福祉用具が介護保険適用除外になる可能性! 反対意見が多いがあなたはどう思う?
2016.10.14
介護を受けている利用者の方々の中には、車いすなどの福祉用具が保険で無料レンタルできることで経済的にも助かっている人も多いことでしょう。
しかし、近々これがもしかしたら全額負担になるかも…なんてことになったら、「えっ、どうしよう!」と不安になってしまいますよね。
でも実際、そのような動きがあるのです…。
あの福祉用具が介護保険適用外になる?
「介護保険で買えた物がなんで自腹になるの?」と驚く人も多いでしょう。しかし介護保険制度の見直し議論が昨年4月からから政府内部では進んでいるのです。財務省で検討中なのは、「介護保険の給付を抑えるために、福祉用具の貸与の給付を要介護3以上の高齢者までにして、要介護2以下の高齢者は原則自己負担(一部補助)にしてはどうか」という議案です。
これに対して、福祉関係を始め多くの団体や業者から一斉に反発の声が挙がったのは言うまでもありません。
自治体からも「反対」の意見書
かつて2006年には、要支援1~要介護1の利用者がベッド・車いすの利用を原則制限されたことがあり、今回の法改正の動きはそれに続くものです。要支援1~要介護2の利用者は100万人を超えていますので、かなり多くの方に影響が及びます。
全国22府県111市区町の議会では「次期介護保険制度改革」に対する見直し意見書が採択され、総理大臣や厚生労働大臣などに提出されました。
さらにケアマネージャーや利用者から署名が続々と集まっており、9月20日には改革反対を訴える利用者21万7千人分の署名が厚生労働省に提出されました。
また、財務省は「原則」自己負担ということで、一部還付することを考えているようですが、「初めから全額払える利用者は限られるし、事務的にも非効率」と反論の声もあります。
利用者の間には、この政府方針を「弱者の切り捨て」と強く批判する意見もあり、「自己負担になれば福祉用具の使用を諦める」といった切実な声まで聞かれています。
実施しても減額はわずか1.4%?
2016年7月のデータによれば、要介護2以下の軽度利用者がレンタル福祉用具に費やした介護保険給付額は約114億円でした。(参考:介護給付費等実態調査 2016年7月)
介護保険給付額全体で約8050億円なので、それは1.4%ほどです。つまり「介護保険の給付を抑える」目的で法改正してもわずか1.4%しか減らせないわけです。
一方、軽度利用者が福祉用具を使わなくなった場合、代わりに必要になると見込まれるヘルパーの数は年間のべ11万人余り。その費用は低く見積もっても1,370億円と言われていて、実際はさらに増える見込みです。
加えて、福祉用具が使えなくなった利用者が日常の活動範囲を狭め、介護度が進行してしまう可能性も考えなければいけません。これも費用増大に拍車をかけることになります。
様々な矛盾が問題提起されているこの改革、あなたはどう考えますか?
記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)