災害が起きた時に利用できる! 福祉避難所の状況と課題
2017.3.10
地震のような自然災害が起きた際、お年寄りが環境の整備が不十分な避難所で長期間生活をしなければならないケースが発生します。そしてその避難生活の影響で健康を害し、生活再建がスムーズにいかなくなるという問題も起きています。
今回は、避難時に特別なケアを要する高齢者のための福祉避難所について考えましょう。
福祉避難所の定義って?
2011年3月に発生した東日本大震災では、非常に多くの高齢者や障害者が犠牲となり、その後の避難所生活でも整備の不十分さが災いして健康を害したり、その後の生活の立ち直りに支障をきたしたりするケースが報告されました。
この事例を教訓として踏まえ、従来の福祉避難所のガイドラインを改定する形で2013年8月に作成されたのが「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」です。厚生労働省では、福祉避難所の定義を以下のように定めています。
福祉避難所の利用対象者は、高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者など、通常の避難所生活において特別な配慮を必要とする人たち、およびその家族が原則対象となっています。
災害時に機能しない?福祉避難所の課題
2014年10月現在の調べでは、福祉避難所を指定している自治体は全国に791地域あります。
施設分類別では、内閣府アンケートに回答のあった1,251施設中、最も多かったのが「高齢者施設」で769施設、以下「障碍者施設」223施設、「その他社会福祉施設」86施設…と続きました。
一方、都道府県別の設置数を見ると、日本全国にある福祉避難所の総数は11,254箇所(2012年9月時点)。ちなみに前年2011年3月の時点では7,546箇所でしたから(※)、東日本大震災を契機に1年半で約1.5倍も増えた計算になります。
※福祉避難所指定施設別内訳(平成24年9月末時点)資料がダウンロードされます都道府県別の設置状況を確認すると、最も多いのが神奈川県で1,050箇所。次いで東京が1,036箇所と、関東2都県が飛び抜けています。以下、静岡県586箇所、愛知県549箇所、兵庫県523箇所、北海道と埼玉県が同数の453箇所…と続きます。
数字だけ見れば福祉避難所の整備状況はかなり進んでいるように感じます。しかし実地的な活用度合はどうかといえば、まだまだ課題が多いのは否めません。
事実、2016年4月に発生した熊本地震では、熊本市内で4万人近い避難者が出たにも関わらず、受け入れ先として予定していた市内176箇所の福祉避難所のうち本震後に開設できたのが34施設、利用したのはわずか104人でした。
これは市側が「問い合せが殺到して現場が混乱するのでは」との判断から市民に開設を告知しなかったためです。また施設側も、対応できる人数が足りないとして開設を断ったケースもありました。こうした不備が、実際の災害時にリアルな課題として浮き彫りになったわけです。
「もしも」に備えて…しっかり場所の確認を!
災害はいつどんなタイミングで起こるのかわかりません。
現在介護生活をしている人は、あらかじめ自分が住んでいる地域の福祉避難所はどこにあるのか、しっかり場所を確認しておく必要があるでしょう。万が一の事態で慌てないためにも、しっかり備えておくことが重要なのです。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)