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10年前の約2倍!高齢運転手の事故を未然に防ぐ運転免許証自主返納制度とは?

2016.11.17

高齢化を背景に、高齢ドライバーの事故が相次いで起こっています。65歳以上の高齢ドライバーが関与する事故の割合は年々増加傾向にあり、平成26年は総件数の20.4%に及んでいます。
事故発生防止の1つの選択肢として、「運転免許証自主返納制度」があります。運転免許証自主返納制度とは何なのか、また受けられる特典を紹介します。

高齢になると身体の機能は徐々に低下していくもの。今一度、ご自身やご家族の身体の状態を考慮し、運転し続けても問題ないかを再確認してみましょう。

高齢ドライバーによる事故の現状

2016年10月28日神奈川県横浜市で87歳男性が運転した車が通学中の小学生の列に突っ込み、小学1年生の男の子が死亡。
2016年11月12日東京都立川市で83歳女性が運転した車が暴走し、男女2名が死亡。
2016年11月13日東京都小金井市で82歳男性が運転した車が交差点で女性をはねて死亡。

高齢化を背景に、このような高齢ドライバーの事故が相次いでいます。警視庁によると、都内における交通事故の総件数は年々減少している傾向にあります。しかし、65歳以上の高齢者ドライバーが関与する事故の割合は年々増加傾向にあり、平成26年は総件数の20.4%に及んでいます。

警視庁「防ごう!高齢者の交通事故!」より事故件数グラフ 警視庁「防ごう!高齢者の交通事故!」

では、高齢者ドライバーが事故を起こしてしまう原因は何なのでしょうか。

原付以上運転中の高齢者による死亡事故件数を法令違反別にみると、アクセルとブレーキの踏み間違いやハンドル操作の誤りなどの「運転操作不適」が最も高く18.9%を占めています。高齢者以外の運転者の「運転操作不適」の占める割合は9.2%。約2倍です。 警察庁交通局「平成25年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」

高齢ドライバーは、長年運転を行ってきて運転には自信を持っている人も多いはず。それにも関わらず、「運転操作不適」が原因で事故を起こしてしまうのは、身体の衰えや情報処理能力の低下が1つの原因として考えられます。
動体視力、視野、反射神経、体力、集中力、注意力など、年齢とともに様々な身体の機能が低下していきます。しかし、過去(若いとき)の経験にとらわれて、若いときと同じ感覚のまま判断し、行動をしてしまうと意識と実際の自分の行動に大きなズレが生じてしまう可能性があるのです。そのようなズレが、運転操作のミスにつながる場合もあります。

認知症も原因の1つとされており、2009年6月から75歳以上の運転免許所有者を対象に、免許更新時の認知機能検査が導入されました。さらに、2017年3月には、75歳以上の運転免許所有者を対象に、一定の違反があった段階で臨時の「講習予備検査(認知機能検査)」を実施するという改正道路交通法が施行されることになっています。(詳しくは「高齢者講習制度とは?平成29日3月の施行で今までよりも複雑に?」で紹介)

自分で身体の衰えを感じ始めたときには、まず身体の変化を自覚し、変化に応じた対処をとる必要があります。ご家族の方々も、ご家族に身体的な部分で変化がないか気を配っておくと良いでしょう。

事故の加害者になってしまったら何が起こる?

自動車を運転している以上、誰であっても事故の加害者にも被害者にもなる可能性はあります。 では、事故の加害者になってしまったら何が起こるのでしょうか。

事故の加害者になると、「刑事責任」「民事責任」「行政上の責任」3つの法的責任を負います。

‐刑事責任

事故が、物損だけでなく人に危害を与える事故の場合には刑事責任を負います。刑事責任とは、罪を犯したことに対して刑罰を受ける責任を指します。
人身事故の場合、過失運転致死傷罪や、危険運転致死傷罪などの罪に問われる可能性があります。過失運転致死傷罪は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金。危険運転致死傷罪は、負傷させた場合には15年以下の懲役、死亡させた場合には1年以上の有期懲役となります。

‐民事責任

民事責任は、損害賠償や慰謝料など事故被害者の損失を賠償する責任です。
一般的には被害に見合った金額を支払うことで解決しますが、場合によっては調停や訴訟などの法的な手続に発展する可能性もあります。
損害賠償として請求される内容としては大きく下記4つがあります。

  • ・積極損害:入院費や治療費など事故によって被害者が支払うことになった費用の合計に対する賠償金
  • ・消極損害:仕事を休んだことによる減収など事故がなければ本来得られたであろう利益に対する賠償金
  • ・慰謝料:精神的や肉体的苦痛に対して支払われる賠償金
  • ・物損:自動車など壊されたものに対する賠償金

損害賠償額は過失の程度や、被害者の状況、程度など様々な要因により異なりますが、過去には5億を超えるような高額な賠償のケースもあります。

‐行政上の責任

犯した過失の程度によって、違反点が課せられます。場合によっては免停や免許の取り消し、反則金の徴収などの措置が取られます。

交通事故の加害者になってしまうと謝って済む問題ではありません。被害者はもちろんのこと、被害者の家族、さらには、自分の家族にも精神的や金銭的に大きな負担をかけてしまう可能性があるのです。
自動車を運転する際には、いつでも加害者になりうるという意識を持って安全運転を心がけることが大切です。

運転免許証自主返納制度とは

高齢になると、本人が自覚をしないうちに身体が衰えていきます。その結果、意識と行動にズレが生じ、交通事故を起こしてしまう可能性も高くなってしまうのです。
交通事故を起こしてしまう前に、1つの選択肢として運転免許証の返納(運転免許証自主返納制度)を検討してみてはいかがでしょうか。

運転免許証自主返納制度」とは、運転を継続する意思がなく運転免許証を返納したいという方のために、自主的に運転免許取り消しの申請ができる制度のことです。 運転免許証は身分証明としても使われています。その運転免許証を返納してしまうと「身分が証明できるものがない」と心配される人もいるでしょう。
ご安心ください。運転免許証自主返納をした方は、「運転経歴証明書」の交付を受けることができるのです。

「運転経歴証明書」は自主返納をした日から5年以内の方は申請可能です。有効期限は永年で、身分証明として一生涯利用可能です。交付申請手続は、運転免許証を自主返納した都道府県が管轄する運転免許センター、運転免許試験場、警察所で行うことができます。

運転免許証自主返納制度で受けられる特典

運転免許証を返納した人は、さまざまな特典を受けることができます。下記は受けられる特典の一例です。

  • ・バスやタクシーなどの割引または利用券の交付
  • ・引越し料金の割引
  • ・預金金利の優遇
  • ・飲食店の割引
  • ・購入商品の配送無料サービス
  • ・旅行商品の割引
  • ・ホテルなどの宿泊料金の割引

特典内容や特典を受けられる対象者は、都道府県や市区町村、店舗によって異なるため、詳細は各事業所や協力店舗にお問い合わせください。

●警視庁:高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧

運転ができなくなることで日常生活が不便になることもあるでしょう。しかし、事故を起こしてしまっては、元も子もありません。自動車を運転し続けるのであれば、きちんと身体の状態を把握し、安全に運転ができるかどうかを適宜確認するようにしましょう。
身体の衰えを自覚し、運転に不安を感じ始めたときには、「運転免許自主返納制度」も1つの選択肢として考えてみてください。

■記事作成・監修 シニアのあんしん相談室
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)
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