ショートステイとは|介護サービスの費用や短期入所の条件を解説
2021.8.18
ショートステイとは
「ショートステイ」とは、在宅介護を受ける要介護者が介護施設に短期間だけ入所する介護サービスのことで、1日単位で利用することができます。ショートステイは、介護保険が適用されるかどうかによって分類されます。
- ・介護保険適用のショートステイ
- ・介護保険適用外のショートステイ
「介護保険適用のショートステイ」と「介護保険適用外のショートステイ」では、費用、サービス、予約の取りやすさなどの面で違いがあります。また、介護保険適用外のショートステイは、要支援・要介護認定を受けている人以外の人でも利用することが可能です。
■介護保険適用のショートステイ
「介護保険適用のショートステイ」は、サービスも含め、要介護度ごとに決められた支給限度額の範囲内であれば、所得に応じて利用料金の1~3割の負担で利用できるものです。
介護保険適用のショートステイは、次の2つに分類できます。
- ・短期入所生活介護
- ・短期入所療養介護
「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」は、介護スタッフによる日常生活の支援などのサービスが提供されるといった点では同じです。
異なるのは、短期入所療養介護では、専門スタッフによる医療ケア、リハビリテーションといった医療系のサービスが提供されるといった点です。
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【短期入所生活介護】
「短期入所生活介護」では、介護スタッフによる食事や入浴などの日常生活の支援、リハビリテーション、レクリエーションなどのサービスを受けることができます。
短期入所生活介護を利用できるのは、以下の施設です。
- ・特別養護老人ホーム
- ・一部の有料老人ホーム
- ・ショートステイ専門施設
短期入所生活介護は、特別養護老人ホームや一部の有料老人ホームなどに併設された「併設型」と、ショートステイ専門施設の「単独型」に分けられます。
【短期入所療養介護】
「短期入所療養介護」では、介護スタッフによる日常生活の支援の他、医師や看護師による医療ケア、理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションを受けられます。短期入所療養介護は、痰の吸引やインスリン注射などの医療ケアを必要とする人の場合に向いています。
短期入所療養介護を利用できるのは、以下の施設です。
- ・介護老人保健施設
- ・介護療養型医療施設
- ・介護医療院
■介護保険適用外のショートステイ
「介護保険適用外のショートステイ」では、介護スタッフによる日常生活の支援、レクリエーションなどのサービスが受けられます。
介護保険適用外のショートステイは、利用料が全額自己負担となり、施設によって金額の差が大きいです。一方で、介護保険適用のショートステイでは2~3カ月前からの予約が必要なのに対し、介護保険適用外のショートステイでは、希望した日に予約が取りやすく、施設によってはサービスが充実しているといったメリットがあります。
介護保険適用外のショートステイを行っているのは、以下の施設です。
- ・有料老人ホーム
ショートステイの役割
ショートステイは、介護する側とされる側のいずれの事情においても、利用することができます。
介護する側の事情としては、主に以下のような理由が挙げられます。
- ・遠方で子どもや親族の結婚式がある
- ・出張に行くため、家を空けることがある
- ・夜勤のシフトの日に要介護者を見る人がいない
- ・体調を崩してしまい、介護ができない
- ・介護に疲れていて、リフレッシュしたい
- ・旅行に出かける
ショートステイは、冠婚葬祭などといった行事や仕事で介護ができないとき以外の場合や、介護から一時的に離れてリフレッシュする「レスパイトケア」の目的としても利用できます。
介護される側の事情としては、主に以下のような理由が挙げられます。
- ・病院から退院を迫られているが、退院後に入居する施設が決まっていない
- ・退院後の生活に不安があるため、回復するまで施設にいたい
- ・特別養護老人ホームの入居待ちの人が多く、入居までに時間がかかる
- ・将来的に介護施設への入居を考えているため、施設での暮らしに慣れておきたい
ショートステイは、長期間入所する施設が決まらないときの「つなぎ」として、利用されることもあります。
特に、介護保険適用のショートステイを希望する場合は、予約が取りづらいため、日程が分かった段階で早めにケアマネージャーに相談しましょう。
