ADLの予防は早めが吉。評価基準や訓練方法についてご紹介
2018.1.26
日常生活のうえで必要不可欠な動作や、何気なく行っている動作が、ある日突然できなくなってしまったら…?
若いうちは考えもしないことですが、高齢になるにつれて日に日に現実味を帯びてくるものです。
介護の世界では、こうした老年期特有の不自由さを少しでも減らすため、学術的な分析と研究が進められているのです。
家族と医療従事者のADL評価の違いとは?
まず介護の世界で使われるADLという用語について、簡単に説明しておきます。ADLとは「日常生活動作(Activities of Daily Living)」の略です。
日常生活のうえで必要な一連の動作、すなわち移動・更衣・食事・排泄・入浴・整容などを総称して「基本ADL」と呼び、それよりも高次な日常動作、すなわち食事の準備や買い物などの家事一般・金銭管理・乗り物の利用・電話の利用・薬の管理などを「手段的ADL(IADL)」と呼びます。
ADLとIADLの比較については以前も紹介しましたので、詳しくは「IADLとADL 介護でよく聞くこの用語の違いって?」の記事を参照してください。
さて、高齢者のADLの評価にあたっては、評価対象となる利用者の家族と利用者を見守る医療従事者とで、指標に差があることが指摘されていました。どんな差かというと、家族が利用者を「何ができなくなったか」という視点からADL評価するのに対し、医療従事者は利用者を「何ができるか」「何ができるようになったか」の視点からADL評価する、立場上の違いによる差です。
在宅における介護環境の中で基準とすべきは、前者の家族的視点からのADL評価であり、それはまた医療側がADL向上のためのリハビリ訓練を実施する際に注意すべき部分でもあるといえます。
どんな差がある?「できるADL」「しているADL」「するADL」
ADL訓練を行うにあたって知っておくと役立つのは、「できるADL」「しているADL」「するADL」という3種類のADLの違いの見極めです。
「できるADL」はリハビリ訓練で評価するときの指標、「しているADL」は普段の生活でしている行動の指標であり、この2つを向上させることで将来到達する、いわば目標地点に位置付けられた指標が「するADL」です。
そのADL訓練の具体的な内容として、訓練室で動作をスムーズに行うことを目標に生活動作訓練を支援する「作業療法」があります。食事動作訓練、整容動作訓練、更衣動作訓練など基本ADLにまつわる全ての訓練が行われ、いずれも最終目標として自宅生活でも困難無く動作を継続できること、すなわち自立を目指します。
また近年の医療施設やリハビリ施設においては、ADL訓練の質の向上を目的とした「介入一覧表」と「ADLフォロー表」を作成、さらに「ADL検討会」を実施することでチェック内容を話し合います。これらの試みを実施した結果、利用者の在院日数は短縮され、在宅復帰率の面でも効果が見られたことが判明しています。
さらば!ADLが低下した生活
人はADLが低下した状態が続くと、どうしても精神的に塞ぎこみがちになります。
専門家の指導によるADL訓練を続ければ、そうした精神状態は間違いなく回避できるはず。生活の質を向上させられるよう、しっかりとした日常生活を励行し、コミュニケーションを多くとるなどして積極的に対策を講じましょう。
そして身近にADLが低下しているのでは?という人がいたら、なるべく早期に予防対策を行うように勧めてください。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)