介護ロボットが更に進化 AI(人工知能)が介護を救う?
2016.11.16
AI(人工知能)という言葉を最近ニュースでよく聞きますね。
人工知能といっても、人間型ロボットばかりではありません。既に多くの企業では生産システムの中にAIを組み入れています。
介護福祉の分野では「介護ロボット」が浸透してきましたが、近い将来、AIが介護の場で重要な役割を担うことになるかもしれませんよ。
現代の人手不足解消の秘密兵器?
介護ロボットの実用化については、当サイトでも以前『介護ロボットを導入する高齢者施設が増加傾向なのはなぜ?』で紹介したことがありました。 高齢者向け介護施設のニーズが高まる一方で働き手不足が深刻さを増す現在、負担を減らす介護ロボットの需要は高まっています。最近ではさらに進化して、AI(人工知能)が介護ジャンルに本格活用される期待も高まりつつあります。
では現状のAIの研究はどこまで進んでいるのでしょうか?
AIを使った介護事業プランの数々
人工知能などというと何か映画の近未来SFのようですが、現在多くの分野で研究が進んでいます。おもに人工知能で研究を重ねられているのは、知識をもとに新しい結論を得る「推論」と、集めた情報から将来使えそうな知識を見つけ出す「学習」の2要素です。前者は最近ニュースに大きく取り上げられた、将棋の対戦ソフトなどに使われています。
では、各企業が取り組むAIの介護事業応用の事例とはどんなものでしょう。
・ヘルステック事業などを手掛けるエルステッドインターナショナルでは、AI搭載介護ロボット「Tapia(タピア)」を提供しています。顔認識機能で対話ができ、見守り機能も備えたコミュニケーションロボットです。表情から感情まで読み取って、それに合った会話をしてくれるようです。
・トヨタ自動車グループでは、AIを利用した自動運転システムの応用として、高齢者向けの家庭用ロボットを15年以内に実用化する意向を示しました。自動ブレーキで事故を防ぐという機能だけではなく、運転を一切しなくても目的地まで運んでくれるという完全な自動運転車の開発を目指しています。
・NTTの主要グループでは、高齢者向けAIの実用化を各社ごとに進める方針です。まだスタートしたばかりのプロジェクトですが、NTTコミュニケーションズでは、介護施設でのレクや入居者とのコミュニケーションをとるAIロボットの導入を目指し、実験を進める予定です。またNTTドコモでは、高齢者の方が血圧などの健康状態を測る際に、スムーズに測定できるように手順を説明したり、雑談を行うことのできるAIロボットの実験を進めます。
・1998年から介護事業に参入しているパナソニックでは、培ってきたデータと最新テクノロジーを融合させた次世代介護システムのプランを発表しています。例えば、寝ていながら心拍数や呼吸の様子を計測できるベッドや、明るさや色合いを時間帯によって自動調節することで入居者の質の高い睡眠を促すライトなど。また高齢者の健康状態や動きはリアルタイムに観察され、緊急事態にはすぐに対応できるという、ご家族にとっては何とも安心な介護システムです。
その他、社会福祉法人善光会やセントケア・ホールディングなど、介護事業を行う企業の中にもAI事業への参入を表明する会社が現れ始めています。
もしもAIがケアプランを作ってくれたら…?
各企業のAI活用に加えて、去る10月20日には、政府がケアプランの作成にAIを活用するよう検討してゆく方針を発表しました。これには業務の効率化と関係者の負担を軽減する目的も含まれています。
ケアプランは介護保険を利用するうえで重要な計画書ですが、作成はケアマネジャーのように専門知識を持っていないと難しく、しかも書類を作成するだけでなく、プラン施行までに関係者と連絡を取り合う連携も必要という、なかなか大変な作業なのです。もしこの作業が日本中の介護施設でAIに任せることができたとしたら、介護職の方々の負担は大幅に楽になるはずです。同時に雇用面から考えても、このまま政府の方針で進めば、相当な額の人件費節減につながります。
当面は議論が続くでしょうが、AI介護事業に参入する企業は今後さらに増加してゆくのは間違いないでしょう。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)