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ショートステイにかかる費用
介護保険適用外のショートステイは、施設によって料金体系が異なります。 介護保険適用のショートステイにかかる費用としては、主に以下のような点で違いがあります。
- ・ショートステイの種類
- ・施設の種類
- ・居室の種類
- ・要介護度
- ・サービス加算費用
- ・施設ごとに設定する食費・居住費
■ショートステイの利用料金
ショートステイの利用料金の目安としては、介護保険適用のショートステイは1日2500~6000円、介護保険適用外のショートステイは1日5000~2万円とされています。
介護保険適用のショートステイの利用料金の内訳は、以下の通りです。
- ・基本料金
- ・サービス加算費用
- ・介護保険適用外となる食費・居住費
ショートステイの種類の基本料金は、短期入所生活介護よりも短期入所療養介護の方が高めです。
それぞれの施設、居室の種類、要介護度などによって、料金が決まっています。
サービス加算費用は、基準よりも手厚い人員配置を行っている場合、送迎、リハビリテーションといった特別なサービスの提供を受けた際に加算される費用のことです。看護体制加算、生活相談員配置等加算、夜勤職員配置加算、個別機能訓練加算、送迎加算といった種類があります。
基本料金と特別サービス利用分の加算には介護保険が適用されるため、所得によって1~3割の金額が自己負担となります。
食費と居住費は、施設によって金額が異なり、介護保険適用外で全額自己負担となります。
ただし、世帯収入によっては、介護保険の負担限度額認定制度による軽減を受けることができます。
この他、歯ブラシやティッシュペーパーといった日用品の購入費用がかかることがあるなど、施設によって有料のレクリエーションを実施しています。
■ショートステイは医療費控除の対象になるのか
ショートステイの医療費控除の取り扱いは、短期入所生活介護と短期入所療養介護では異なります。
短期入所療養介護は、介護保険の自己負担分と、介護保険適用外となる食費と居住費も、医療費控除の対象となります。
短期入所生活介護は、医療系の居宅系サービスの訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護も利用している場合、医療控除の対象となります。ただし、医療費控除の対象となるのは、介護保険の自己負担分のみで、食費や居住費は対象外です。
医療費控除は、1~12月までの1年間の医療費の合計から10万円(総所得が200万円未満の場合は総所得の5%)を引いた額が、所得控除の対象となります。
生計を一にする家族の医療費は、合算することが可能です。医療費控除の適用を受けるためには、翌年の3月15日までに住所地を管轄する税務署で確定申告を行う必要があります。
ショートステイの利用条件
介護保険適用のショートステイは、要支援1・2、要介護1~5の認定を受けている人のみが利用できます。介護保険適用外のショートステイは、施設によって利用条件が異なり、自立の人でも利用できるところがあります。
■ショートステイの利用日数・期間
介護保険適用のショートステイは、最短1日からの利用が可能で、利用日数や期間には、制限が設けられています。
利用期間の制限には、2つの条件があります。
1つは、「連続しての利用は30日まで」という規定です。同月内で利用する場合も、月をまたぐ場合も、同様です。ただし、介護保険での利用は、他のサービスの利用も含め、要介護度ごとに決められた支給限度額の範囲内までとなります。
もう1つは、「累積の利用が介護認定期間の半数まで」という規定です。介護認定期間は、通常6カ月ですが、要介護認定の審査を行う介護認定審査会の判断により、変更されることもあります。介護認定期間が6カ月(≒180日)の場合、その期間でショートステイを利用できるのは、90日までとなります。
■ショートステイは長期利用も可能なのか
ショートステイは、短期間の利用を前提としたものであるため、基本的に生活の拠点とすることができません。
しかし、介護を担っていた家族が病気にかかったり、仕事で不在がちになったりするなど、さまざまな事情から長期的に利用する必要が発生することもあります。
実際のところ、ショートステイを長期的に利用しているケースも見られます。
【ショートステイのロング(ロングショートステイ)とは】
「ロングショートステイ」とは、ショートステイの長期的な利用のことをいいます。
ショートステイは、在宅介護を受ける要介護者のための介護サービスであるため、長期利用をする人が多いと、短期利用する人の妨げとなってしまいます。
