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高齢者講習制度とは?平成29年3月の施行で今までよりも複雑に?

2016.11.21

平成29年3月12日から高齢者講習の流れや内容が変わることをご存知ですか? 記憶力や判断力を検査する講習予備検査(認知機能検査)の結果を利用することで、現行の制度よりもそれぞれの人の状況にあった講習が受けられる流れとなっているのです。

しかしながら、今回の改正で高齢者講習の流れはとても複雑になり、免許更新時以外にも講習予備検査を受ける機会も新たに設けられます。「え、そんな制度あったの?」となる前に、新しい高齢者講習制度を理解しておきましょう。

高齢者講習とは?

高齢者講習とは、運転免許の更新期間が満了する日における年齢が70歳以上になる方が対象の講習のことです。高齢ドライバーの多くは、長年にわたって自動車を運転してきたベテラン。しかし、年齢を重ねるとともに、動体視力や視野、反射神経、体力、集中力、注意力などさまざまな身体的機能が低下してしまいます。身体の変化を自覚せずに、若いころと同じ感覚で運転を続けていると、意識と行動にズレが生じて、交通事故につながる可能性も高くなってしまうのです。

高齢者講習では、このような身体的な機能低下が運転に影響を及ぼす可能性があることを理解してもらったり、視力や運転操作に問題がないかを診断したりすることで、その後の安全運転に活かしてもらうためのものです。

75歳以上の方は、高齢者講習に加え、記憶力や判断力の状態を検査するための「講習予備検査(認知機能検査)」を事前に受ける必要があります。

対象者 運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が70歳以上の方
受講期間 免許証の更新期間が満了する日の6ヵ月前から更新期間満了日まで
※更新期間満了日は誕生日の1ヶ月後なので、誕生日の5ヶ月前~1ヶ月後まで。
受講方法 予約制。高齢者講習のお知らせのはがきに記載されている指定の自動車教習所などに直接連絡をして予約を行う。
内容
  • ・座学:ビデオなどで交通ルールを再確認する。
  • ・適正検査:ドライブシミュレーターなどを利用して、動体視力や夜間視力を測定する。
  • ・運転実技:教習車を運転して、運転技術を確認する。
  • ・討議(ディスカッション):運転実技の反省点を検討する。
※内容は年齢や講習予備検査(認知機能検査)の結果により異なる。
※上記内容は2017年3月以前の高齢者講習制度
かかる手数料(金額)
  • 75歳未満:5,600円(講習手数料)
  • 75歳以上:5,850円(検査手数料650円+講習手数料5,200円)
かかる時間 計3時間(座学30分+適性検査60分+運転実技60分+討議30分)
※上記内容は2017年3月以前の高齢者講習制度

講習予備検査(認知機能検査)は何をする?

講習予備検査(認知機能検査)は、記憶力や判断力を測定する検査です。この検査により、自動車を運転し続けても問題ないかどうかを判断します。

検査内容は、「時間の見当識(けんとうしき)」「手がかり再生」「時計描画」の3つです。

1.時間の見当識

「今年は何年ですか?」「今年は何月ですか?」など、検査を受けたときの年、月、曜日、時間を聞かれて答える検査です。

見当識(けんとうしき)とは、現在の年月や時間、どこにいるかなど、自分が置かれている状況の認識のことです。認知症の初期症状の1つとして、「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」というものがあります。見当識障害があると、自分が置かれている状況が分からずに、年月日や曜日、時間などを正確に認識できません。「時間の見当識」の検査では、見当識障害が起きていないかを図るための検査なのです。

2.手がかり再生

計16枚のイラストを見せられ、検査員の説明を受けながら記憶をします。 記憶したイラストを、まずはヒントなし、その後ヒントありの状態で思い出し、回答をします。

手がかり再生の検査では、記憶力の状態を確認しています。認知症の症状として、最も広く知られているのが「物忘れ」でしょう。「物忘れ」と一言でいっても、老化によるものと認知症によるもので症状は異なります。
老化による物忘れの場合、思い出すことは苦手になっても、ヒントをもらえば「ああそうだった」と思い出すことはできます。しかし、認知症による物忘れの場合、思い出すことに加えてヒントをもらって思い出すことも困難になってしまうのです。手がかり再生の検査で、ヒントなしの後にヒントありで検査を行うのは、認知症による物忘れかどうかを判断する材料になるからなのです。

