいでしょう。
FIMによるADLのチェックは、「対象者の自立度と介護量」を把握するためにおこなわれるものです。高齢者にできる生活動作の範囲を知っておくことで、介護のアプローチや介護計画などが立てられやすくなり、より適切な介護を受けることが可能になります。
これから老人ホームを探すという方にとっても、ADLの範囲がホーム探しの指標になってくれるものです。ここで紹介したことを参考にして、どの程度の生活動作が可能なのかチェックしてみてください。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)