東京都で導入が検討されている混合介護 普通の介護と何が違う?
2016.12.9
小池百合子東京都知事が導入する意向を発表して、一躍注目を集めた「混合介護」。
そもそも「混合介護」とは一体どういった仕組みで、なぜこれまで導入されていなかったのか、あなたはご存知でしたか?そして導入された場合、介護事情は今後どのように変化してゆくのか?いろいろ想像しながら、是非一緒に学びましょう!
介護保険と適用外サービスのミックス案
近年、混合介護の実施とその是非を問う議論が新聞を賑わす機会が増えています。 混合介護とは、一言でいえば介護保険と保険適用外の介護サービスが同時に利用できる施策のこと。これまでは同時に利用は解禁されませんでしたが、2016年5月の公正取引委員会でテーマに上り注目されました。
保険適用外サービスの種類は以前当欄でも紹介しました(介護保険の適用範囲のお勉強 これは適用内あれは適用外?)。介護保険適用外のサービス(例えば、要介護者と同居している家族の部屋の掃除、墓参りの付き添いなど)と、介護保険のサービスをセットで提供できるようになります。
混合介護のメリットは?デメリットは?
では、混合介護が解禁された場合、どのようなメリットがあるのでしょう?
第一に挙げられるのが「サービスの拡大とクオリティの改善につながる」という点。事業者間の競争意識によってサービスの向上が図られるのは、近い将来増大してゆく「介護マーケット」にとって意義深いことです。
第二が「たとえ高価でも良質なサービスが選択されれば、経済的成長につながる」という点。またこれにより、事業者の経営が上向くことで、介護職の賃金アップに繋がることも考えられます。介護職の処遇改善は現行ではなかなか改善されませんが、その突破口になりえます。
一方、デメリットはどうでしょう?
よく言われるのが、自由化によって「値段が高止まりしてしまい、低所得者層がサービスを利用できないのでは?」という指摘です。ただ、小規模事業者でも容易に参入できる在宅介護の分野で、割安サービスの提供が無くなることはまず考えられません。
また「判断力の乏しい高齢者(認知症など)への対応は?」という指摘もあります。これは、事業者の情報開示やケアマネジャーの報告義務を課すなど、利用者保護に努める必要があるでしょう。
その他、「高額サービスを売りつける悪徳業者の出現」「サービスの質の差による利用者間の格差拡大」などデメリットの指摘はありますが、その多くは今の段階で既に存在するものばかりで、混合介護が発生させる問題ではありません。今回の改革により、長期的視野で改善を図ってゆくのが得策でしょう。
早ければ2016年度中にもスタート
国家戦略特区区域である東京都では、今年11月に小池百合子都知事が「東京都が全国に先駆けて、混合介護のモデルを示す準備をする」との考えを表明し、政府もこの提案を検討に入りました。早ければ年度内にも混合介護がスタートすることになります。
近い将来、自由化によって事業者間に良い競争力が生まれ、良質な介護サービスと良い事業所が残ってゆくことに期待したいものです。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)