日照時間が長いと事故が減る? 介護施設に関する面白い研究
2017.8.14
介護施設において、事故は当然避けたいものです。どのようなときに事故が起こりやすいのか、多角的な研究がなされています。
今回はそれらの中から、気象や労働環境が事故の発生頻度へと与える影響について研究がなされたものご紹介します。
日照と事故の関係?
最初に紹介するのは、日本建築学会が2015年度に発表した、「介護付き有料老人ホームにおける事故と日照との関係」という研究論文です。
介護付き老人ホームで3年間に発生した転倒事故とその日照条件を調査し、二つの因果関係を分析しているのですが、この論文が導き出した検証結果は「日照時間が長いと事故が少ない」というものでした。前置きとして「事故と日照時間との関係は季節で異なる」と注釈が付いているとはいえ、大変興味深い検証です。
他にも、日照率については「事故は日照率20%以下で多く、80%以上で少ない」、日射量については「一日の積算日射量が15メガジュール毎平方メートルより小さいと多く、大きいと少ない」、雲量については「雲量が小さいと少なく、3~7で多く、8を超えると再び少なくなる」などの結果が公表され、結びとして「季節にあまり関係なく日照が少ないと事故が多い傾向」であるとしています。
職員の労働環境と事故の関係?
もう一つ、明 英(MING Ying)氏が2014年に発表した論文は、「事故の発生と労働環境の関係」がテーマです。 内容は、介護事故と介護人材不足および早期離職の関係を、山口県を中心とした施設からアンケートと聞き取り調査で情報を仕入れて、事故の原因や影響などを細かく分析したものです。
この調査によって、「資格を持っている職員や、家庭で介護経験がある人、多世代の環境で育ってきた人が多い施設は事故率が減る」「社外教育で職員の就労条件が厳しいと、事故につながる可能性が高まる」という2点が明らかになりました。
日照時間や気温の変化が事故の数とつながるという結論はちょっと驚きでした。介護職の人たちにとって明日から参考にできる知識かもしれませんね。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)