【廃用症候群】日常生活が不活発になると要介護状態に繋がります
2017.3.8
この1月に行われた2016年度の介護福祉士国家試験では、受験資格に「450時間の研修」が加わったことも手伝い、受験者数が前年度の約半分に減りました。さらなる介護人材不足が今から懸念されます。
したがって介護に頼らず、できるだけ長い間健康でいたいものです。今回は、介護状態を招きやすい「寝たきり」につながる要因の一つ、廃用症候群(はいようしょうこうぐん)について考えます。
気がつけば要介護?廃用症候群の恐ろしさ
廃用症候群とは、長く体を動かさないでいることで次第に心身機能が低下し、いつの間にかベッドから起き上がれなくなり、そして歩けなくなり、ついには要介護状態に陥ってしまう症状のことです。
本人も知らない間に症状が進行する、この廃用症候群とは一体どのような理由で起こるものなのでしょう?
一つ目の要因は生活が不活発になることです。高齢者は地震などの災害時に避難所で暮らさなければならない場合や怪我などで絶対安静状態になると、生活の活動範囲が狭まり、筋肉や関節機能が衰えてしまいます。 次に高齢者の偏った食事による栄養摂取不足も重大な要因です。廃用症候群の高齢者の9割は低栄養といわれるほど、栄養状態が良くありません。
これら2つの要因に、長期の寝たきり状態によって起こる精神状態の悪化も影響に加わります。これらが高齢者を廃用症候群へと導くわけです。
廃用症候群の症状には、筋萎縮、関節拘縮、骨萎縮などの他に、心機能低下、起立性低血圧、誤嚥性肺炎、血栓塞栓症、うつ状態などがあります。サルコペニアと似ていますが、廃用症候群は低栄養を含めた広い意味での体の衰えを指し、それが筋肉萎縮に進展するのがサルコペニアと考えられていて、つまりサルコペニアは廃用症候群の症状のより進行したものといえます。
なお、サルコペニアについては「寝たきりからの要介護を招く!サルコペニアの正しい予防方法とは?」で詳しく紹介しています。ベスト改善策は「活発な生活」
いわば「生活不活発病」と言い換えることも可能な廃用症候群ですが、予防策はあるのでしょうか?また、どのような改善策を図ればよいのでしょうか?
まず予防策としては、毎日少しずつ続けられる運動が有効です。ラジオ体操や散歩のような運動をしていきましょう。その際に、一人ではなくグループで運動をすれば、会話もできますので、精神面での健康を保つのにも効果的です。
運動習慣を身につける中で、目標を持って生活を送ることができると更に良いです。活動的で目標のある、生き生きとした生活を送ることで、日常が変化していきます。
生活行為そのものの向上とは「量」でなく「質」の向上であるという認識を持つとよいでしょう。
同時に、安易に車いすなど補助器具に頼らない生活を心掛けるというのも必要です。これも生活行為の「質」の向上の一つです。
不活発な環境なら…生活の「質」の見直しを!
不活発な生活には、廃用症候群の落とし穴が待ち構えています。廃用症候群の予防のためにも、できる限り体を動かす生活をして、自分自身で心身の健康を保つことを意識しなければなりません。
ご家族で不活発な生活を送っている方がいる場合は、一緒に生活活動の「質」を見直してみましょう。家族でサポートすることが、介護なしで元気に暮らす生活に繋がるでしょう。
参考:生活機能低下予防マニュアル 参考:高齢者の廃用症候群の機能予後と、リハビリテーション栄養管理 参考:東日本大震災で被災された方々において留意すべき廃用症候群記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)