介護における横出しサービス・上乗せサービスの役割とは?
2017.8.16
介護保険制度のサービスは種類が多く、専門家でもない限りなかなか正確には掌握しきれないものでしょう。
市町村規模での介護保険で使われる用語で「横出しサービス」と「上乗せサービス」がありますが、一部では正しくない理解のされ方をしているようです。
その確認も含めて、2つのサービスについて説明しましょう。
「横出し」と「上乗せ」の定義
「横出しサービス」とは、通常の介護保険では給付対象外にあたるサービスを、市町村が独自の財源から負担して提供することです。例えば配食サービスやおむつの支給など、実生活のうえで無くてはならないサービスが多く含まれます。
一方「上乗せサービス」とは、通常の介護保険の利用限度額以上のサービスを、市町村が独自判断で財源から負担して提供することです。例えばサービスの利用時間や回数を増やすとか、訪問サービスの時間を延長するなど、居宅サービスや福祉用具購入などで支給限度額を超えた場合がこれに該当します。
文献にも正しくない記述がある?
「横出しサービス」「上乗せサービス」はいずれも市町村単位の地方自治体が独自に実施するサービスです。
ただし時には、有料老人ホームのオプションサービスを「横出しサービス」と呼んだり、介護付き有料老人ホームが最低基準以上の人員配置をした際にかかった人件費を「上乗せサービス」と呼んだりするような、意味合いでも用いられる事例もあって、一部で混乱を招きかねない状況になっています。
本来「横出しサービス」は、各市町村が独自にサービスの利用対象者や利用方法、利用料が決定しており、全額自己負担ではありません。また「上乗せサービス」も、支給限度基準額は地方自治体が独自に引き上げていて、その支給限度基準額までは1割(世帯所得によっては2割)負担となります。
関係文献やインターネット情報などで「横出しサービス」と「上乗せサービス」が解説される際、2つの意味が混在して使われるケースがあり、中にはどちらを指しているのかよく分からない記述もありますので十分注意が必要でしょう。
「横出し」「上乗せ」を有効利用する鶴居村のケース
最後に実際にどのようなサービスが行われているのか、具体例を見ていきましょう。少し古い情報ですが、2005年に「横出し」「上乗せ」の両サービスを実施していた北海道鶴居村についてご紹介します。
高齢者世帯が多い鶴居村では、在宅介護を受ける高齢者を対象に両サービスが行われており、2005年の広報によると、「在宅介護サービスで自己負担額の2分の1 を助成」「紙おむつなどの家族介護用品の購入費を助成(月額上限6,250円)」「介護する家族に月額10,000円支給」「介護する家族に村内の宿泊施設の宿泊料を助成(上限7,000円)」などのサービスが行われていました。
ただし、介護保険料の増大が指摘されたため、その後サービスを取りやめるなどの施策を行ったようです。
今後転居など検討することがある際は、自治体のホームページ等で各サービスが充実しているか確認してみてはいかがでしょうか?
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)