3.時計描画

検査員が時刻をいい、その時刻の時計の絵(アナログ時計)を書きます。

時計は、一般的に誰でも理解できるものであり個人の教養にも左右されません。時間もかからず拒否されにくいということで、認知症の傾向があるかどうか、また認知症の進行具合を判断するテストとして講習予備検査だけでなく広く使われています。
時計描画の検査では、時計を正確に描けているかどうかで認知症の可能性があるかを判断しています。円がいびつ、数字が円の中におさまっていない、数字が足りない、時計の針が正しく描けないなどの傾向が見られたときには、認知症の可能性があると判断されます。


講習予備検査(認知機能検査)の結果は、「記憶力・判断力が低くなっている方(第1分類)」「記憶力・判断力が少し低くなっている方(第2分類)」「記憶力・判断力に心配のない方(第3分類)」の3つに分類されます。2017年3月12日以降は、この検査結果に従って高齢者講習の内容が異なったり、場合によっては適性検査が必要になります。
なお、講習予備検査(認知機能検査)は、記憶力や判断力などを検査する簡易的な方法であり、認知症かどうかを判断するものではありません。そのため、「記憶力・判断力が低くなっている方(第1分類)」という結果が出たからといって、必ずしも認知症というわけではなく、さらに詳しい検査や診察が必要になります。

2017年3月施行の新高齢者講習制度は今までとどう違う?

平成29年(2017年)3月12日から、高齢運転者に関する交通安全対策の規程が整備され、新しい高齢者講習制度が適用となります(ここでは「新高齢者講習制度」と呼びます)。現行の高齢者講習制度とは内容や流れが大きく異なり、複雑化しています。

新高齢者講習制度では、75歳未満の方は高齢者講習の合理化、75歳以上の方は講習予備検査(認知機能検査)の結果によって高度化または合理化が図られる内容となります。高齢ドライバーの認知機能の状態によって内容がそれぞれで異なるものになるのです。
新高齢者講習制度では、「免許更新時の流れの変更」「免許更新時以外の臨時認知機能検査及び臨時高齢者講習制度の新設」の大きく2つが現行の制度から変更になっています。

‐免許更新時

新高齢者講習制度が施行された後の免許更新時の流れは下記の図のようになっています。

新高齢者講習制度が施行された後の免許更新時の流れ 警視庁「高齢運転者に関する交通安全対策の規定の整備について(平成29年3月12日施行)」

75歳未満の方は、合理化講習(2時間講習)の後、免許更新となります。

75歳以上の方は、事前の講習予備検査(認知機能検査)の結果によって、高齢者講習の内容が変わります。講習予備検査(認知機能検査)の結果は、「第1分類:記憶力・判断力が低くなっている方」「第2分類:記憶力・判断力が少し低くなっている方」「第3分類:記憶力・判断力に心配のない方」の3つに分類されます。

・第1分類(記憶力・判断力が低くなっている方)

臨時適正検査(都道府県公安委員会が指定する専門医またはかかりつけ医への受診)を行うか、医師の診断書の提出が必要になります。認知症と判断された場合は、免許停止または免許の取り消しに、認知症と判断されなかった場合は、「高度化講習(3時間講習)」を受けることになります。

・第2分類の方(記憶力・判断力が少し低くなっている方)

高度化講習(3時間講習)を受けます。

・第3分類の方(記憶力・判断力に心配のない方)

合理化講習(2時間講習)を受けます。

75歳未満の方、75歳以上の第1~第3分類の方で、現行の制度と新制度でどのように違いが出るかを下記の表で表しています。
記憶力や判断力が低下していない人では、時間は短縮され、金額も安くなります。対して、記憶力や判断力が低下傾向にある人は現行の制度よりも時間は伸び、金額も高くなるのです。加えて、免許停止や免許取り消しになる可能性も新制度では大いにありえます。