そのため、本来はショートステイを生活の拠点とすることができないのです。やむを得ない理由がある場合に限り、ロングショートステイとして利用することができます。
【ロングショートステイの注意点】
ロングショートステイとして利用する際には、次のような注意点が挙げられます。
- ・やむを得ない事情により、利用期間の規定を超えて利用したい場合は、理由届出書を提出する
- ・利用期間を超えて利用する場合は、原則として全額自己負担となる
- ・利用中のショートステイから別のショートステイに入所しても、連続利用と見なされる
ロングショートステイでも、基本的に介護保険を適用して利用できるのは、規定の範囲内です。
利用期間を超えて利用する場合は、介護保険が適用されず、原則として全額自己負担となります。
ただし、やむを得ない事情がある場合は、ケアマネージャーを通じて理由届出書を提出することで、介護保険での利用が認められることがあります。
また、続けてショートステイを利用したいときに、利用中のショートステイから別のショートステイに入所しても、連続利用という扱いになります。連続利用としてカウントされないようにするためには、一度自宅に帰るか、他の介護サービスを利用する必要があります。
ショートステイを利用する方法
介護保険適用のショートステイを利用するには、「ケアプラン」に組み込む必要があり、ケアマネージャーを通じて申し込みなどを行います。手順としては、以下のような流れになります。
1.ケアマネージャーに相談
ショートステイを利用したいときは、ケアマネージャーに相談します。
利用目的や利用したい日などを伝えると、候補の施設を紹介されます。
ショートステイを受け入れている施設は、3カ月前から申し込みを受け付けているため、1~2カ月前にはすでに埋まってしまうところがほとんどです。早めにケアマネージャーに相談しましょう。急に利用したい事情ができた場合も、キャンセル等によって空きのある施設や、緊急対応を行っている施設の紹介を受けられることがあります。
2.施設の見学
運営方針やサービス内容には、施設によって違いがあるため、事前に見学しておくことが望ましいです。
3.施設
ケアマネージャーが施設に要介護者の状態を伝えるとともに空き状況を確認します。施設側の受け入れが可能であれば、申し込みを行います。
4.ケアプランの作成
ケアマネージャーがショートステイの利用を組み込んだケアプランを作成します。ショートステイの利用によって支給限度額を超えてしまう場合には、他に利用している介護サービスの調整が必要となります。
5.契約
ショートステイを利用する施設と契約します。
介護保険適用外のショートステイを利用する場合は、直接施設に連絡を入れ、見学や申し込みを行います。
■ショートステイ施設選びのポイント
ショートステイ施設は、運営状況、サービス内容、利用者の要介護度などに違いがあります。全ての希望に合った施設を探すのは難しいため、できるだけ利用前に施設を見学するようにしましょう。
ショートステイ施設の見学のポイント |
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介護保険適用のショートステイの場合は、ケアマネージャーから紹介を受けることができますが、介護保険適用外のショートステイの場合は、基本的に家族などが探すこととなります。
■ショートステイ利用時に必要な持ち物
ショートステイを利用する際には、身の回りの物を持っていきます。施設によって違いがありますが、一般的に必要な持ち物としては、以下のようなものが挙げられます。
必要な持ち物 |
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紙オムツは、施設側で用意していることが多いです。
高価な宝飾品や貴重品の持ち込みは、禁止されているケースがあるため、注意が必要です。
持ち物の取り間違い、紛失を防ぐためには、持っていくもの全てに名前を記入しておく必要があります。また、持っていく前に写真を撮って残しておくと、何を持っていったのかを明確にすることができます。
まとめ
ショートステイは、介護者や要介護者のさまざまな事情から、自宅での介護が難しいときに利用できる介護サービスです。在宅介護を長期にわたって続けていくためには、ショートステイなどの介護サービスを上手に利用するなど、無理のない体制を取っていくことが大切です。介護保険適用のショートステイの利用が難しいときには、介護保険適用外のサービスを利用することも検討してみましょう。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)