「入居一時金VS月払い」いったいどっちがお得なの?将来を考えた施設の選び方
2017.2.16
老人ホームの費用の支払い方法は一般的な賃貸マンションとは異なり、入居一時金払い、月払いなどいくつかのプランがあります。損をしないために、どのような仕組みになっているかを理解することが大切です。
いったい何がお得なのか、また将来かかる費用を見据えてどのような施設選びが大切なのかを紹介します。
有料老人ホーム、入居一時金方式と月払い方式、お得なのはどっち?
有料老人ホームの費用の仕組みは?
有料老人ホームに入居するにあたり、費用のことが気になる人も多いことでしょう。 老人ホームの費用の支払い方は、一般的な賃貸マンションや賃貸アパートとは異なるため、戸惑うこともあるのでは?まずは、有料老人ホームの費用の仕組みについて説明をします。
支払い方法には大きく「入居一時金方式」と「月払い方式」と「併用方式」があります。
- ・ 入居一時金は、入居時に入居中の家賃を全額払ってしまう方式。
- ・ 月払い方式は、毎月の家賃が徴収される方式。これは一般的な賃貸マンションと同じです。
- ・ 併用方式は、入居一時金方式と月払い方式の両方を併用して家賃を支払う方式。
入居一時金方式は入居時にまとまった費用が必要ですが、家賃がかからない分、毎月の費用を抑えることができます。逆に月払い方式は、入居時に入居一時金のようにまとまった費用は必要ありませんが、毎月の費用は入居一時金方式よりも高くなります。
入居一時金方式と月額払いの損益分岐点はどこ?
なんといっても、気になるのは、「入居一時金方式と月払い方式はどちらが得か」という問題…
結論からお伝えすると、居住年数が長ければ長いほど、入居一時金方式の方が得です。
入居一時金方式は、入居時に家賃を全額(または一部)支払います。施設が想定している居住年数をこえたとしても追加で費用は発生しないケースが多いため、支払い総額を考えると得になるのです。
一方、月払い方式は最初にまとまった費用が必要ではないメリットはあります。しかし、居住年数が長くなるほど、入居一時金方式と比較すると割高になってしまいます。
1つ例をあげて考えてみましょう。下記のような料金プランのある施設があったとします。
- 【入居一時金プラン】
- 入居一時金:480万円
- 家賃相当額:0円
- 管理費:12万円
- 食費:6万円
- 【月払いプラン】
- 入居一時金:0円
- 家賃相当額:8万円
- 管理費:12万円
- 食費:6万円
この2つのプランを比較したときの支払い総額を計算してみましょう。
在宅復帰を目指した施設の選び方とは?
在宅復帰を目指した施設の選び方として、実際にある施設を例にあげて紹介をしていきます。
埼玉県にある「まどか川口芝」という施設は、退去率が低くありません。
一般的に、要介護度が上がったり、サービスへの不満を持ったりするなどの理由から退去にいたるケースが多いとされています。
そうなると、「退去率が高いって大丈夫なの?」と疑問を持つ方も多いのではないかと思いますが、実はまどか川口芝の場合、在宅復帰による退去が少なくありません。
では、まどか川口芝とはどのような施設なのでしょうか。
まどか川口芝は、特に認知症予防や認知症ケアに力を入れており、2016年「リビング・オブ・ザ・イヤー」の大賞を受賞しました。
「リビング・オブ・ザ・イヤー」とは、高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)が主催する、高齢者が安全に尊厳ある暮らしができ、スマートハウス化も含めた生活空間・各種サービスで最も優れた高齢者住宅に贈られる賞です。日本国内で発表され、入居が開始された高齢者住宅(有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅、グループホーム・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・ケアハウス・分譲型ケア付きマンション)の中から選出されています。
そんなまどか川口芝の入居者の方々はどのような生活を送っているのでしょうか。大きく3つの特徴を紹介します。
・自分らしい生活
料理が得意、庭の手入れをしたい、などこれまでの生活スタイルや好きなこと、こだわりなど入居者様のことを深く知ることからはじめています。
自宅と同じ日常を過ごすためには、ご自宅での生活で行っていたことを同じようにホームの中でもできることが大切です。「入居者様・ご利用者様」とひとくくりにしてフォーマットのように誰もが同じ生活をする中では、きっと「自分らしさ」というものは損なわれていくでしょう。 一人ひとり、好きなこともこだわりも違うことが理解され、サポートをしてくれる環境であれば、より生き生きと「自分らしい生活」が送れるのではないでしょうか。
・役割のある生活
中庭や花壇のお手入れ、料理の買出しや調理・片付け、図書館の本の整理など、ご希望の方には役割のある生活を通して「誰かの役に立ちたい」という思いをサポートしています。
食事の調理も衣類の洗濯もすべてスタッフがやってくれて、ご自宅での生活で「役割」としていたことをやらないようになる施設も少なくありません。そのような施設は、食事や掃除・洗濯など毎日の役割が負担となってしまっていた人にとってはとても良い環境といえますが、これらにやりがいを感じていた人にとっては、ものたりない毎日になってしまうかもしれません。役割を持つことがより充実した生活を送ることにつながっている人も少なくないのではないでしょうか。
・コミュニティがある生活
「好きなことが同じ人がもう一人いればそこはもうサークル」ということで、園芸、手芸、料理、囲碁、将棋など、様々なサークルがあります。また、町内会に参加したり地域の行事に参加したりと、ホームの中だけでなく地域との関わりも持っているのです。
老人ホームの生活は集団生活。制限されることもありますが、サークル活動や地域行事への参加が活発な施設であれば、逆にご自宅よりも多くの方と触れ合う機会が増えることになります。ホームの中でご一緒に生活されている方やホームのスタッフはもちろんのこと、地域の方との関わりが増えることで、刺激も受ける機会も増えます。好きなことを誰かと一緒に行うことで生活の張りもより一層出てくるのではないでしょうか。
1F 庭
中庭にある、花壇・畑にてお花を植えたり、季節の野菜を作ったりしています。風が通り抜ける気持ちのよい庭で、お花やお野菜の手入れをしたり、日光浴を楽しんでいただくことができます。
居室イメージ
女性のご入居者様をイメージしたモデルルーム。ご自宅で愛用されていた家具などをご使用していただくことも可能です。
1F ライブラリー
常時300冊の図書をご用意しております。本の入れ替えを行ない、リクエストもおうかがいしております。近隣の方との交流の場としてもお使いいただけます。
施設に入ると、ご自宅で生活していたときには自分でやらなければいけなかったことも、施設のスタッフがやってくれるようになります。できないことが増えていく中で、手助けをしてもらえる安心感がある反面、それまで自分でやっていたことも施設のスタッフの方々にお任せしてしまうこともあるでしょう。
さらに、個室があるといっても老人ホームでの暮らしは集団生活。大なり小なり規則があり、ご自宅よりは制限された生活になります。
そんな老人ホームの生活の中で、「役割を持つ」「自分らしさを尊重してくれる」「コミュニティがある」ことは、生き生きと充実した生活を送るためには大切な要素となるでしょう。
これらがそろった生活が、入居した方の生活をよりいきいきとさせ、入居する前よりもアクティブになり、まどか川口芝のように在宅復帰をする人が増えるような流れにつながっているのかもしれません。
「入居時まとまった費用は用意できない」「今は誰かの介護や見守りが必要だけどできることなら在宅に戻って生活をしたい」という人は、まどか川口芝のように、「自分らしさ」を大事にしてくれる施設かどうかという観点で、在宅復帰を視野にいれた施設選びをしてみてはいかがでしょうか。
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)