75歳以上 75歳未満
第1分類 第2分類 第3分類
時間 現行制度 2.5時間 3時間
新制度 3時間(高度化講習)
※認知症でない場合
3時間(高度化講習) 2時間(合理化講習) 2時間(合理化講習)
金額 現行制度 5,850円(検査手数料650円+講習手数料5,200円) 5,600円
新制度 8,200円(650円+7,550円)
※認知症でない場合
5,300円
(650円+4,650円)
4,650円


‐免許更新時以外・臨時認知機能検査及び臨時高齢者講習制度の新設

免許更新時以外にも、臨時認知機能検査制度及び臨時高齢者講習制度が新設されました。対象者は75歳以上の運転免許を持った人です。
免許更新時以外にこの制度が適用されるのは、「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為(18基準行為)」をしたときです。



【臨時認知機能検査の対象となる違反行為(18基準行為)】
・信号無視(例:赤信号を無視した場合)
・通行禁止違反(例:通行が禁止されている道路を通行した場合)
・通行区分違反(例:歩道を通行した場合、逆走をした場合)
・横断等禁止違反(例:転回が禁止されている道路で転回をした場合)
・進路変更禁止違反(例:黄の線で区画されている車道において、黄の線を越えて進路を変更した場合)
・しゃ断踏切立入り等(例:踏切の遮断機が閉じている間に踏切内に進入した場合)
・交差点右左折方法違反(例:徐行せずに左折した場合)
・指定通行区分違反(例:直進レーンを通行しているにもかかわらず、交差点で右折した場合)
・環状交差点左折等方法違反(例:徐行をせずに環状交差点で左折した場合)
・優先道路通行車妨害等(例:交差道路が優先道路であるのにもかかわらず、優先道路を通行中の車両の進行を妨害した場合)
・交差点優先車妨害(例:対向して交差点を直進する車両があるのにもかかわらず、それを妨害して交差点を右折した場合)
・環状交差点通行車妨害等(例:環状交差点内を通行する他の車両の進行を妨害した場合)
・横断歩道等における横断歩行者等妨害等(例:歩行者が横断歩道を通行しているにもかかわらず、一時停止することなく横断歩道を通行した場合)
・横断歩道のない交差点における横断歩行者等妨害等(例:横断歩道のない交差点を歩行者が通行しているにもかかわらず、交差点に進入して、歩行者を妨害した場合)
・徐行場所違反 (例:徐行すべき場所で徐行しなかった場合)
・指定場所一時不停止等 (例:一時停止をせずに交差点に進入した場合)
・合図不履行 (例:右折をするときに合図を出さなかった場合)
・安全運転義務違反 (例:ハンドル操作を誤った場合、必要な注意をすることなく漫然と運転した場合)

高齢運転者に関する交通安全対策の規定の整備について(平成29年3月12日施行)

臨時機能検査や臨時高齢者講習の流れは下記の図のようになっています。

臨時機能検査や臨時高齢者講習の流れ 警視庁「高齢運転者に関する交通安全対策の規定の整備について(平成29年3月12日施行)」

免許更新時と同様、認知機能検査の結果に基づいて、臨時高齢者講習を受けたり、臨時適性検査や医師の診断書提出が必要になります。場合によっては免許停止や免許取消しの場合もあります。 臨時機能検査や臨時高齢者講習を受けない場合、医師の診断書を提出しない場合には、運転免許の停止または運転免許が取り消しになります。



高齢化を背景に、高齢ドライバーによる交通事故は年々増加傾向にあります。事故を起こした後に、実は認知症であることが判明するというケースも中にはあります。新たな高齢者講習制度では、現行の制度と比べてそれぞれの人の身体状況に合った講習が受けられるようになります。
記憶力や判断力の低下が原因で起こる痛ましい交通事故を未然に防止するために、講習予備検査(認知機能検査)で自分の状況をきちんと把握し、安全に運転を行うようにしましょう。

■記事作成・監修 シニアのあんしん相談室
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)
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