パワハラやアルハラだけじゃない!介護におけるケアハラとは?
2017.4.19
1980年代後半に「セクシャルハラスメント」という言葉が新語・流行語大賞の金賞を受賞して以降、職場における「ハラスメント(嫌がらせ)」の概念は定着しました。
現在ハラスメントの種類は30以上といわれ、中にはパワハラやアルハラなどよく耳にする言葉もあります。
では、ケアハラというのをご存知でしょうか?
ケアハラとパワハラ・アルハラの相違点
数あるハラスメント行為の中でも、社会問題になる機会が多く悩んでいる人も多いハラスメントといえば、パワハラとアルハラでしょう。
パワハラ(パワーハラスメント)は一般的に、同じ職場内で働く上司や先輩社員が部下や後輩社員に対して、地位の優位性を利用していじめ行為や嫌がらせ行為を行うことを指します。関係性次第では、同僚同士、あるいは部下から上司に対してのパワハラも存在します。
一方のアルハラ(アルコールハラスメント)は、お酒を飲む場所で発生する飲酒関連の嫌がらせや迷惑行為のことを指します。上司や先輩が地位の優位性を利用してイッキ飲みを強要したり、意図的に酔いつぶしたり、トラブルを起こしたりするものです。
これらに対してケアハラ(介護ハラスメント)は、家庭に要介護状態の家族がいる社員が、その介護を行うために休暇をとったり残業を避けたりする際、上司や同僚から嫌がらせ行為を受けることを指します。場合によっては、本人の意思に反して人事異動されるなど不当な扱いを受ける例もあります。
同じハラスメント行為でも本質的にパワハラ・アルハラとはだいぶ違っていて、意味合いとしては、育児休暇をとる社員や妊娠中の女性社員などが受けるハラスメント(イクハラ・マタハラ)に近いと考えてよいでしょう。
法改正で更なるケアハラが待っている?
2017年1月から介護休業法が改正され、介護休業する方にとても配慮された制度となったことを、以前当欄でも紹介しました。詳しくは過去記事「介護休暇をとりやすくする 介護休業制度の改正点をおさえよう!」を参照してください。
具体的には、親が病気で入院して要介護状態になった場合、従来はまとめて1回(93日まで)の介護休暇しか取得できなかったのが、改正によって例えば31日ずつ3回に分割して取得することも可能になったわけです。
この介護休業制度の改正は、今まで以上に介護休暇が取りやすくなり、要介護者を家族に持つ社員としてみれば助かることのように思えます。しかし逆に言うならば、その分周囲の社員からは「忙しいのにたびたび休まれると困るんだが…」などと更なる妬みを買いやすくなり、より不合理なハラスメント行為を生み出す可能性にも繋がり得るのです。家族の介護で取得する休暇なのに、これでは社員は精神的にまいってしまうことでしょう。
求められるのは個々の意識改革
こうしたケアハラ問題の根底にあるのは、イクハラ・マタハラ同様、日本に介護休業の概念と大切さが未だに理解されていないという問題です。
厚生労働省も事業主に対して、ケアハラを防ぐために必要な措置を一覧でまとめており、社会全体で共有すべき意識として促進を図っています。とはいえ、こればかりは個々が意識を改革していかない限り、今後職場と家族の本質的な両立は困難かもしれません。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)