入居が難しいはずの特養で空きが? 要介護に関する条件変更で起きたこと
2016.8.5
私たちのイメージの中では、特別養護老人ホーム(特養)にはいろいろなメリットがある反面、「入居まで長く待たされてしまう」というデメリットも思い浮かびますね。しかし、法改正によって近年その状況は大きく変化したのをご存知でしたか?一体どんな変化があって、どんな影響を及ぼしたのかを説明します。
「入居待ち数年」が当たり前だった
特別養護老人ホーム(特養)といえば、比較的少ない費用負担で長期にわたって入居することができるメリットがあることから、介護施設の中では人気が高いイメージがあります。
そのため、入居するまでの待機期間がどうしても長くなりがちで、場合によっては数年待ちも…というデメリット面もこれまで指摘され続けました。なお厚生労働省の発表では、2014年度の特養の待機者数は全国に約52万人おり、しかも国や地方自治体が特養の新設を控えていたため、待機者の渋滞は大問題でした。
特養が「営業活動」?
ところが最近のニュースによると、ここへ来て特養の待機者数が減少傾向にあるというのです。ある調査では、都内の特養1施設当たりの平均待機者数はここ2年で約17%も減少しました。また北九州市ではここ1年のうちに約28%、同じく神戸市では約27%も減少しているそうです。そのため特養の中には、入居者を確保するために職員が在宅介護の関連施設を巡回して入居斡旋の営業活動を始める所もあるのだとか。
一体なぜこのような逆転現象が起きてしまったのでしょう?
要介護度1~2の方の入居が困難に?
実は介護保険法の改正で、2015年4月から特養の入居基準が変更されました。それまで入居者の介護度が「要介護1~5」と定められていたのが「原則要介護3以上」と変わり、要介護1~2では原則的に入居できなくなったのです。これによって待機者数は大幅に減少し、入居後に介護度が下がっても原則として退去しなければならなくなりました。ただし要介護度1~2の場合でも、常時見守り介護を必要とする認知症高齢者、支援が必要な場合などのやむを得ないケースにおいては、特養に直接その旨を書類提出することで、「原則外」として入居が認められます。該当する場合は特養に問い合わせてみましょう。
このように、決して特養の需要が低くなったのではなく、入居難易度が高まったから待機者数が減って倍率が下がった、ということに注意しましょう。今回の改正で特養という選択肢が無くなった方も多いと思われます。是非情報収集をきちんとして、入居する方に合った最善の施設選びをしましょう。
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記事監修:老人ホーム入居相談員(介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー2級、宅地建物取引士、認知症サポーター)