未認可の有料老人ホームがあるって本当?
2017.6.9
高齢者人口の急激な増加に伴って、高齢者福祉施設の増設は急務です。
その過程で必要となってくるのは、福祉施設としての「質」のチェック。粗製乱造する悪質な経営者をはびこらせないために、有料老人ホームの運営にはある基準に沿った認可制が敷かれていますが、未認可のホーム経営も実は存在しています。
こんなにある!オープンに向けての「高い壁」
有料老人ホームの設立にあたっては、都道府県知事への届け出と認可の取得が必要です。特別な資格などは不要で、誰でも設立することは可能ですが、事業者の事前審査と事業者に向けた指導があって、その趣旨を十分理解したうえで事業を開始しなければなりません。
東京都の有料老人ホームの設置条件は 東京都福祉保健局が公開しており、
- ・設置者条件
- ・立地条件
- ・規模及び構造設備条件
- ・職員の配置、研修及び衛生管理条件
- ・サービス条件
- ・利用料条件
- ・情報の開示条件
例えばサービス条件では、「栄養士による献立表を作成すること」といった食事に関する内容、「運動、娯楽等のレクリエーションを実施すること」といったレクに関する内容、「介護記録を作成し、保管する」といった介護サービスに関する内容などが書かれています。
また規模及び構造設備条件では、「入居者1人当たりの床面積は壁芯13平方メートル以上」といった居室に関する内容、必須の設備として「居室、一時介護室、食堂、浴室、便所、洗面設備、医務室、談話室、事務室、宿直室(宿直勤務がある場合)、洗濯室、汚物処理室、看護・介護職員室、機能訓練室、昇降機(2階以上の場合)、ナースコール等緊急呼出装置、スプリンクラー設備」などが書かれています。
要注意!有料老人ホームの9%は「未認可」
これだけ自治体が厳しくチェックの門を設けていますと、「未認可の施設なんてあるの?」という疑問を持たれるかもしれませんが、実は意外に多いのです。
厚生労働省が2017年3月に発表したデータによれば、2016年6月の段階で全国の有料老人ホームの届出施設数は1万1,739件なのに対し、未届施設数は1,207件と、全体の9.3%にも及びました。この調査は2009年から毎年続けられており、第1回調査では届出施設数4,864件に対し、未届施設数389件(7.4%)でした。以降、届出施設数は毎年1,000件ずつ増加していますが、未認可施設の数も比例して増え、ここ数年は9%前後を占めている状態です。
未認可の場合、前述した介護サービスに関する条件や設備に関する条件が満たされていない可能性があります。それは利用者やその家族からすると心配になります。
「前払金の保全措置」問題とは?
さらにもう一つ、施設の未届問題と同時に、前払金の保全措置についても問題のある施設が発見されました。
前払金の保全措置について説明しますと、そもそも大半の有料老人ホームでは入居条件として、家賃の前払い的な意味合いで「前払金の支払い」を定めています。従って、想定入所期間よりも前に退所する場合は、前払金の一部は返還しなければなりません。
しかし、いざ退所する時に「経営状況が悪くて払えません…」と言われてしまったらとても困ります。そこで前払金を受け取る場合は、銀行と連帯保証委託の契約をすることで利用者への返金を保証するなどの、保全措置を取ることが義務付けられています。
しかし今回の調査結果で、前払金を徴収している有料老人ホーム1,284件(2006年4月1日以降設置)のうち、77件(全体の6.0%)が保全措置を怠っていることが判明したのです。 ここ数年は数を減らしつつある現状であるとはいえ、高齢者の安心できる生活のためにも、ホーム経営者には「利用者ファースト」の意識をもって運営していただきたいものです。
※シニアのあんしん相談室では、「安全・安心な老人ホーム」をご案内しており、未認可の施設はご案内しておりません。施設検討の際はぜひご相談ください。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)